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水森飛鳥と短いようで長い修学旅行Ⅲ(一日目の夜)


「さて、お待ちかねの自由時間だね。何する?」


 真由美さんが聞いてくる。

 彼女の言う通り、宿泊場所に戻り、夕食を終えた今は自由時間である。


「トランプでもする? どうせ明日も一緒のメンバーなんだし、定番の恋バナは明日にしておく?」

「でも、答えを先延ばしにされたくはないからさ。今答えなくても、明日には答えてもらう方式にする?」


 どうでも良いから、少し寝たい。

 明日辺り、起きてないといけないし、向こうとも行き来しないといけない。


「飛鳥ちゃん、大丈夫?」

「何かずっと、ぼうっとしてたけど」

「ん、大丈夫……」


 っていうか、こっちじゃ宿題が無ければさっさと寝て、向こうでゲームとかしてるからなぁ。

 だから、起きていられないこともないんだけど、やっぱり疲れているらしい。

 明日は元の世界(あちら)でもこの世界(こちら)でも、班行動だ。


「じゃあさ、これだけ答えて」

「何かな?」

「御子柴君のこと、どう思ってる?」

「夏樹のこと? 幼馴染」

「恋愛感情とか無いの?」


 その辺はそう言われてしまうと微妙であるが、多分、夏樹もそんなには意識していないと思う。

 たとえ『あの時』以降は一緒に居るようにしているとはいえ、だ。


「桜峰ちゃんは?」

「え?」

「あんなに役員たちに囲まれているんだから、一人ぐらい良いなぁって思う人は居ないの?」


 奏ちゃんの問いに、桜峰さんが(まばた)きを繰り返す。


「そんなこと、無いよ。好きだって言ってもらえたこともあったけど、友達としてだろうし……」


 もしかして、春のあの時の会話のことかな?

 そして、これは副会長に教えた方が良いのか? 分かっていそうだけど。


「私たちから見れば、どこからどう見ても、役員たちは貴女が恋愛的意味で好きなように見えるけど?」

「そんなこと言われても……みんなを恋愛的な目で見れないし……」


 (うつむ)く桜峰さんに、奏ちゃんと真由美さんが顔を見合わせる。

 けど、分かっていたとはいえ、この時期になっても何の反応も無いとは……少し、厳しくなってきたか?

 神様からは、「逆ハーにならないようにしてくれ」と言われているわけだから、私たちとしても、この状況は良い方のはずなんだけど。


 ーー何か、嫌な予感がする。


「飛鳥ちゃん、大丈夫? 私たちのことは気にせず、先に寝たら?」

「そうだよ。明日倒れでもしたら、大変だからさ」

「私も大丈夫だよ?」


 三人がそう言ってくる。

 今日一日だけで、桜峰さんと奏ちゃんたちは随分と仲良くなれたらしい。班決めの時よりも緊張はしていないみたい。


「ごめんね。先に寝させてもらうよ」


 そのまま、元の世界(むこう)に行かせてもらおう。





「……喉、(かわ)いた」


 目を開ければ、真っ暗だった。

 けど、喉が渇いたからお茶を取りに行く。


「……はぁ」


 小さく息を吐いて、時間を確認すれば、一時だった。

 いつもなら、まだ起きている時間だけど、明日のことを考えると大変だろうから寝なければ。


『ーー無理しちゃ駄目だからね? (つら)かったら、いつでも代わってあげるから』

「……」


 聞こえてきた声を無視して、先程まで居た布団へと戻る。


 ーー私は、貴女(・・)の出番が無いことを祈るよ。


 今は(・・)彼女(・・)』の手まで煩わせるつもりはない。

 耐えられなくなるその時までは、貴女の出番は無いからね。


「だからまだ、ゆっくり待ってれば良いよ」


 そのまま、目を閉じる。

 こちら(・・・)はともかく、あちら(・・・)は『未来』と『世界』が懸かっているから。


 残り時間はーー四ヶ月半だ。



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