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水森飛鳥と波乱の学園祭Ⅵ(悪役令嬢と隠しキャラという名の先輩たち)


「それじゃ、まずは自己紹介と行きましょうか。私の名前は、雛宮未季(ひなみや みき)。知っているとは思うけど、獅子堂要の婚約者にして、彼の設定上(ルート)のライバル役ね。使用異能は“反転”。相手の攻撃などをそのまま返したりする異能よ」

魚住新(うおずみ あらた)だ。まあ、分かっているだろうが、隠しキャラ扱いだ。使用異能は“防御”。どんな異能でも防げるんだが、雛宮とは近いようで遠くもある別の異能だな」


 さて、現在地は体育館から移り、空き教室の一つ。

 無事に劇を終え、私は生徒会役員たちに桜峰さんの捜索について、メールでお礼と報告をした後、(私たち(・・)と)一緒に回る気満々だった桜峰さんを迎えに来たらしい会長に押しつけ、夏樹とバタバタしながらもこちらに来たのである。

 ただ、先輩たちもバラバラに来たのか、私たちが空き教室に着くのと同時に、男の人ーー魚住先輩が慌てて入ってきて、まずは自己紹介からと現在に至る。

 そんな先輩たちの自己紹介を聞き、私たちも自己紹介をする。


「水森飛鳥です。一応、主人公(ヒロイン)のサポート役をしています。使用異能は、調律(チューニング)による音響操作です」

「御子柴夏樹です。まあ、俺は飛鳥の手伝いのために来てるようなものですから、サポートのサポートって所ですかね。使用異能はまだ把握中なので、今は言えません」

「よろしくね」

「はい」


 ちなみに、雛宮先輩に持っていた印象は、少しキツそうな性格や見た目をしているのかと思っていたけど、実際は落ち着いた優しく美人な人という印象だ。

 そもそも、選ぶのは神崎先輩(と人選担当の人)だから、性格や見た目がキツそうな人を選ぶはずがないのだが。


「ま、異能については後回しにするとして、だ」

「ええ、現状確認ね」


 魚住先輩の視線を受け、雛宮先輩が頷く。


「現段階では文化祭がこうして行われているけど、貴女たちが経験したこれまでの流れと知識との相違点を簡単に説明してくれる?」

「あ、はい」


 一学期については、私しか説明できないから、私がする。


「サポートキャラという立場のせいなのか、転入というオープニングは変わることは無かったんですが、どういうわけか、彼女は席の離れた私に話しかけてきたんですよ」


 心の中でそれなりに文句を言った覚えはある。

 けど、そこはまだ良い方だ。


「それからある程度して、生徒会室に連れて行かれたり、七夕祭を一緒に回ることになりました。そこで気づいた相違点は、短冊の願い事ですね。それぞれ願い事が知識にあるものとは異なっていました」

「なるほどね」


 雛宮先輩が何か思案しながら、そう返してくる。


「飛鳥。お前、一番重要なことを省くなよ」

「重要なこと?」

「はい。こいつ、鳴宮と一年の時から関わってたみたいで」


 夏樹が半目でこちらを見ながら、そう告げる。


「そうなの?」

「否定はしませんよ。ただ、書類上とみんなの記憶上は中等部からの同級生となっているみたいなんですが、実際、私には高等部からの知識と記憶しかありませんから」

「関わった経緯は?」

「神様が私と話すために、鳴宮君の身体を借りたことがきっかけだと思います。相性の問題だとか言ってましたから」


 そう、と呟くと、雛宮先輩が、何か考えてるのか、黙り込む。


「俺たちの時は、そのままで来ていたんだが……」

「厳しくなってきたのかしら?」


 そう話し合う先輩方。


「私もね。みんなの記憶上では幼少期から一緒に居たことになってるけど、私の記憶上では貴女と同じ、高等部での記憶と知識しかないの」


 当然だけど、と雛宮先輩は付け加える。


「あの、そういうのって、高等部からの付き合いの奴らはともかく、齟齬(そご)が出ないんですか?」


 夏樹の問いに、雛宮先輩が私に目を向けてくる。


「私はありましたね。先程も言いましたが、みんなの記憶上では中等部からありますが、私には高等部での記憶しかありませんから、中等部の知り合いって言われて、気まずい空気しか出ませんでしたよ」

「……その辺、修正してなかったのかな。神崎君」

「いや、修正したとしても、また書き換えられていたら意味ないだろ」


 私の言葉に、先輩たちが話し合いながら、溜め息を吐く。


「いや、今はそれよりも、だ」

「これだけは伝えておかないと」


 一体、何だろうか?

 真面目な顔になった先輩方に対し、私たちも自然に背筋を伸ばす。


「私たちが、失敗したことは知っているわよね?」

「はい」


 だから、神様は私と夏樹に頼んだわけなのだが。


「今から話すのは、その失敗した時(・・・・・)その後(・・・)のことだ」

失敗した時(・・・・・)その後(・・・)?」


 頷く先輩方に、私は何故か嫌な予感がした。

 聞きたくないけど、聞かなければいけない。


「私たちはね。閉じ込められたの。この箱庭に」


 そこから先輩たちは語り始めた。



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