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水森飛鳥たちと説明会Ⅵ(もう一つの説明)


 桜峰(さくらみね)さんたちへの説明は大体終わったものの、それ以外の問題が片付いたわけではない。

 そのうちの一つが、私が風弥(かざや)に話したことについてである。

 これについては、こちらにある私たちの家で話すことになった。


「それで、風弥の件なんですが……」


 いくら事情を知られているとはいえ、知らない人の話をされても困るだろうから、とりあえず鷹藤(たかとう)君には簡単に説明しておく。


「先に鷹藤君には説明しておくと、風弥というのは私と夏樹(なつき)の友人です。最低でもそこだけは覚えておいてくれると大丈夫だとは思うけど」

「分かった」


 ちなみに、雪冬(ゆきと)さんは風弥のことを知っていることもあり説明する必要もないので、鷹藤君の言葉を受けて、説明を開始していく。


「夏樹は知ってると思うけど、こっちで風弥と会ったのは偶然でした」


 副会長と出掛けてるときだったのと、かなり驚いたのを覚えているから、忘れるはずもない。


「その後、どうして互いにこっちにいるのかを話すことになりました」

「でもその時、夏樹はいなかったんだよね?」

「はい。互いに会えるタイミングよりも先に、夏樹が女神の手に掛かりましたので」


 だから、私と風弥で話さざるを得なかった。


「それで、こっちにいる経緯を簡単にですが話しました」

「よく話せたな。向こうへの影響を気にしてただろ」

「『風弥に会う』って伝えてたのに、桜峰さんの方に行ってた人に言われたくありません。おかげで信憑性が増したみたいで、信じてはもらえたけど」


 あれから何だかんだ心配はしていたのか、定期的に連絡は来ていたのだが、それについては話す必要は無いだろう。

 さっきも合間をみて、全部解決できたと連絡しておいたし。


「それで、風弥君はどうしてこっちにいたの?」

「ああ、元々はこっちの人間だったみたいで、私たちの方に来てたのは神隠し的なことだったみたいです」


 ちなみに、風弥からはこのことを話すのも了承を得ていたりする。

 どうやら「お前なら変な風に話さないだろ」ということらしいのだが、そもそも神隠し自体が怪しいために、どれだけ風弥に信頼されていたとしても、信じてもらえない可能性はあるんだよな。


「神隠しねぇ……」

「まあ、それ以来ずっと行き来してるみたいだから、その事に関しては私たちよりは先輩だね」


 確か、鍵無しで移動してるはずだから、肉体の強さ的なのもおそらくは風弥の方が上なんだろうけど。


「それにしても、神隠しか。まあ、私たちもこんな経験してなかったら信じられないかもしれないから、一言「嘘だ」なんて言えないよね」


 どうやら、雪冬さんはひとまず信じることにしたらしい。


「ちなみに確認するけど、その事を知ってるのは飛鳥ちゃんを除くと、今話してくれた私たちだけ?」

「多分、そうですね」


 まあ、風弥が(すずめ)さんのようなこちらの世界の人たちにも話していなければ、の話しになるから、断定できないけど。


「教えてくれてありがとね」

「いえ、いつかは言っておかないといけませんでしたから」


 それが今になっただけだ。

 風弥周りの説明も簡単にだが終わったからか、雪冬さんがぐぐっと伸びをする。


「それにしても……本当に終わったんだよね」


 何気ない呟きだったのだろうが、長いことこの世界にいた雪冬さんには、実感というものがまだ少ないのだろう。


「……」

「……」

「……」


 けれど、誰も「終わりましたね」と返さなかったのは、心のどこかで「本当に終わった」のだと思えていないからかもしれない。

 だって、片付いていないことはいくつかあるのだから。


「飛鳥ちゃん?」


 無言で立ち上がれば、雪冬さんに不思議そうな顔をされる。


「買い出し行ってきます」

「え?」

「私と夏樹はともかく、雪冬さんたちはまだこの家を使うと思うので、何か適当に見てきます」


 さすがに何も出来ないなんてことはないだろうから、惣菜なり必要そうなものを適当に見繕えばいいだろう。


「いやいやいや、もう外も暗いし、危ないから」

「でも、四人分もありませんよ?」


 雪冬さんの心配は分かるが、工夫したとしてもギリギリレベルである。


「それじゃ、せめて――」

「じゃあ、俺が付き添う」


 おや?


「いいの?」

「別に、買い物の付き添いぐらい大丈夫だろ。もう女神の手出しを心配をする必要もないしな」


 そう言われて、それもそうかと納得する。

 鷹藤君が付いてくるなら、御子柴(みこしば)姉弟を残すことになるが、これをチャンスに思う存分話し合ってもらいたい。


「ちょっと待て。買い出しに行くなら、俺が行く」


 けれど、我が幼馴染殿は気まずくなるからなのか、付いてこようとする。


「あのさ。あまりこういう言い方はしたくないけど、さすがに逃げ続けるのは無理だからね?」

「……分かってる」


 夏樹も雪冬さんも、互いに接していない空白の期間があるからなのか、いざ対面したら何を話すべきなのか分からなくなったのだろう。

 でも、また同じ屋根の下に戻るのであれば、逃げ続けるのに無理は出てくるはずで。


「まあ、無理そうなら無理にしなくていいよ。すぐに帰ってくるつもりだからさ」


 本人たちの目の前でするべきでないかもしれないけど、一応は言っておく必要がありそうだから言っておく。


「それじゃ、行ってきます」


 そう言って、必要なものを持って、鷹藤君とともに家を出た。


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