水森飛鳥たちと説明会Ⅳ(少しばかりの休憩を挟んで)
雪冬さんたちと雛宮先輩たちの説明会が終わり、残るは私たちだけになったのだが。
――正直、彼らにも記憶があるのに、私たちの説明が必要なのかどうか疑問ではある。
ことの始まりと経緯については雪冬さんたちが説明してしまったから、私から説明するべきことなんて経緯以外にあるんだろうか。
『「あるんだろうか」って言うより、僕たちの場合は話せないことの方が多いもんね』
明花に関しては、隠したくて隠してるわけじゃないから、鷹藤君のようにバレたら教えているに過ぎないし。
『間違っても、あれについてだけは口を滑らせないでよ』
「大丈夫だよ。そもそも話す気はないし」
リーディルラインについては、この世界との繋がりを与えてしまったとはいえ、元々は関係ないことなので、あの子について話す必要はない。
「だからさ、見ててよ。もし、ミスりそうだったら、交代も視野にいれつつにはなるだろうけど」
『ん、りょーかい』
大丈夫。
だって、明花も居てくれるのだから。
☆★☆
あんな話が、あと一回控えているのかと、現在進行形で説明会真っ只中な桜峰咲希と彼女の攻略対象とされた少年たちが発する空気は暗く、重かった。
このあと話す予定の当人は、ペットボトルが空になったからとごみ捨てに行ってしまって不在である。
しかも今は、彼女が休憩時間と称した情報整理する時間ではあるものの、何をどう聞けというのだ。
「……鷹藤は、いつから知ってたの」
「どれについてだ?」
鷹藤晃はこの世界にとってイレギュラーであるため、答えられることについては答えるつもりだが、飛鳥の説明が控えているので、差し障りがない範囲では答えるつもりだった。
「水森さんについて、いつから知ってたの」
いつからかを問われれば、最初からである。
だが、郁斗が求めている答えが何についてなのかは何となく予想できるため、晃は口を開く。
「知ってたのは最初からだな。でも最初の時は確証が無かったから、様子見してただけだな」
これは事実である。他の生徒とは違うと思っても、女神が用意した人材の可能性もあったから、晃には様子見するしかなかった。
「一応言っておくと、俺が打ち明けて、水森が俺を味方だと知ったのも、つい最近だぞ」
「は……?」
きっかけが『御子柴雪冬』という人物だったとはいえ、あの時に明かしておいて良かったと晃は思った。
でなければ、ここでこうして説明することも出来なかったことだろう。
「詳しいことは、水森が話すまで待っとけ。俺が話しすぎるのも良くないしな」
「……」
不服そうな郁斗の表情に、晃は肩を竦めた。
どうにもこの友人は、飛鳥関連のことだと心が狭くなったり広くなったりするからやりづらい。
「まあ、何だ。情報整理は水森の話が終わってからでもいいだろ。聞きたいことも本人に直接聞けば良いだけだしな」
本人が答えてくれるかどうかは知らないが――なんて思いつつ。
そうこうしていれば、最後の話し手が戻ってきたらしい。
「それじゃあ、始めましょうか」
そう、最後の話し手――水森飛鳥は微笑んだ。