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水森飛鳥たちと説明会Ⅰ(御子柴雪冬・鷹藤晃の話Ⅰ)


 雪冬(ゆきと)さんたちを拠点とも言える家に泊まらせ、私と夏樹(なつき)が元の世界の部屋で休んだ翌日――桜峰(さくらみね)さんたちへ説明する時間がやってきた。

 場所は生徒会室――ではなく、空き教室の一角であり、部外者である雛宮(ひなみや)先輩たちが普通に出入り出来るわけもないので、昨日と同様に夏樹が転移で送り迎えすることになった。


「さて。それじゃあ、君たちが気になっているであろう説明会を始めようか」


 私が防音結界を張り、そんな雪冬さんの言葉から始まったわけだが――……


「さて、どこから話すべきかな」


 雪冬さんに視線を向けられる。

 普通なら「最初から」と言うべきなんだろうが、現在の周回についてだけなら、私たちの部分だけで良くなるわけだし、雛宮先輩たちを呼ぶ意味が無くなってしまう。

 それなら、桜峰さんたちに委ねてもいいのかもしれない。


「とりあえず、雪冬さんの自己紹介からじゃないですか?」

「あー、そっか。それもしないといけないのか」


 現在の周回は、私と夏樹の周回である。

 記憶リセットが入っているのなら、魚住(うおずみ)先輩はともかく、雪冬さんのことを覚えてない可能性もある。

 そのための自己紹介を促してみたのだが、どうやら通じてくれたらしい。


「「私のこと、覚えてる?」って聞いたところで、覚えてないなんて言われたら、話が進まなくなるしね。うん、しておこうか」


 そして、雪冬さんは少しだけ微笑むと、自己紹介を始めた。


「それじゃ、まずは自己紹介から。私は御子柴(みこしば)雪冬。そこにいる夏樹の姉です。とりあえず、私も関係者なので、ここに居させてもらいますね」


 いくつか端折(はしょ)られた気もしなくはないが、この件に関係ないことを話されても混乱するだけなので、この紹介で正解なのだろう。


「さて。現時点で質問は何かあるかな?」


 説明どころか何も聞いてないのに、質問も何もないのだろうが、雪冬さんが聞いてるということは、何らかの意図があるんだろう。


「……何も聞いてないのに、質問しろと?」

「話を聞く前に、聞きたいことがあるんじゃないかと思ってね。その回答が説明の中にあるのなら、その時に言うし、説明予定の中に無ければ、いま答えようと思ってね」

「……」


 雪冬さんと副会長がやり取りしてるが、正直、桜峰さんたちが全く関係ない質問してくるとも思えないので、基本的には説明中に補う形になるんだろう。


「――あの」

「ん?」

「質問じゃなくてもいいですか?」


 おや。


「別に構わないけど」

「それじゃ、最初から説明してください。こうなってしまった、一番最初から」


 そう来たか。


「だそうだけど?」


 どうやら、雪冬さんは判断をこちらに委ねてくれるらしい。


「別にいいんじゃないですか?」

「私たちは私たちのことを話すだけですからね」


 どうやら、雛宮先輩たちも同意見らしい。


「それじゃ、私たち自身もお互いに把握できてないことを穴埋めしつつ、話していきましょうか」

「じゃあ、まずは――俺たちからだな」


 そうして始まったのは、御子柴雪冬・鷹藤(たかとう)(あきら)ペアが、この世界に降り立つ前の話。


   ☆★☆   


「事の起こりは、結構単純でね。一人の少女の願いを、一人の女神が叶えようとしたところから始まるの」


 ある学校に転入してきた少女は、『転入生』という珍しさから声を掛けてくるクラスメイトたちとかと話していくが、やはりというべきか、珍しいのは最初だけ。それなりに話す人たちは出来ても、『親友』レベルに至るまでの人は出来なかった。

 そんな彼女ではあったが、校内の有名人の噂は耳にしていた。

 その後、タイミングが合えば、定期的にその姿を見るようになった少女は、あることに気づく。


 ――あれ? あの人って、あの時に会った人?


 転入試験を終え、試験を担当していた先生の代わりに校内の案内役を任された人だ。

 生徒会役員でもあるらしいその人は、何か困ったことがあったら、声をかけてね――その時はまだ、試験の合否も出ていなかったというのに、そう告げてきた。


 結果だけ見るなら同高生となったわけだが、向こうはこちらのことを覚えていないのかもしれない。

 けれど、こちらは覚えてる。なぜ覚えていたのかは分からないが、覚えていたのだから仕方がない。

 せめて、この学校に通えていることだけでも伝えよう。


「それから少女は、その人に声を掛けるべく、頑張ることにした」


 けれど、彼の周囲にはたくさんの人が居て、近づけない上に、自分と同様に話しかけようと近づこうとして失敗している人たちを見て、正攻法では駄目だと思いつつも、それ以外の方法が思いつくはずもなく。そして、その間に抱いた想いにも無視をして。


「新年を迎えたばかりの初詣で少女は願った」


 どうか、彼に話しかけるための勇気とチャンスを与えてください――と。





 一方、神々の住まう地である天界では、一人の女神が暇を持て余していた。

 (せわ)しなく動き回る他の神や女神たちを余所に、一人退屈そうに下界を見ていたその女神へ、少女の願いは届いた。届いてしまった。


 ――何だか面白そうだから、この子にしましょう。


 この女神にとっては暇潰しだったのかもしれないが、まさか他の神々や人々にとって、厄介な状況になるとは思いもしなかったんだろう。


『貴女の願い、叶えてあげる』


 そんな言葉とともに、女神の手で世界に魔法は掛けられ。

 進むべきはずの時間は止まり。

 同じ時間が繰り返される『世界』へと変化した。


 そして――本来時間が進むべき世界が時間(とき)を刻まないことに気づき、その事を危険視した一部の神々は、女神に進言したりもしたが、聞き入れてもらえなかったことから、手を打つことにした。


 並行世界(がいぶ)から呼んだ協力者とともに女神を止め、自分たちで時間を動かすために。



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