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水森飛鳥と最後のイベントⅤ(騒動の終わり)


「……っ、」


 神原(かんばら)さんに精神干渉術式を使ったことで、傾く彼女の身体を受け止める。

 

 明花(あきか)は上手くやってくれてるのかな――などと考えつつ、神原さんの様子を確認する。

 こっちが女神の相手をしている以上、女神としては中と外、どちらも対応するなんてこと不可能に等しいだろうから、攻撃してきそうなのは――……


「……っ、水森(みずもり)ぃ………」


 恨みの籠った目を向けられる。

 どうやら、自分で思っている以上に、私は恨まれているらしい。まあ、それは別に構わないんだけども。


「限界なら、外に出ればいいのに」

「っ、」


 苦しいのなら、身体の外に出ればいい。

 けれど、そうしようとしないのは、自分がこの後どうなるのか、予想できるからだろう。


 けれど、それも時間の問題だ。

 あの子がどのような方法を用いているにせよ、女神は自分で離脱するか、追い出されるかの二択から選ぶしかないのだが、時間が経てば経つほど、後者の可能性が大きくなるわけで。


「――なぁっ!?」


 神原さんの身体から、女神が離れ始める。


「何か出たぞ!?」


 どうやら、この場にいる面々の目にも、女神の姿は見えたらしい。


『お前、一体何をした!?』

「さてね。あの子が何をやったのかは知らないよ。ただ――出てきた貴女をどうにかするのは、私の担当っていうだけで」


 嘘は言ってない。だって、実際その通りに動いているわけだし、現に女神は追い出されている。

 そんなことを話しつつ、ポケットの中にあったあるもの(・・・・)を女神に向けて放り投げる。


「本当はぬいぐるみとかの方が良かったんだろうけど、持っていたのがそれしかなかったからね。狭いだろうけど、我慢して」

『な、な……』


 驚きを露わにする女神を無視して告げれば、私が放り投げたふくろうの根付けへと女神は少しずつ吸い込まれていく。


『この程度――』


 どうやら、根付けを壊すつもりらしいが、私たちが封印術式を込め、ずっと持っていたものである。そう簡単に壊せるものだと思わないでほしい。


「もう、諦めなよ。この世界の理で壊せるものだと思ってるの?」


 感覚が戻ってきたので、どうやら戻ってきたらしい。

 ちなみに、封印術式はリーディルラインがいた世界のものを使っているので、いくら神と言えど、この世界で解除するのは無理だったりする。何せ、理が違うのだから。

 けれど、女神側も諦めるつもりはないのか、何とか離脱しようと抵抗している。


『ぐっ……』

「うわ、マジか」


 そして今度は、女神の身体が根付けから出ようとするのだが、突然現れた結界により、女神の脱出は叶わなくなった。

 それを行ったであろう人に目を向ければ、にっこりと微笑まれた。まるで「これで良かった?」とでも言いたげに。


「許さないからな、イレギュラーども!」


 だが、あちらも勘づいたらしく、完全に女神と言えないような捨て台詞を吐いた女神が完全に吸い込まれたのか、その場に根付けが落ちる。


「最後の台詞が貴女たちに対してなの、よっぽど恨みを買ったんだねぇ」


 落ちた根付けを拾い、新垣(にいがき)先輩が苦笑しながらも、そう言ってくる。

 本来なら、私たちを送った神崎(かんざき)先輩たちに向けられるはずだっだったのだろうが、どうやら最後のが効いたのか、私たちにヘイトが向けられたらしい。


「それはお互いに、ですがね」


 あちらもあちらだが、こちらもこちらだ。


(まあ、私が使える戦闘能力がリーディルラインに関わるものしかない上に、そもそもがこの世界のものですら無いのだから、チートだ何だと言われたところで反論できないんだけど)


 ……とまあ、そんなことを考えつつ、神原さんをとりあえずその場に寝かせて、床に刺しっぱなしにしていたリーディルラインを引っこ抜き、鞘へと納める。

 それを確認したのか、感知したのか。ふわりと身体が光り始める。

 しかもそれは、雪冬(ゆきと)さんたちも同じなようで、思わず神崎(かんざき)先輩に目を向けてしまった。


「遅くなったけど、一応は約束を守ってくれたからね」


 先輩曰く、一学期の時のことは女神による強制帰還であったため、ノーカンということらしい。

 だから今こうして、私の「終わったら即帰還」という願いを叶えようとしてくれているんだろうけど……


「――飛鳥(あすか)


 不安そうな桜峰(さくらみね)さんが一歩前に出て、こちらを見つめる。

 ……まあ、事情も分からないまま放置されても困るか。


「先輩。約束を守ろうとしてくれたのは有り難いんですが、もう少しだけ待ってもらえますか?」

「まあ、別に構わないけど」

「ありがとうございます」


 帰還の術が解除されたのか、全身を纏っていた消える。


「事情説明、した方がいいでしょ」

「うん」


 あのまま逃げることだって出来たのに、こうして残って説明しようとする辺り、どうやら私にも彼女たちに情が湧いてしまったらしい。

 とはいえ、だ。


「とりあえず、今日はもう遅いから、また明日ね」


 さすがに一から説明するにしたって、時間が足りないので、明日また時間を貰うことにしよう。



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