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水森飛鳥は、クリスマスパーティーへと赴くⅦ(プレゼント交換会)


 いよいよメインのプレゼント交換会である。

 先程、『扱いに困るようなものが手元に来ないことを祈っておこう』と言ったが、私が贈ろうとしているのもそれなりの大きさなので、他人をどうこう言ってる場合ではなかった。


「それじゃ、曲を掛けるよ」


 『交換会』とは言っているが、それぞれが持ち寄ったプレゼントを手に、隣の人へと回していく。

 そして、曲が終わった時に手元にあったものが、その人へのプレゼント――ということらしい。

 ちなみに、掛けられている曲は実にクリスマスらしい曲とだけ言っておく。


「全員、自分のプレゼントが手元に来てる……なんてこと、ありりませんよね?」


 そして、曲が終わり、メンバーの様子を確認し終えた副会長の言葉に、それぞれがプレゼントの大きさや包装を軽く確認する。

 さてはて、私のもとに来たプレゼントは誰からのものかな?


「ねぇ、これ今この場で開けてもいいやつ?」

「中身によるんじゃないか? あとで開けた方がいいやつもあるだろ」


 まあ、そうだよね。


「むー……それもそっか。自分のが誰のところに行ったのか、知りたかったけど」

「つか、誰だよ。こんなの選んだの」


 会長が手元のプレゼントを見ながら、そう呟く。

 ああ、うん。それなりに大きいよねー。


「多分それ、私ですね」

水森(みずもり)かよ」


 何となく文句にも聞こえそうだが、会長の声色(トーン)としては、『水森(わたし)からのプレゼントが嫌と言うより、一体何を持ってきたんだよ』とでも言いたげな声色トーンである。

 とりあえず、私からであることに文句言われずに良かったと思いつつ。


「それは、中の小袋さえ開けなければ、今この場で開けても大丈夫なやつです」

「尚更、何を持ってきたんだよ……」


 小さく唸りながら会長がプレゼントとのにらみ合いを始めてしまった。

 私って、そんなに変化球を出しそうな人間に見えるのかな?


 一方、そんな私たちを余所に、他の面々は誰が誰のプレゼントなのか、中身はこの場で開封可能かどうかを確認していた。


「僕のは小さいですね」

「あ、それ多分私からのやつかもしれません」

「そうなんですか?」

「多分……ああ、この柄は私のやつですね」


 副会長の持つプレゼントの包装紙の柄を確認した桜峰(さくらみね)さんが、納得したような、確信を得たかのような表情で頷く。


「咲希のは誰からのものですか?」

「誰なんだろ……」


 桜峰さんがきょろきょろし始めたので、私も他のところに目を向けてみる。


「何で、お前のところにあるんだよ……」

「それはこっちが聞きたい」


 どうやら、夏樹(なつき)鳴宮(なるみや)君のものが交換になったのか、二人の周辺は若干空気が重い。

 現状で分かっているのは『私→会長』『桜峰さん→副会長』『夏樹←→鳴宮君』の組み合わせなので、残るは会長、副会長、鷹藤(たかとう)君、鷺坂(さぎさか)君、神原(かんばら)さんのプレゼントの行方だが――……


「これ、誰のー?」

「あ、それは私からです」


 鷺坂君が手にしたのは、神原さんからのものらしい。


「お前は捜さないのか?」

「みんなの様子を見ていれば、消去法で分かるので」


 会長の言葉に、そう返す。

 どうやら、先ほどの組み合わせに『神原さん→鷺坂君』を加えないといけないらしい。


「もしかして会長の、咲希の持ってるものじゃないですよね?」

「うん?」


 会長が咲希の手元に目を向ける。


「いや、違うな」

「違いましたか」


 『私→会長→桜峰さん→副会長』の図式が出来上がるかと思ったけど、違ったらしい。


「あ、(あきら)先輩、それ俺からー」


 ……鷺坂君のは、鷹藤君に行ったかのか。

 となると、『私→会長』『桜峰さん→副会長』『神原さん→鷺坂君→鷹藤君』『夏樹←→鳴宮君』になるわけだけど……


「この様子だと、俺のと、未夜のと、鷹藤のが、行方不明ってことか」

「行方不明は違うと思いますが、まあ、咲希の持ってるものが会長からのものでないのなら、副会長か鷹藤君のものってことになりますね」


 そうなると、『桜峰さん←→副会長』になるわけだけど、私と会長、鷹藤君のものがどこにいったのか分からなくなる。

 もし仮に、手元にあるのが会長からのものであれば、最初からそれは自分からのだと言ってくるだろうから、私の手元にあるやつが会長からのものとは考えにくい。


「……神原さんの手元にあるのが、会長のものか副会長のものかでローテーションが決まるので」

「いや、ローテーションって……」

「飛鳥ー」


 会長の微妙な表情を余所に、桜峰さんがこっち来る。


「誰からのか、分かった?」

「全然。ところで副会長」

「何ですか?」

「神原さんの持ってるやつ、見覚えありますか?」


 そう尋ねれば、副会長の目が神原さんに向けられる。


「会長は?」

「どっちだと思う?」

「どちらかに答えていただかないと、手元にあるのが誰からのものか確定できないので」

「あ、材料は揃ってるんですか」

「まあ、それなりに」


 多少離れているぐらいなら、声は拾えるので。


「あれ? もしかして、全員誰からのやつか分かった系?」

「いや、女性陣の分だけが、誰からなのか分かってない状態ですね」


 鷺坂君の問いに、副会長がそう答える。


「まあ、神原さんが誰からの受け取ったのかで、私は大体分かるからいいんだけどね」

「そうなの?」

「神原さん→私の流れで分かれば、消去法で誰のが来たのかなんて分かるからね」


 よく分かっていないらしい桜峰さんに説明するが、どこか分からないようにしながらも、そうなんだと返してくる。

 少なくとも、夏樹と鳴宮君が交換になってる時点で桜峰さんと副会長もそうなってない可能性も無くはないけど、副会長がそのことを告げてない時点で、彼女の手元にあるのが、彼からのものでないのは簡単に予想できる。

 つまり、会長か副会長なの返事次第で、そういうこと(・・・・・・)になる。


「一人、納得したような顔は止めてほしいですね」

「副会長に言われたくありません」


 位置的に、みんなの声が一番聞こえていたのは副会長だろうに。


「え? 二人とも分かったの?」

「僕は分かりませんよ?」


 あ、しらばっくれたな。こいつ。


「……みんなが知りたいと言うのであれば、話は別ですが」

「教えて!」

「知りたい!」


 鳴宮君と鷺坂君が前のめりになりながら、宣言するかのように告げる。


「まず、確認とれたのが、『私→会長』、『咲希→副会長』、『神原さん→鷺坂君→鷹藤君』、『夏樹と鳴宮君が交換』の組み合わせ」

「うん……うん?」

「聞こえてたのか?」


 私の異能が何なのかを忘れたらしい二人を放置して、続ける。


「で、さっき副会長も言ったけど、私と咲希、神原さんの持っているものが誰からのものなのかが、分からない」

「そうだね」

「で、行き先不明なのは、会長と副会長、鷹藤君の三人」


 どこからどう考えたって、この三人のものは私たちの誰かに行ってると思った方が妥当なんだろう。


「そこで、会長。神原さんの持ってるものは、会長からのものですかね?」


 ほぼ断定しているような言い方ではあるが、私としては断定しているから、否定はしない。

 それにその理由として、先ほどまでのやり取りから、会長のは神原さんの手元にあるものだと予想すれば、副会長が桜峰さんに自分のものと告げてないことから、『副会長→私』、『鷹藤君→桜峰さん』となる。


「そうだな」


 会長が肯定したので、これで確定なのだと理解する。


「つまり、『咲希→副会長→私→会長→神原さん→鷺坂君→鷹藤君』、『夏樹と鳴宮君が交換』、が送り先の結果になるわけ」

「な、なるほど……?」


 桜峰さん、無理に理解しようとしなくていいよ。


「うん? 今の言い分だと、晃の分が貴女の元に行っていた可能性もありますよね?」

「会長が咲希のところにあるものは違うと言っていたし、私の持っていたものについても、肯定も否定も無かったので、流れと神原さんのがそうだと判断したまでです」


 それに、と続ける。


「もし、これが鷹藤君からのものなら、神原さんの手元にあるものについては、副会長が肯定しているはずですし」

「……ああ、なるほど」


 副会長には、何となく通じたらしい。


「まあ、これで確認しやすくなったとでも思っておいてください」

「そのための確認回でもありましたからね」


 そんなつもりは無かったけど、そういうことにしておいてくれるのなら、従っておこう。


 その後のことなんて、それぞれ料理を食べつつ、いろいろ話したりしながら過ごすことになった。


「ねぇ、飛鳥」

「んー?」

郁斗(いくと)君たちにプレゼント、渡しに行かないの?」


 桜峰さんがこちらにやって来て早々にそんなことを言うものだから、口の中に入れていたものを噴き出しかける。


「何いきなり……」

「だって、一緒に買ったじゃん」


 いや、確かに買ったけども……


「渡し(にく)いなら、付き添うよ?」

「いや、それは大丈夫……」


 気持ちは有り難いけども。


「まさか、忘れたなんてこと、無いよね? ね?」


 何か、桜峰さんの圧が凄いし、怖い。


「いや、忘れては無いんだけど……」

「けど?」

「……ちゃんと後で渡すよ」


 そう言いわざるを得なかった。

 けっして、桜峰さんの圧に負けたわけではない。


「……まあ、ちゃんと渡すなら良いけどさ」


 きっと、ここ最近の私たちの様子から、桜峰さんなりに心配してくれているんだろう。


「でも、行きにくくなったら言ってよ? いつでも付き添うから」

「ん、ありがとう」


 素直に感謝しておく。

 だって、もし本当にそうなったら――『桜峰咲希』という存在は、頼もしいだろうから。



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