水森飛鳥は、クリスマスパーティーへと赴くⅥ(王様になれた人たちと、なれなかった人たち)
さて、今度のゲームは『王様ゲーム』なのだが……
「「「「「「「「「王様、だーれだ!」」」」」」」」」
その掛け声とともに、クジを引く。
ちなみに、『王様の命令は絶対』は無しにしてもらった。
別に言う必要も無かったんだろうけど、これはこれでちゃんと言っておかないと、後で持ち出されて大惨事、なんてことになりかねないからである。
そして、王様なのか数字なのかを確認すれば、手元にあるのは『8』と書かれた棒。
「全員、自分のを確認したか?」
会長の確認にそれぞれが頷けば、今度は『王様は誰だ?』と問われる。
「はーい」
どうやら、最初の王様は鷺坂君だったらしい。
「それじゃ、何をすればいい?」
「言うのは、数字なんだよね。そうだなぁ……」
これ、特に決まってないと、考えるのに時間使うからなぁ。
「じゃあ、トップバッターっていうこともあって、一番の人。知ってる曲をワンフレーズ歌って」
「ワンフレーズ?」
わぁ……いきなり歌わされるのか。
というか、聞き返したのを見ると、『1』を引いたのは鷹藤君だったのかな?
「~♪」
そして、予想通りだった鷹藤君が「それじゃ」と言ったかと思えば、曲をワンフレーズだけ歌う。
「確かに『知ってる曲』って言ったけど、それ『校歌』じゃん!!」
「ここにいるメンツなら、知らない歌じゃないだろ?」
「そうだけどさぁ……」
反論できない鷺坂君には申し訳ないけど、この内三人は出身世界が違うので、下手にこの世界の歌を歌われて分からなかったら、こっちとしては困る。
それに対して、校歌なら桜咲学園生なら歌えるので、選曲としては良いとも言える。鷹藤君に感謝である。
そして、王様の命令が実行されたので、次の王様を決めるべく、再びくじ引きである。
私の手元には『9』と書かれた棒がある。
「次は僕ですね」
次の王様は副会長。
「そうですね……じゃあ、五番の人が好みのタイプを一つ言ってください」
「えっ」
……え、何。指名された人がすぐに反応するから、誰が当たったのか、丸分かりなんですけど。
「好きな好み……優しい人かなぁ」
「咲希先輩らしいですね」
「そうかなぁ。でも、『優しい』って部分はいると思うよ。暴力とか振る人は嫌だし」
桜峰さんの言い分も分からなくはない。
確かに暴力的な人よりは、優しい人の方が良いだろう。肉体的にも、精神的にも。
「それじゃ、次の王様を決めよう」
そう言って、再びくじ引きが始まる。
「あ、私だ」
王様を示すくじをみんなに見やすくして告げれば、面々が『一体、何を言うんだ』『変なお題、来ないよな』とばかりに黙り込む。
「そこまで、変なことを言うつもりはありませんよ」
まあ、『変なお題』なのかもしれないけど。
「その前に確認です。くじはランダムですよね?」
「ん? そうだな」
それを聞いて、あとは連番で隣り合ってないことを願うのみだ。
「五番と六番の人の座席を交換してください」
「やっぱ、変化球じゃねーか!」
「それで、誰ですか?」
文句は受け付けないとばかりに言い返せば、誰なんだと言いたげに、面々が顔を見合わせる。
「あ、五番だ」
「六番ですね」
まさかの、桜峰さんと神原さんの二人が当たりだったらしい。
「これで良いですか?」
「うん」
神原さんの確認に頷けば、彼女が分かりましたと返したことで、次の王様を決めるくじ引きがまた始まった。
☆★☆
「どんだけ、席替えするんだよ……」
若干ぐったりしているように見えなくもない夏樹が、そう愚痴る。
だが、夏樹がそう言いたくなるのも分からなくはなかった。というのも、私の『席替え指名』が原因だったのか、桜峰さんの隣になりたい男性陣がシャッフルしたがために、もう何度目かの席移動である。
さすがの私も、こればかりは予想外である。
「それじゃ、みんな疲れてるし、これで最後にしようか」
返事をする気力もないのか、片手を上げて応じる面々が何人か居たが、それも仕方がない。
ちなみに、今の私の隣は夏樹と桜峰さんである。
彼女は笑顔だし、男性陣からは羨ましそうな顔をされた。
だがな、その隣を見ろ。神原さんだぞ。
つまり、女子三人が並んでいるのだが、この並びになったのは、会長が王様で、席替えを指名したからである。
そんな状態でも、くじはしっかりと行われ、最後の王様が決まる。
「王様は……」
「あ、俺だ」
最後の王様は、鳴宮君だったらしい。
「うーん、どうしようかな……」
出来れば、席替えじゃないもので、穏便なやつにしてもらいたいところではある。
「それじゃ、一番の人が今の不満とか口にして終わろう」
まあ……それぐらいなら、良い、のか?
「一番、誰だ?」
各々が自分の数字を確認する。
「俺だな」
「……御子柴かよ」
「悪かったな、俺で」
夏樹とて当たりたかったわけじゃないだろうから、こんなやり取りになるのも仕方ない。
「それで、何か不満とか口にすれば良いのか?」
「ああ」
さて、何を言ってくるのやら。
「席替えはちょっとの間、やりたくない」
それに関しては、今この場にいる全員の総意だろうから、誰も文句も口にしない。
「それじゃ、次はいよいよメインだね」
メイン……プレゼント交換会か。
「ふふ、何が来るんだろうね」
そう言って、桜峰さんが隣でにっこりと笑みを浮かべているけど、こっちは不安しかない。
とりあえず今は、扱いに困るようなものが手元に来ないことを祈っておこう。