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水森飛鳥は、クリスマスパーティーへと赴くⅢ(指名する人・される人)


「それじゃ、クリスマスパーティーを始める」


 鳴宮(なるみや)君と話そうとしたら、パーティーの開始時間になったのか、会長が簡単に開会宣言のようなものをしたことにより、パーティーが開始された。


「……何か、ごめん」

「……いや、こっちも悪いから……」


 こっちはこっちで、お互いにタイミングの悪さを謝りあう。


「それで、話はこのまま続ける? また後にする?」

「あー、まあ……そうだね。後にするよ」

「分かった」


 やっぱり、話した方が良かったのかもしれないけど、彼がまた後でいいと言うのなら、私はそれに従うしかない。

 その後、鷺坂(さぎさか)君の言った通り、三人一組で何かするらしく、そのためのチーム分けを行うらしく呼ばれたので、そちらへと移動する。


「さて、全員いるな? 今ここには九人居るし、まずは三人ずつに分かれたいんだが……」

「それで、どうやって分ける?」

「性別では無理だし、学年別……だと、二年生が多いよね」


 いくつか案は出るが、鷺坂君の言う通り、一年生が二人(鷺坂君と神原(かんばら)さん)、二年生が五人(私、夏樹(なつき)桜峰(さくらみね)さん、鳴宮君、鷹藤(たかとう)君)、三年生が二人(獅子堂(ししどう)先輩、東間(とうま)先輩)という人数構成なので、学年別で組むなら、二年生である私たちのうち二名が一年生と三年生役にならないといけないのだが……


「そういえば、女子はちょうど三人だよね」

「あ、そうだね」


 桜峰さん……


「それじゃ、女性陣に選んでもらいますか」


 確かにそれなら学年別に分ける必要はないけど……正直、指名なんてしたくない。

 けれど、言いたいことも聞きたいこともあるので、口を開く。


「質問いいですか?」

「どうぞ」

「そもそも何をやるかによって、選ぶ人が変わると思うですけど」

「それもそうか」


 会長が納得したように頷くと、隣の副会長が「簡単なゲームですよ」と告げる。


「トランプを使ったものだったり、ボードゲームだったり……まあ、いろいろです」

「そうですか……」


 誰がどういうものを得意なのかは分からないけど、メンバー次第では何とかなる……のかな?

 そんなこと考えている間に、会長と副会長はまた話し合ったのか、口を開く。


「でも、やっぱりバランスは必要ですからね。二年生たちには誰が三年生枠と一年生枠に入ってくれるか話し合ってもらえませんか?」

「……」

「その枠から一人ずつ選ぶという形にしましょう」


 そして、次に始まるのは、私たちのうち誰が枠に移動するのかの話し合い。


「一年生にはもう神原さんがいるから、私や咲希(さき)が移動しない方がいいよね?」

「うん。人数は合うかもしれないけど、性別の面だと合わなくなるからね」


 どうせなら、各学年に女子一人にしておきたい。

 その方が分かりやすい。


「じゃあ、水森と桜峰のどっちかが三年枠に移動することになるが……」


 鷹藤君の指摘に、桜峰さんと目を合わせる。


「飛鳥……じゃない?」

「一応聞くけど、理由は?」

「飛鳥の方が先輩っぽい」


 んな理由だと思ったよ。


「おーっと、自分がまるで先輩っぽくない言い方だねぇ、咲希先輩(・・・・)?」

「いひぁいよぉ、ふぁなひてよぉ」


 桜峰さんの頬を引っ張りながら言ってやれば、やめてと訴えられる。

 けど、このままだと話が進まないので、桜峰さんの頬からあっさり手を離す。


「けどまあ、良いよ。他に反対意見が無いのなら、だけど」

「俺たちは別に構わないよ。水森さんがそれで良いのなら、反対しないし」


 これであっさり、三年枠は決まりである。


「じゃあ、後は一年生枠だね」

「他のメンバー、鷺坂と神原なんだよなぁ……」


 どうにも面倒くさそうな雰囲気を出す男性陣。

 鷺坂君はあの性格だし、神原さんは女神候補ではあるから、気持ちは分からなくはない。


「じゃんけんでもする? 負けた人が恨みっこなしで一年枠行きってことで」

「それが……無難、か?」


 結局、他に良い意見が出ず、じゃんけんをした結果――


「……」

(あきら)君に決まったね」


 鷹藤君に決まった。


「それじゃ、それぞれ決まったみたいですし、指名してもらいますか」


 そんな副会長の言葉に、女子三人で視線を向け合う。


「えっと……誰からやる?」


 桜峰さんが恐る恐る聞いてくる。


「私は最後でいいから、二人がどっちからやるのか話し合いなよ」

「いいんですか? 先輩が欲しい人材、私たちが取っちゃうかもしれませんよ?」

「そうなったら、そうなった時だよ」


 最後を希望した以上、文句など言えるわけがない。


「それじゃ、咲希先輩。お言葉に甘えて、先に選ばせてもらいましょう」

「そうだね」


 そして、桜峰さん、神原さん、私の順でメンバー指名が始まる。


「えっと、自分の学年以外で、各学年から一人ずつだから……まずは未夜(みや)先輩」

「んー、一人ずつ言ってくんですね。それなら、私は会長になりますね。水森先輩は選べませんし」


 副会長を指名した桜峰さんからの視線を受け、神原さんが会長を指名する。


「飛鳥は?」

「選んでいいのなら選ぶけど」

「良いですよ。これで一巡目は終わるわけですし」


 神原さんが桜峰さんに視線で確認すれば、意図は伝わったのか、「うん」と桜峰さんが頷く。


「じゃあ、鷹藤君で」

「じゃあ、私は(れん)君だね」


 桜峰さんが鷺坂君を指名したから、残りは私と神原さんで夏樹か鳴宮君を選ぶことになった。


「水森先輩、先に選びます?」

「神原さん、お先にどうぞ。最初に言った通り、私は最後でいいので」


 正直、私の元にどちらが来ても大丈夫なのだ。

 夏樹なら協力者組が完成するし、鳴宮君なら同級生組が完成する上に話したいことを話すことが出来る。


「んー、それじゃあ……」


 ただ、神原さんの中に女神が居るのなら、この世界の解放を目論む人間(わたしたち)を一つにまとめるような選択をしようとしないだろうから、鳴宮君が来る可能性の方が大きい……とも言える。

 そして、彼女がその名(・・・)を口にする。


「鳴宮先輩で」

「え」

「おや」


 驚きの声を出したのは、鳴宮君本人と私である。


「あれ、もしかして郁斗先輩狙いだった?」

「それはないけど、何となく夏樹選ぶかなと思ってただけだよ」


 にやにやしながら聞いてきた後輩庶務の言葉を切り捨て、そう返す。

 けど、そうか――そう来たか。

 ちらりと視線を夏樹に向けるが、特におかしな所は無さそうである。


「俺で不満か?」

「別に」


 もし、夏樹を通じて女神に情報が筒抜けになったとしても、話し合うのはこれから行われるだろうゲームについてになるだろうから、多分問題ない……はずだ。


「それじゃ、チームも決まりましたし、ゲーム内容を発表しましょうか」

「ああ」


 そして、先輩たちがやると言ったゲームは、大まかに二種類である。

 副会長が前もって言っていた、トランプなどのカードを利用したカードゲームから一つを選択、もしくは獅子堂家が所有するボードゲームから一つを選択する――つまり、アナログゲームである。

 それぞれのチームが三人ずつなので、おそらく行われるゲーム数は三ゲーム。

 ちなみに、ゲーム機を使ったパーティーゲームも無いわけじゃないけど、関連するゲームソフトは持ってきてないので、対応する最大人数的に私を含め数人は出来ない。


 その後、それなりの距離を取りつつ、それぞれのチームに分かれ、誰がどのゲームに挑戦するか話し合う。


「結局、こうなったか」

「私としては、遠慮なく作戦会議できるからいいんだけどね」


 鷹藤君の言葉にそう返す。

 まあ、私の言う『作戦会議』はどちらの意味でも、だけど。

 とはいえ、神原さん以外にここから先の会話を聞かれても困るので、こっそり防音結界張っておく。


「まあ、それは俺も否定しないんだが……」


 どうやら、察してはくれたらしい。


「飛鳥」


 夏樹がどこか不機嫌そうに声を掛けてくる。

 ……まあ、同じチームなのに省かれて話されたら、不機嫌にもなるか。


「ねぇ、鷹藤君。言っちゃっていい?」

「別に構わないが、向こうに筒抜けにならないか?」

「なっても大丈夫でしょ。どうせ君がこっち側の人間だって、向こうも分かってるでしょ」


 そもそも鷹藤君がこの世界の人間ではなく、送り込まれた人間だと、女神も知ってるはずなのだ。

 ただ彼の立ち位置が『攻略対象』なため、雪冬(ゆきと)さんや雛宮(ひなみや)先輩たちのようなことはしてきてないだけで。


「さて、夏樹」

「……何だ」


 そんなに身構えなくてもいいのにね。

 まあ、数日前の件があるから無理だろうけど、このままだと話が進まないので、無理矢理にでも進まさせてもらう。


「ここに居る鷹藤君は味方です」

「知ってる」


 その『知ってる』は、チームとしての、だよね。


「『現状でのチームとして』じゃなくて、私たちと『同じ存在』ってこと」


 これで通じるかな?


「……は?」


 まあ、分からなくはないけど、そんな反応になるよね。


「この世界を『戻す』ために、最初のペアとして送られた人」


 ちなみに、雪冬さんについては言うつもりはない。

 二~三回言っても思い出せないのであれば、また言っても意味がないと判断したからである。


「え、は……はぁぁぁぁっ!?」

「驚くのは分かるけど、声大きい」

「悪い……」


 防音結界張ってるから、まだ良かったけど、これで張ってなかったら、何事かとこちらに目を向けられていたところだ。

 それにしても、さっきから夏樹の視線が私と鷹藤君を行ったり来たりしてるが、大丈夫か?


「えっと、つまり……」

「味方」


 少なくとも、その判断は間違ってないはずだ。


「……ん? あれ、でも鷹藤って、立ち位置は『攻略対象』だよな?」

「ああ。会計席に関しては、たまたま空いてたから、そこに『攻略対象の会計役員』として組み込まれただけだ」

「まあ、私たちに『与えられた設定』があるんだから、同じような存在が居たり、先に来ていた鷹藤君にあってもおかしくないでしょ」

「それも……そうか」


 どうやら、納得はしてもらえたらしい。


「つか俺、そもそも知らなかったし、聞いてなかったんだが?」

「そりゃ、私だって終業式前に聞いたばかりだし、今言ったもん」


 だから、夏樹が知らなくても不思議ではないのだ。


「俺は時間の都合上、水森にしか話してないしな」

「前々から話したいことがあるとは聞いてたしね」

「……ほー……」


 何やら不機嫌そうだけど、原因は君にもあるんだからね?


「それで、話題は現状に戻すけど」


 二人に、カードゲーム系とボードゲーム系のどちらをやりたいのか尋ねる。


「そもそも、トランプ一つで、どれだけのゲーム数があると思ってるんだよ」

「ババ抜きとか定番系なら何とかなりそうだけど、大富豪とかローカルルールが存在するやつはねぇ……」


 ぶっちゃけ、面倒だし、厄介でしかない。


「とりあえず、ボードゲームは俺が行こう」

「良いの?」

「やりたいって言うのなら代わるが?」


 夏樹に目を向ければ、首を横に振られたので、ボードゲーム系に関しては鷹藤君に任せることにした。


「トランプ系は飛鳥の方が良いだろ」

「は?」

「いちいち威嚇してくるなよ……いや、ボードゲーム系でも良いんだろうけど、確実なやつは取っておきたくなるだろ」


 ふむ……?


「その顔、納得してねぇな?」

「私、そこまでカードゲームとか強くないから、確実なやつとか言われても困るんだけど」


 これがRPGとかならともかく、アナログゲーム系に関しては自信がない。


「どの口が言うか。オンライン上でなら勝ってたの、俺は知ってるぞ」

「それはそれ、でしょうが。大体、オンライン上でもそれ相応に負けてるから」


 それに、オンラインとは言っているが、元から入っているものか、無料ソフトのものしかやってない。


「でも、誰かが行かないといけないって言うなら、俺は飛鳥に任せたい」

「……」


 ……くそっ、こうして見る限り、嘘は吐いてなさそうだ。


「ったく、とりあえず頑張ってはみるけど、あまり期待しないでよ」

「分かってる」

「でも、飛鳥なら大丈夫だ」


 君の自信はどこから来るのかね。


「それで、夏樹はどこに入るの」

「俺は、状況次第で変える。どちらかが負けたなら、そっちに入る」

「どっちも負けたらどうするんだ?」

「それはその時。勝てる方に入る」


 まあ、そうした方がマシと言えばマシか。


「それじゃ、やるからには勝ちにいきましょうか」

「だな」

「ああ」


 そして、それぞれのチームの代表者が決まり、ゲームは開始されたのである。


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