水森飛鳥はクリスマスパーティーへと赴くⅡ(ついに始まるクリスマスパーティー)
「……」
「大きいよねぇ、私も最初見たときは驚いたよ」
こちらでは、あまりお目にかかれない建物の大きさに固まっていれば、その事に同情したらしい桜峰さんにそう言われた。
その後、会場となる獅子堂邸(別宅だけど)の一室に移動する――
「……」
――のだが、さすが獅子堂邸の一室というべきなのか、広い。とにかく広い。
ツリーの大きさも、馬鹿デカいとまでは行かないものの、部屋の広さから逆に小さく見えてしまう。
「いやもう、何これ……」
「驚くのは分かるが、毎回見てると慣れてくるもんだぞ」
いや、鷹藤君。言いたいことは分かるけども……そこは『毎年』って言っておくべきだった気がする。
「あと少ししたら、いろいろと始まるが、料理とかは適当に取ってくれて構わないからな」
「分かりました」
「了解です」
「はーい」
会長の言葉にそれぞれ頷けば、開始までの自由行動開始である。
――とりあえず、何があるか見てみますか。
すでに置いてある料理とかを見て回る。
正直、何をやるのか分からないけど、現実逃避したくなったときの逃げ道としては最適だろう。
「……」
「……」
「……」
「……」
こちらが気付いてないと思っているのか、付かず離れずの距離を保たれても困るのだが……いや、私に用があるのかどうかも分からないんだけども。
「私に何か用かな?」
「え、あー……」
こっちは何が言いたいのか分からないので、言い淀まれても困る。
「メリークリスマス! 飛鳥先輩」
しかもそこに、後輩庶務が空気読まずにやって来た。
「……メリークリスマス」
とりあえず、そう返したけど、本人はそれに満足そうにしながらも、にこにことしている。
「……で、何か用かな?」
「いやー、飛鳥先輩がどことなく寂しそうだったから、一緒に居ようかと」
「咲希は良いの?」
「咲希先輩は会長たちに取られちゃったからねー」
「だから、こっち来た」と鷺坂君は言う。
「そーれーにー……」
彼の視線が横にズレる。
誰に目を向けたのかは分からないけど、その時の目は観察するような目でもあったから、特に気にする必要も無いだろう。
「そういえば」
「ん?」
「君は、今日どんなことをするのか知ってる?」
「うん? クリスマスパーティーだよね?」
「いや、それは私も知ってるよ。その内容だよ」
別に鷺坂君が知ってようが知ってまいがどちらでも良いのだが……
「んー、進行の詳細とかは分からないけど、プレゼント交換はやるみたいだよ」
「他には?」
「他かぁ……」
何かあったかな、と思い出そうとする鷺坂君に苦笑いしつつ、変なイベント無いといいなと思いつつ、彼の返事を待つ。
「あ、そうそう。三人一組で何かするとは言ってたよ」
「三人一組で……」
「うん」
いや、九人だからバランスは良いんだけど……え、何その不安要素。
「何をするのかは、さすがに分からないけど、その組み合わせで何かするとは言ってたから、やるんじゃないかなぁ」
ちらりと時間の確認した私は悪くないはずだ。
せめて、帰りの電車の時間までに終わるような内容であることを祈りたい。
「そんなに長引かないと思うよ?」
「……だといいけどね」
正直、終電までに乗れれば、時間はどうにでもなる。
ただ、女神(もしくは身体を借りられている)であろう神原さんも居るから、誰と組み合わせられるのかが心配だし、不安なだけだ。
――本当、何もないといいけど。
けれど、内容が分からない以上、下手に手出しできないから、内容が分かり次第、対処することにしよう。
「教えてくれて、ありがとうね」
そう言って、そこから離れる。
多分、このあと話しかけに来るだろうから、あえて距離を取った訳だけど……
「水森さん」
「何かな、鳴宮君」
さて、君が話したいことは、何なのかな?