中
もしもこんな状況になってしまったら、貴方ならいったいどうする?
ただ諦める?
……それが出来れば、苦労はしないのでしょうけど。
それとも、世界を憎んで、呪いをかけてしまうかしら?
……原因を作った力を使うことに抵抗がなければ、だけれど。
……魔女にはね、それだけの力があったの。
世界を憎み、呪いをかけられるだけの、力が。
魔女が本気で呪いをかけたら、魔女の師匠でさえも防ぐことが出来ないほどなのよ。
……こんなにも不幸な才能もなかなかないと思わない?
もっとも、才に焦がれる人が聞いたら、贅沢だと思うかもしれないけれど。
持つからこその苦悩もあるーーーえ?
それはいいから、結局魔女はどうしたのかって?
……せっかちな人ねぇ。
どうしたも何も、私たちが今こうして話をしているのがその答え。
魔女が呪いをかけていたら、こんな風に穏やかに過ごすことなんて出来ないでしょう?
………ええと、どこまで話したかしら?
ああ、そうそう。
結局、魔女がどうしたか、だったわね。
魔女は、呪いをかけたりはしなかったわ。
魔女は弱い人だったから、そんなことは出来なかったの。
世界を憎むなんて、強い意思が無くちゃ出来ないもの。
そのかわり、魔女は修行を続けたの。
普通の魔女は、大体50年ほどらしいのだけれど。
魔女は150年もの間、修行を続けたーーーいえ、しまった、というべきかしら。
……その結果、魔女は、世間一般に知られているように、数多の呪いをかけていくことになったのだから。
魔女はね、魔女にとって不幸なことに、呪いの力以外を授かることはなかったの。
………けれど、幸か不幸か、魔女は出会ってしまったの。
魔女の使い魔たる、あの黒猫に。
未来予知の力を持つ、魔法猫に。
ちょびっと用語解説します。
魔法猫:魔力を持つ、特別な猫。一種類だけではあるが、魔法を使える。また、使い魔の契約を交わせば、念話が可能になるとか………ならないとか。
未来予知:全ての未来を知ることが出来る、チート能力…ではない。一人の人間について知ることが出来るのは、もっとも不幸な未来、とか、一番平凡な未来、みたいな感じで、一種類のみ。ただし、どの未来を知るのかは選べるとか………ないとか。






