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とある村のクリスマス  作者: 藻塩


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2/2

ネタバレ編


 ――やっと、やっと辿り着いた、気がする!

「あの! ここはサンタクロース様とトナカイ様が降臨される村でしょうか!」

 宿屋にて、ついでを装って聞いてみた。

 コラム「旅人紀行」には宿屋のマスターが優しいって書いてたのにゴツくて怖いんですけど!?

「お客人は祭り目当てか? 残念だが今年の祭りは終わっちまったぞ」

「ええーー!! マジで…!」

 迷子になってたからな…、旅人さんの地図わかりにくすぎ…。

 

「まあまあ、しょげるなお客人。もう少しで年越し祭りがあるから」

 ナニソレ初耳。

「ああ、兄ちゃん良いガタイしてるから鐘付きできるかもしれんぞ」

「おわっ、いってぇ」

「いやちょいと厳しくないか? 厚みが足りない」

 バンバン肩や背中を叩かれて吹っ飛びそうになるってどんだけ…!

「あ、こちら最新の「鉄男」「筋肉と健康」「野生人」です。皆さんでどう………ぞ…」

 俺が言い切る前に肉壁に囲まれた! 移動要塞チョモランマ! さっさと差し出して逃げる一択だなこりゃ。

「ちょっと休んでくるんでまた後でお話聞かせてくださーい」

「おお、寝る前の筋トレを忘れるなよ」

 部屋へ逃げ込、いや戦略的撤退した。旅人さんのコラムを読み返さねば。 

「おーい、飯の時間だぞ」

 はっ、寝てた!


「おいおい、お客人すこい寝癖だぞ」

「いやー、宿が良いから気持ちよく良く寝れました」

「ははは、世辞が上手いなお客人! 大盛りにしてやろう」

 よし、掴みは上々…言うぞ…!

「さ、酒は? 麦酒とか」

 旅人さんの時は豆乳(プロテイン)一択だったが…さて

「悪いな、酒はないんだよ。水か豆乳(プロテイン)だが寝起きなら水のほうが良いだろう」

「っ、な、ならそれで」

 キターーーーッ!! 豆乳、プロテイン! 旅人紀行は本当だった…! 感動しかない…。


「ふう、美味かったーごちそうさまでした。風呂は入れる?」

 例の風呂屋とか!

「ああ、この時間なら公衆浴場が開いてるぞ」


「こんばんはー」

 ガラリと引き戸を開け…お、重い…開けて金を払う。蒸し風呂に垢擦りもセットで。たかっ!!!

「おお、スベスベ」

 担当が子どもじゃなかったが気持ちよかった。でも垢擦り後のケアクリームが黒くないぞ?

「それは儀式用のやつだな。特殊なやつだから普段は使えん」

「儀式?」

「ああ、神様の御前に参上するとき用だ」

 こんなにさらっと神様トーク…!

「塗ると清められるとか?」

「清めは風呂と垢擦りさ。黒い方が筋肉が美しく見えるんだよ。サンタ様は筋肉の神様だから筋肉を何よりも重視なさるんだ」

 た、旅人さーーーん! サンタクロース違いみたいですよー!

 薄々、というか結構はっきり気付いてた。旅人さん何か勘違いしてるって。

「サンタ様…、サンタクロースとは別ですよね…?」

「ははは、音が似てるけど別さ。サンタ・クロス・スクワット神様と仰るんだ」

 た、旅人さーーん! 名前も覚え間違ってますーー!

「サンタ様の髭は乳酸と知恵を象徴してるんだ。筋肉だけじゃなくて……」


「長い、長かった神様トーク…。空気椅子にも参加させられたし旅人さんとの扱い違いすぎじゃ…」

 今日はもう動けそうにない…明日は筋肉痛確定だなあ。

「でもまあ、年越しにも神様来るみたいだし凄すぎ村」

 神様に会えるといいな。

 

「お客人、そろそろ起きられるか」

「ん…? あれ、寝ちゃってた…!?」

「ああ、残念だが祭りへの参加が叶わなかったようだ」

 んん!? えっ、あれっ、どゆこと?

「良く眠っていてな、水をかけてもぶっ叩いても起こせなかった」

「うわ、言われてみたら顔痛い!」

 腫れてね? これ腫れてるんじゃ?

「残念ながらお客人は基準に達していなかったようだ」

「あー…、そっか、そうかあ…筋肉足りなかったんだ…」

「筋トレしてくか? 宿の器具使えるぞ」

 


 コラム「旅人紀行」のファンによる聖地巡礼は困難を極めるという。無自覚な方向音痴に加え記憶に頼って書くコラムに正確性が薄いからだとファンは分析する。しかしその難解さに故にコアなファンは多いとか――。

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