第四話「干物とプリンと決意」
──五分が目を覚ましたのは、ふわりと優しい布団の中だった。
「……うう……この枕……いい匂い……グヘヘ」
「──私のだけど?」
「……やっぱ前言撤回で」
目の前にはエプロン姿のさくらが、立っていた。 意外と似合う。
五分の横では、湯気を立てるおかゆとお茶。完璧な看病セット。
「本当に心配したわ、あなた倒れてたのよ、猫に囲こまれて。」
「うん、確かにそれは別の意味で心配」
さくらが一言呟く。
「あんな所で何してたのよ?」
「うぅ、なんだか黒の組織と戦ってた気がする……」
「“気がする”ってなによ……また妄想バトル?最近のラノベ読みすぎじゃない?」
「妄想じゃなくてリアル修羅場だったんだって!!」
五分がバタバタと布団をめくって起き上がると、同時にインターホンが鳴る。
ピンポーン!
「こんにちはー!ボロボロの五分が収穫されたって聞いて来ましたー!」
「“収穫”って何!?」
登場したのは、陽気なクリチー。手にはお見舞いのプリンと謎の干物♪
「え、どっちが本命?」
「干物だね。プリンはついで」
「……そっちかよ」
閑話休題。
三人がちゃぶ台を囲むと、さくらが改まって口を開いた。
「それで……本当に何があったの?どうしてあんなにボロボロで倒れてたの?」
クリチーも神妙な顔で頷く。
「もしかして……新種のナメクジと戦ってたとか……」
「僕を何だと思ってるの!?」
少しの沈黙のあと、五分は淡々と炎王の計画やこの目で見たことを全て話した。
────クリチーが深刻そうに話す。
「うわ……それ絶対プリンの賞味期限も飛ぶやつじゃん……」
「いや、まずそこ!?疑ったりしないの?!」
さくらは華麗にツッコミを入れとクリチーが優しく微笑みながら話す。
「うん、だって五分が今更嘘をつくと思わないからね」
五分が疑問する。
「?」
「なんでもないよー♪」
二人をチラチラ見ながら、さくらは言う。
「とりあえず警察に通報して、大人の人たちに任せましょう」
スマホを取り、電話する。
──通報後──
「……全く相手にされなかった……“また、五分くんか”って言われた……」
「まるで常連じゃないの」
「通報マニアだからね!」
しん……と静まる部屋。
だが次の瞬間、クリチーが手を叩いて立ち上がった!
「じゃあ、私たちでその炎王とやらの計画を阻止しよう!」
「えっ!?ちょっと待って、いきなり行動派すぎない!?」
「まぁどーせ干物になるなら、行動してから干物になろう!」
「いや、干物前提かよ………」
桜が渋々苦笑する。
そんなこんなで、3人の前には、運命の選択肢が現れる。
戦うか、逃げるか。未来か、干物か!
「えっ?僕の意見は……?!」
「よーし!じゃあ明日、出撃準備だね!」
「え、明日なの!?心の準備って概念どこいった!?」
「あと五分、干物持ってく?」
「いらへんわ!!」
こうして、炎王の陰謀を阻止すべく、
存在否定される五分、やたらノリノリなクリチー、そして頼れる幼なじみさくらこの3人は──
運命の炎に、一歩足を踏み出した。
「俺達の冒険はここからだーッ!」