第三話「やっとバトルへ、二話の苦痛は黒歴史」
五分、さくら、クリチーの三人は、田中救出作戦、決行から約一時間後、街のカフェの店内で一息ついていた。
エアコンが程よく効いたカフェの中、3人はアイスティーやかき氷など冷たい飲み物を片手に、今日の出来事を振り返っていた。
「いや、…あの五分、あの作戦は流石に異常すぎるわよ、」
さくらがジト目で五分を睨みつける。
「本当にさくらちゃんの言う通り!下品にも程があるっ!」
「僕じゃないって!クリチーだよね!?お前が言い出したんだよ!?」
真剣に呟く。
「……人生ときに答えなくていい事もある」
「言い訳やん」
「まぁ無茶な行動は程々にね…」
さくらがため息をつきながらも、苦笑いを浮かべる。
その後もしばらく、3人は他愛のない会話を続けた。
店内のテレビでは、気象ニュースが流れている。
《続いては全国の気温です。五島地方では観測史上初となる48度越えが続いており……》
「最近の五島、暑いよね」
クリチーが苦笑するとさくらがツッコミを入れる。
「今の速報聞いてよく言えるわね、クリチーの暑い基準どうなってるの…」
「暑いってレベルじゃねえぞ」
その後、3人はそれぞれの予定のために別れることに。
何やら展開が始まる予感を感じ五分は一人、帰り道の途中、額の汗をぬぐいながら呟く。
「全然、動いてても、暑い。本当に暑くて干からびそうーだよ」
暑さ対策委員会を結成しようかと考えていると、ふと、路地裏の陰に不審な黒服の男たち二人が集まっているのを見つける。
その異様な雰囲気に五分は身を低くして、物陰に隠れた。
(なんだろ……もしかし、これ、背後から薬飲まされて幼児化する棒メガネ名探偵みたいになったり…!!)
五分がそっと目を凝らして聞き耳を立てると、男たちの会話が聞こえてくる。
「これで五島中に装置の設置は完全に完了した、後は本拠地のコア♡で制御を始めれば、これ以上の暑さで人間どもは弱る」
「炎王様の計画、順調じゃないか。まさかこんなにうまくいくとはな、なあ兄者」
(コア♡?本拠地?ってか、こいつらが暑さの原因…?……ってかなぜ♡?!)
思わず体を動かしてしまった五分の足元で――
「バキッ」
小枝を踏んだ音が、乾いた路地裏に響いた。
「誰だ!?」
男たちが一斉にこちらを振り向く。
走り出そうとするも、目の前に一瞬で現れる黒服の二人組。
「おいおい、何を聞いてた?」
「見られちゃ困るんだけど〜お嬢ちゃん」
「い、いえみ、見てません、と、通りすがりの通報マニアですっ!」
思わず自分の趣味を言葉にしてしまう。
しかもこの状況においてかなり不利な趣味だ。
「い、いや通報マニアってなんだよ、……てか通報するって…バリバリ見てるじゃねぇか!」
「そりゃあもう、お宅らの悪事は全て……」
「否定しないんだ…」
閑話休題。
「……もういい。茶番はここまでだ、兄者こいつ殺っちまおうぜ」
一気に空気が変わる。
黒服の奴らが本気の殺意を滲ませ、五分に襲いかかる。
「ちょ、ちょっと待って、僕、通報してないし、まだ保護観察中だから!きゃっ!」
「言い訳は聞き飽きた。計画を知った以上、生かして帰すわけにはいかない!!」
黒服の拳が飛んでくる!
凄まじい一撃が五分の腹に入り、吹き飛ばされる!
全身が痺れ、地面に崩れ落ちる。
(痛たた…)
そのときだった。
──バチッ!
五分の体から、何かが爆ぜるような感覚。
拳が熱を帯び、赤いオーラがうっすらと揺らめく。
(なんだ……これ?)
目の前に立つ黒服が怯んだ。
「な、なんだこいつ……さっきまでヘロヘロだったのに……」
五分はゆっくりと立ち上がると、拳を強く握りしめる。
(何か分からないけど勝てる気がする…!!)
「……通報は……」
「……拳で伝えるタイプだッ!!」
ドガァッ!!!
渾身の一撃が炸裂し、黒服の1人が壁にめり込む。
残った1人も五分の目の圧に気圧され、後ずさる。
「チッ、撤退だ! こいつ……何かヤバイ!」
黒服たちは慌ててその場から逃げ出していった。
────────。
「はぁ……はぁ……」
五分はその場に膝をつき、意識を失いかけながらもつぶやいた。
「……どうしよう、頭がクラついて……」
バタッ。
路地裏で一人、倒れる。
──数十分後。
五分はさくら宅へと運ばれる。
ベッドの上で、寝息を立てる彼を見て、さくらが呟いた。
「……まったく。だから無茶はするなって……。」