表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/13

第5話:聖域の森への出発

翌朝、街の門前に集合した俺たちのパーティー。


ガロン、リーファ、エリス、そして俺の4人だ。


「装備の確認をしよう」ガロンが言う。


彼は重厚な鎧に身を包み、背中には大剣を背負っている。昨日の料理効果でさらに威圧感が増している。


リーファは軽装の革鎧に短剣とショートボウ。動きやすさを重視した装備だ。


エリスは上質な魔法使いローブに美しい杖。貴族らしい品のある装備だが、実用性も十分考慮されている。


そして俺は...


「健太、その装備で大丈夫?」リーファが心配そうに聞く。


俺の装備は相変わらず粗末な服と、エリスが用意してくれた調理道具だけだ。


「料理人ですから、これで十分です」


実際、戦闘は仲間に任せるつもりだ。俺の役割は料理でのサポートと、目的の食材採取。


「でも、何かあった時のために...」


エリスが小さな袋を差し出す。


「これは?」


「簡易的な防御の魔法石です。危険を感じた時に握りしめてください」


「ありがとうございます」


エリスの気遣いが嬉しい。


「それじゃあ、出発するか」


ガロンの合図で、俺たちは聖域の森に向かって歩き始めた。


---


街から森までの道のりは約2時間。


歩きながら、エリスから兄の病状について詳しく聞いた。


「兄は【レオン・ヴァルハイム】と言います。王国騎士団の副団長を務める優秀な人で...」


エリスの声に誇らしさと愛情が込められている。


「1ヶ月前、遺跡調査の任務で古代の神殿を探索した際、突然倒れました。それ以来、原因不明の衰弱が続いて...」


「どんな症状なんですか?」


「魔力が日々減少し、体力も徐々に失われていきます。まるで生命力そのものが吸い取られているように」


典型的な吸収系の呪いだ。料理スキルの知識が教えてくれる。


「宮廷魔術師の先生方は、古代の邪悪な呪いだと仰いました。通常の解呪では太刀打ちできないと...」


エリスの瞳に再び涙が浮かぶ。


「大丈夫ですよ」俺は優しく言った。「必ず兄さんを救います」


「健太...」


エリスが俺を見つめる。その瞳に希望の光が宿っているのが見えた。


「おい、森が見えてきたぞ」


ガロンの声で前を見ると、うっそうとした巨大な森が姿を現した。


【聖域の森】


木々が天高くそびえ立ち、森の奥は深い霧に覆われている。確かに神秘的で、どこか神聖な雰囲気を感じる。


「ここから先は危険地帯だ。俺が先頭、リーファが偵察、エリスとケンタは中央で」


「分かりました」


隊列を組んで森に足を踏み入れる。


---


森の中は外界とは別世界だった。


空気が澄んでいて、どこか神聖な雰囲気が漂っている。しかし同時に、危険な魔物の気配も感じられる。


歩いて30分ほどで、最初の魔物と遭遇した。


「【フォレストトロール】だ!」リーファが叫ぶ。


巨大な人型の魔物が木陰から現れた。身長3メートルはある巨体から、強烈な殺気が放たれている。


「エリス、魔法の準備!リーファ、援護射撃!」


ガロンが大剣を構える。


「【ファイアボール】!」


エリスの魔法が炸裂し、トロールの肩を焼く。しかし、ダメージは軽微だ。


「硬い!」


「任せろ!」


ガロンが飛び出し、大剣を振り下ろす。昨日の料理効果で強化された筋力が炸裂し、トロールの腕を深く切り裂いた。


「ぐおおお!」


トロールが怒り狂って反撃するが、リーファの矢が目を射抜く。


「今だ!」


ガロンの必殺の一撃がトロールの胸を貫き、巨体が倒れ込んだ。


「やったぁ!」リーファが飛び跳ねる。


「さすがですね、ガロンさん」エリスが感心する。


しかし、俺は別のことに注目していた。


倒れたトロールの体から、不思議な光る液体が滲み出している。


『【トロールの血】

・生命力強化:HP+100、回復力向上

・調理効果:適切な調理により効果が大幅に増強

・希少度:★★★☆☆』


「すみません、少し時間をください」


俺はトロールの血を丁寧に採取した。この森では、戦闘のたびに貴重な食材が手に入るかもしれない。


---


森を進むこと2時間。


途中、数回の魔物との戦闘を経て、俺たちは森の奥深くに到達した。


「疲れましたね...」エリスが息を切らしている。


「少し休憩しましょう」


俺は採取した食材を確認した。トロールの血、森で見つけた薬草、そして戦闘で倒した魔物の肉。


「みなさん、料理を作りますね」


簡易的な調理器具を取り出し、焚き火を起こす。


トロールの血を薬草と混ぜ合わせ、魔物の肉を丁寧に焼く。料理スキルが最適な調理法を教えてくれる。


15分後――


「【森の恵みスープ】と【魔力回復ステーキ】の完成です」


香ばしい匂いが森に漂う。


「美味しそう...」リーファがごくりと唾を飲む。


「いただきます」


みんなで料理を口にする。その瞬間――


「あ...」エリスが驚いた声を上げる。「魔力が一気に回復しました」


「俺もだ。疲労が完全に取れてる」ガロンが驚く。


「HP も満タンになった!すごいよ健太!」


リーファが嬉しそうに言う。


俺も効果を確認する。全員のHP・MP完全回復、さらに一時的な全ステータス向上効果も付与されている。


「これなら、森の奥まで安全に進めそうですね」


「ああ、心強いぜ」


その時、森の奥から美しい光が漏れてきた。


「あれは...」


エリスが指差した方向に、七色に輝く神秘的な光が見える。


「【浄化の果実】の光だ」


料理スキルが教えてくれる。ついに目的地に到達したのだ。


「みなさん、行きましょう」


「おう!」


俺たちは光の方向に向かって歩き始めた。


しかし、この時の俺たちは知らなかった。


浄化の果実を守る【聖域の番人】の存在を。


そして、この冒険がエリスとの関係を決定的に変えることになるということも。


第5話 完



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ