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00. ゴヴニュ神話
命鉱神ヲルカヌス。
火と大地を司り、この地で最も若き、実りと鉱物の神。
八方を急峻な山々に囲まれた〈ゴヴニュ四国盆地〉、この大地において、最も貴き神。
ヲルカヌス神は人々のために火を与え、鍛冶を教え、〈命鉱の大山脈〉という武器生みの山々をお創りになった。
しかし、ヲルカヌス神と対を成す〈隻腕の怪物〉がこの地に現れる。
隻腕の怪物は〈命鉱の大山脈〉に度々呪いをかけて土砂崩れを引き起こし、怪物の残っている右腕はあらゆる鉱物や武器を錆び付かせ、禍をもたらした。
ゆえに、命鉱神ヲルカヌスを憎んでいるのであろうその怪物は——〈錆犬王〉と恐れられた。
〈錆犬王〉の出現より千年。
ゴヴニュ四国盆地に在る一国、ゴヴァノン国に命鉱神ヲルカヌスの申し子と神託された子どもが生まれる。
ゴヴァノン王家の末子。その名を「勇者エヌナ」と云った。