表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

第4話【覚醒】



「――どうだろう、少しは理解してもらえただろうか」


 ケーボーイの説明は、現役JKの頭をフル回転させてやっと理解できる内容だった。


「で、こいつらどうすんだ? 消す?」


 スポーンが私らをジッと見てくる。

 その言葉がニッタを貫く。


「えっ怖ッ。なに? なにをする気だ?」


「記憶だよ。もう覚醒しちゃってるかもしれないけど、もしあなたたちが現状を忘れたいのなら、ケーボーに頼めば記憶を消してくれるよ」


 テラはさらっと凄いことを言う。

 ケーボーイがうんうん頷く。


「怖いことにはなるべくみんなを巻き込みたくないし、僕の能力で最近の記憶を消すことができるから」


「そんな!! せっかくノバフラの皆様と逢えたのに!!」


 全員の注目を浴びた私。

 視線が熱い!


 このタイミングで湖沼くんが挙手をする。


「あの、ボクもせっかく助けていただいた命なので、役に立てることがあるなら言ってください」


 へぇ、とジータスから声が漏れる。


「この4人で、半年間で何人も救出できたんだが、どれも死と隣り合わせの危険な闘いだった。そして救った人々はみな普段の生活に戻れるように記憶を消してきた。君たちも――」


「じゃあなんでボクらにここまで話してくれたんですか!!」


 湖沼くんがキレた……。

 今日一びっくりした。


「ボクの『(ゆが)み』は、『執着(しゅうちゃく)』です。あの日ボクは死にたかった!!」


 先生は察していたのか、暗い表情を見せた。


「死への執着が、ボクを狭間へと連れていったんです。それなのに……どうして……!」


 テラが湖沼くんの隣に移動して、肩に手を回した。


「ねえボク。怖いんでしょ? 死にたいんでしょ?」


 テラの行動は優しさなんかじゃない。

 その欲望が、狐の覆面の下から滲み出ている。


「ね。()()()


 その時だ。

 異常な空気の中、湖沼くんの背後に黒い(もや)のようなものが立ち込めている。


「――テラさんはボクが怖くないんですか?」


 瞳孔全開。

 彼の黒髪が逆立ち始める。



 ゴゴゴゴ……ピリッ!!



 その裂け目からは、(むくろ)がこちらを見ている。


 それは、先に視たあの化け物とはまた異なる存在。


「怖くないよ? 男の情熱を受け止める権利は女の私にあるでしょう?」


 その言葉を聴いた湖沼くんの瞳がスッと戻る。


「どうやら湖沼くんの能力は、冥府から死者を呼び寄せる類のものかもしれないね」


 私とは対照的で、ノバフラのメンバーは身動(みじろ)ぎひとつしていない。


 きっと経験ーー場数が違うんだ。


「ッおいケンタ。てめェ合格だ」


 え!?

 スポーンはいまなんと?


「感情のコントロールが見て取れるね。湖沼君、そのガイコツ、自在に操れる感覚あるかい?」


「もちろんあります」


 イマイチ状況が把握できていないのは私だけ?


 湖沼くんは黒い(もや)をだんだんに収めた。


「――ここ最近、事件の発生件数があまりにも多い。僕たち4人は『次元の狭間』を利用して日本中を割と瞬時に移動できるんだけど、対応しきれなくなってきている」


「まぁ、仲間っていうか、やっぱ力がある人材は欲しいっすねー」


 ケーボーイとジータスは天井を見上げている。

 何か考えがあるのだろうか。


 ケーボーイは質問する。


似内(にたない)先生と音咲さんは、何か覚醒した感覚はありませんか?」


 えっ、どうしよう全くないんですけど。


「……ある。あるよ」


 ニッタ!?


「さっきから脳が活性化されてるっていうのか? 不思議な感覚が続いてるんだよ」


「覚醒した力を言葉で説明できます?」


 そう言われてニッタは立ち上がると、ポケットから眼鏡ケースを取り出す。


 授業中はいつも赤い(ふち)の眼鏡をかけていた。

 ニッタは皆の前でそれを持つ。


「私さ、担当教科が音楽なんだ。楽器やってる人なら知ってるかもしれない『音階のパラドックス』、わかるかな」


 眼鏡を胸元に近づけて、上下にゆっくり動かす。


「私は絶対音感持ちなんだ。だから気付けた音と音の無限。例えば『ミ』から『ファ』に音が移るのにどれほどの音が間に詰まっているのか」


 そして眼鏡をチャッと掛ける。やっぱり先生可愛いな。


「シャープやフラットははっきりと間の音ーー半音として存在しているにもかかわらず、この眼鏡もそうさ、歪んだレンズの動きも、色のグラデーションも――私は無限を認識してる」


 それは一体全体どういうことなのか、まだ私は理解できていない。


「音として認識できているはずの、本来存在しない間の音。たまたまだけど、私は今日そのことを強く感じてしまった」


 先生は真顔でこう述べた。


「たぶん、私の持つ力は『無限』。悪いけど、とてもじゃないけどこの力は人に試すことはできないね」


「いいっすね。ケーボー、合格っしょ?」


 あぁ、と真剣な眼差しで先生を見るリーダー。


「湖沼くん、似内先生も、訓練で直ぐにでも『次元の狭間』へ行けるようになる。音咲さんはどうかな?」


 若干の冷や汗を流しながら無感情で答えた。


「あの、ワタシナニモワカラナインデスケド」


「よし、てめェの記憶は消す」


 ちょっと待ってぇえええ!!!!

 私だけ置いてけぼりなんて嫌ぁぁ!!!!


「スポーン、ちょっと待とう。覚醒には個人差があるし、さっきも言った通り事象と物質、何がきっかけかわからない。音咲さんは僕たちと特訓かな? それとも――」


「あっ、ワタシヤリマス」


 絶対にこの幸せ絶頂な記憶、消してたまるか!


 ――こうして説明を受けた私たち3人は、私だけ『はみだし者』だけどノバフラチームの仲間に加えてもらえることになった。


 もちろん危険なことは全員承知の上で、これ以上被害者が増えないように問題解決に向けてこれから活動するわけで。


「最後に、僕からみんなに伝えたいことがある」


 ケーボーイの意思が表明される。


妖魔(デーモン)は居てはいけない存在。そして僕は人殺しはしたくない。慎重に、この大問題を攻略しなければならないんだ」


 彼の優しさを、羊の覆面の奥から感じた。


「テラ、3人におまえの能力を話してくれ」


 テラは妖艶な狐の覆面を両手で触る。


「ちょっとした危機察知の力さ。あたいのネットワークで助けにいけると思うから、ピンチの時は遠慮なくあたいを思い出してね」


「テラ様ステキ♡ ハグしたい♡ でもスポーン様は私に超冷たい♡」


 ドカッと脚を組み、スポーンがこちらを睨みつける。


「音咲てめェ、使いもんにならなかったら即追い出すからな。覚悟しとけよ」


「辛辣♡ でもそこが好き♡」


「……さっきから心の声漏れてんぞコラぁ!!」


 おっ、襲われる!! 助けて!!

 ドタバタと室内を走り回った。


「おっと、もうこんな時間か。じゃあおまえたち、3人をそれぞれ家まで送ってあげてくれ」


 次元の狭間って案外便利なのかもしれない――


 わ、私も早く役に立ちたい!!






皆さんこんにちは。ノバディフラワー、ボーカルのカーボーイです。⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価・ブックマーク・いいね・感想・レビューなど、よろしくお願いします。

盛り上がっていきましょう!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ