表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はみだしパラドックス  作者: 御実ダン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/21

第13話【ようこそ永田町へ】



 ――【2028年 2月29日 PM8:42】


 ――【東京都 千代田区 永田町】


 スマホを取り出し、情報を確認する。

 ターゲットは『桝田金吉(ますだかねよし)』と『柳橋富録(やなぎはしとみろく)』。


 共に70代の男で、見た目はごく普通の健康な高齢者といった雰囲気だ。胸には議員バッヂが付けられているが、現時点での服装は最新版として更新されている。


 どうやら『プログラム』という仲間は優秀らしい。


 僕とガリブルは、予定された現場付近、ビルの屋上で待機中。もちろん無人で、監視カメラから外れた場所から料亭『神家飯盒(かみやはんごう)』を見下ろしている。


 ――そして、支給されていた無線イヤホンから音声が届く。


「あーあー、マイクテスト、マイクテスト♪ こちらプログラム。みんな元気ぃー? さあ始まります今夜のヒットキル。これから一人ずつ通信チェックをするぞぉ~! 呼ばれたら返事はしなくていいから耳に手を当てまっショウ! おじさん視てるからねぇ~? ヨォ、チェケラッ♪」


 男の声は若々しいが、何となく法則(ホウソク)よりも年上そうな雰囲気を感じる。30代だろう。

 なんてテンションの高い奴だ……。


 メインアタッカー:『(ヤマイ)』『ガリブル』

 サブアタッカー:『信仰(シンコウ)』『偽善(ギゼン)』『サイコパス』『大喰い(オオグイ)

 バックアップ:『法則(ホウソク)』『ゲーム』『BOT(ボット)


「オオォーッケェーイ!! 準備万端オレ簡単♪ あ、別にラップは得意じゃないぜイェー♪」


 なんだこいつ。


「もしぃ? なにかぁ? はぷはぷハプニンッが発生したらぁ? イヤホン横のスイッチを押してオレっちを呼んでねー! グッドラック!! アデュゥ~!!」


 通信が終わって直ぐに無線が入る。


「ねぇ今の奴なに? なんかムカついたんだけど」


「わたし生理的に苦手だなぁ~」


 遮るように再度無線が。


「ヘイヘイヘイ、サイコちゃんにオオグイちゃーん!! キミたち、無線飛ばすなら最初にコードネーム言ってから発言しよ!? 頼むぜレイディー!! あと任務終わったら俺と夜の東京デートしよヒャアウッ!!」


 緊張感が無い。隣のガリブルも怪訝な顔をしている。

 こういうのは苦手か。納得だ。僕もだ。


大喰い(オオグイ)でーす。キモイでーす」


「こちらサイコ。こいつ後で殺すわ」


 皆、何を考えているのか。まぁお手並み拝見だな。

 そしてようやく我らのリーダーが声を発する。


法則(ホウソク)です。お遊びはここまでにしましょう。――皆、集まってくれて感謝していますよ。現状、予定通りターゲットらは移動を開始しています。全体で18名のボディガード、及びターゲット2名、複数の議員と料亭内の人間は既に『ゲーム』が支配中のため、我々は()()()()()()()。サブアタッカーの4人は任務達成後に追加で来るであろう応援部隊や、こちらに気付いた人間を無力化してください。全員、くれぐれもターゲット以外は殺さないように、慎重にお願いしますね」


 冬の最後は肌寒い。レザージャケットが風で(なび)いていた。

 ガリブルは僕の隣で真剣な目つきになっている。良い兆候だ。


「送られた情報で確認していると思いますが、今回のインナーミッションは()()()()()()()()です。(ヤマイ)、ガリブル、準備はいいですか?」


 国の重要人物が消される事実。汚職にまみれ、世を汚している張本人が誰なのかはっきりさせる。

 僕たちの目的は、ただの復讐――ではない。

 無線イヤホンに手を伸ばす。


「こちら(ヤマイ)。準備オーケーです」


 ガリブルもそっと手を耳に当て、応答する。


「こちらガリブル。世直し頑張ります」


 それぞれがそれぞれの暗い過去を断ち切った。後は進むだけだ。


「――では、21時丁度にミッション開始です。プランAが進行不可になり次第、プランBへ移行してくださいね。緊急事態発生時は初めからプランCを決行してください。以上」



 ――【2028年 2月29日 PM9:00】


 ――【料亭 神家飯盒 入口前】



 ――ブゥンッ!



 入り口の前には屈強そうなボディガードが4人立っていたが、突然目の前に現れた僕らに気付いていないのか、反応を示さない。これはゲームの支配する能力だな。視認できないのであれば暗殺は容易い。


 僕とガリブルは同時に中へ入る。頭に叩き込んだ料亭内の地図、最奥の部屋にターゲットが固まっているはずだ。


 ここまで何も問題は発生していない。筋力を上げた瞬足を駆使し、スピードを意識して現場へ直行する。

 通路には何名か料亭の人間がいたが、こちらもまた僕らの存在に気付けないでいた。


 と、ここで大きな乾杯の音頭。

 どうやら会合が始まったようだな。ガリブルも僕の隣を余裕でついてきている。


 既に開かれていた障子襖の前に立つと、ターゲットの姿を視認できた。

 すかさず通信を入れる。ここまで数秒しか経過していない。


「こちら(ヤマイ)、ターゲット確認」


「同じくガリブル、ターゲット確認」


 ふと、ここで小さな違和感があった。ほんの小さな違和感だ。


 会場にいる大勢の議員たちが飲み始めている最中、ターゲットの一人である桝田金吉(ますだかねよし)が僕を視たような気がした。腰の低い長テーブルを挟んだ、その先で。


「こちら法則(ホウソク)。了解、実行してください」


 その音を聴いて瞬時にターゲットへと飛ぶガリブル。僕は必殺の構えをとる。

 親指と小指だけを突き出し、グッと噛みつく。


「――『死の蠍(デススコーピオン)』」


「――『わたしの手は何でも切れる刃』!」


 笑っていた。

 僕じゃない、桝田が……だ。



 ギイィィィン!!



 凄まじい金属音が鳴り響くが、柳橋の懐へ飛び込んだ筈のガリブルの腕が、まさかそのターゲットに片手で掴まれている。


「……良い音ですなぁ」


「――ようこそ永田町へ」


 心臓の奥底に響くような、耳障りな重低音。

 同時に展開された空間転移――フィールドは狭間へと強制移行された。



 ――【次元の狭間】


 桝田は座ったまま何の変化もなく、握ったビールジョッキを傾け、美味しそうに音を立てて喉に流し込む。

 暗い空間だ。相手の姿は僕には視えるが、周囲には何もない。漆黒の闇。


 ……効かなかった。致死性の猛毒、即死のはずだったのに。


「ッ(ヤマイ)さん!!」


 そして腕を柳橋に掴まれたまま、座り込むガリブル。そうか、視えていないんだな。

 ゆっくりと立ち上がる老人は、掛けていた眼鏡をクイッと直す。


「キミはヤマイと言うのか? まだ若造じゃの」


 腕の痛みに顔を歪ませるガリブルに対し、僕はつい変なことを考えてしまった。



 ――ギャドッ!!



「ぬっ」


 間合いなど有って無いようなもの。豪快な飛び蹴りと同時にガリブルの腕を掴み返すと、彼女を庇うように片腕で抱きかかえ、距離をとる。僕らしくない。


 そうこうしているうちに、桝田は飛ばされた柳橋の隣に並び立つ。自身の後頭部を撫で、桝田は凍てつく笑顔を向けてくる。


「キミたちはぁ……あれかね」


 柳橋はノーダメージか。


「我々の、()()ではないのかね?」


「!?」


 どうなっているんだ。見た目はただの爺さん二人だが、明らかに何かしらの策を講じている。

 質問の意図は恐らく僕らの『血』を感じ取ったからか。


 僕はメンバー加入時に、通過儀礼(イニシエーション)()()()()()()()()()()()()()()()

 それが、仲間だと錯覚させたのだろう。そういう認知か、こいつらは。


 一先ず、抱えているガリブルに声を掛ける。


「――緊急事態だ。プランCで行くぞ」


「あぁ~(ヤマイ)さん凄く良い匂いがする……この距離感、包容力、落ちない女なんていないのでは?」


 抱きかかえていない方の手で頭に拳骨をくれてやる。


「痛ッ!? ごめんなさいわたしが悪かったです……」


「じゃあ行くぞ――」


 狭間から脱出しようとしたその時、妙な感覚が身体を刺激する。一瞬身体が振動したかと思うと、口の端から血が零れた。

 激しい痛みが全身を襲ってきたが、これはなんだ?


 プランCは全ての作戦中止、即刻退避もしくはーーの手筈だったが、まずいな。


「だ、大丈夫ですか!?」


「……だめだ、この狭間に閉じ込められている。アイツら、おそらく棘のある障壁のようなもので空間を保管している。狭間の主導権はあっちだ」


 脱出しようと試みるも、脳から全身にダメージ信号が発せられた。

 残る手段は限られている。


「おっとぉ、失礼だよキミぃ。柳橋さんが『仲間か』と聴いているではないか」


 ああ、なるほど、こいつら――

 口内の血をペッと吐き出し、応えてやる。


「悪いな。お前ら妖魔(デーモン)と違って、僕らは人間なんだ。どうせなら正体を見せてみろよ?」


 静かに喉を鳴らしたかと思うと、徐々に高笑いへと変化する桝田。

 柳橋の肩をポンと叩いて合図している。


「ハハハハ、よかろう、その勇気に免じて魅せてあげよう」


「……ただ死にたいだけじゃろうて」



 ――ググググ……ググググアアアアァァア!!!!



「ぐ、グレーターデーモン!?」


「……そうみたいだな」


 変身を終えたその姿形は悪魔的で、二体とも禍々しい双角が生えている。全長は5メートルくらいだろうか。それでも奴らの中では小型に分類されるであろう妖魔(デーモン)の上位種、グレーターデーモンは、薄気味悪い笑い声を発している。


「ハハアアァ……つまりぃ、我らの敵ということで良いのだな?」


 視界の左半分に紫色の空間が広がる。身体が青いデーモンが元桝田。

 そして――


「答えなぞ決まっておろう……」


 右半分が緑色の空間に染まる。こっちは赤いデーモン、元柳橋。


「だいぶ視やすくなったんじゃないか?」


「そうですね、汚いけどだいぶ明るくなりました。わたし、本気出しますよ。(ヤマイ)さんを殺そうとするヤツなんて許しませんから」


 さて、裏プランC『緊急事態につき、襲撃対象を撃破・殲滅』だ。






イヨォ!! チェケラッ

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価・ブックマーク・いいね・感想・レビューゥゥゥ!! ンヒャアアアアア!!!!

オレっちの名前はプログラム♪

魅力全開立ちくらむ♪


リスナーのみんな元気ィ!? 

さぁ今夜のヒットナンバーはーー


「録画止めろ止めろ、つまみ出せ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ