第10話【覆面】
――【2028年 2月19日 PM0:26】
突然のリクエストに驚きを隠せない私。
好きな動物とな?
「嫌な予感しかしないんだが、まさか……私たちにもその……覆面を着けろって話じゃないだろうな?」
ニッタ、それは直球ストレート内角高めじゃないかな。
「その通りだ」
打ったぁぁぁーーー!!
「僕らがバンド結成時から覆面を着けていた理由と、今君たちに覆面を着けてもらいたい理由は別だよ」
「……」
ニッタは目を閉じて考え込み、ケーボーイは明るい口調で話を続けた。
「『歪み』を得て、狭間での闘いが始まってから僕らは気付いたんだが、どうやらあの世界だと『獣の覆面はそのまま獣の力として自分の能力にプラスに働く』ということ。そして一度でも獣化できれば、現実世界でも同様の力を発揮することができるんだ」
凄いだろうと言わんばかりの『羊』の覆面だが、常につぶらな瞳で可愛さしかない。
なぜ羊にしたのか、これがわからない。
「変身……獣化か。確かにメリットだが、なんかそのまま妖魔みたいになっちまわないか、そこが気になるんだよなぁ」
ケンタがニッタに近づいて、100点のスマイルでこう言った。
「大丈夫だよ。もしニッタ先生が妖魔になったらボクがなんとかしてあげるよ」
「うん、普通に怖ぇーよ湖沼。おまえ殺る気だろ」
純粋のようで、どこか狂気を感じるケンタだけど、ニッタは「フッ」と笑うと――
「そんときは頼むわ」
悲しいねぇ。悲しきモンスターになっちゃうのだけは勘弁願いたいねぇ。
「いまんとこそんな感じになったことないんで、多分だいじょぶっすよ」
「てめェら心配し過ぎだ。大人しく好きな獣、選べっつーの」
あっ、そうなん。私たちの杞憂だったのかもしれない。
ジータスもスポーンも、なぜ『猫』と『狼』の覆面なのか、いつか聴こう、そうしよう。
「相性とかあるだろうけど、結局は自分が一番だって思う動物にすればいい。あたいは、あたいの性格から『狐』を選んだってだけだし」
テラの性格……うーん。
リアルな会話では硬派なお姉さまタイプだけど。
因みに、今のところノバフラメンバーは全員、性格どころか世間には年齢や性別とかの情報開示はされていない。
一番好きで、性格重視な動物かぁ。
「じゃあ、私はナマケモノがいいかな!」
一瞬、驚きを見せたノバフラの皆さん。
そして皆さん考え込む。
「叶うならずっと寝ていたいし、ゴロゴロしていたいし。パンダよりはナマケモノかなって」
「――ナマケモノって非社会性動物だし、食事全然しないし、う〇こする時くらいしか木から降りないし、ストレスにすごい弱いけど……本当にそれでいいのかい?」
「デメリットばっか!? う〇こて!」
スポーンが狼の覆面の下で「くっくっく……」と笑っていた。
「おもしれェじゃねーか。スミカ、てめェはナマケモノで決まりだな。びしばし鍛えて『ハタラキモノ』に進化させてやるよ」
あ、やっぱやめよう。兎にしよう兎。兎カワイイし。
「……ナマケモノっと」
ジータス行動早ッ! ホワイトボードに『私=ナマケモノ』って書かれた!
イコールにしないでぇ!!
「さぁ、どんどんいこう。湖沼くんは決まったかい?」
悩む先生の横で、イケメンは答える。
「――鳥。鳥がいいな」
「鳥か。強いて言うなら何の鳥が希望だい?」
ケンタは両腕を大きく広げ、鳥っぽいポージングを決める。
イケメンでもそれはないだろ。
「『鷲』にします。特にオウギワシは世界最強の猛禽類ですから」
「……ケンタは……鷲ね」
なんかズルいぞ! カッコいいの選びおって!
いや私が悪いんだ……今からでも変更したいけどスポーンの太鼓判が重荷だ。
「よし、あとは似内先生だね」
全員の注目がニッタに集まる。
だが、先生は未だに「うーんうーん」と悩み中。
「ニッタ、何にするの?」
「いや……音咲がナマケモノで、湖沼が鷲だろ? 極端だろおまえら……何にすりゃいいんだ」
ここで初めて、ジータスが自ら手を挙げ意見を述べる。
「先生はやっぱ『犬』じゃないっすか?」
ニッタの表情が強張ったように見える。
「いや、俺と初めて会った時に『犬派だ』って言ってたと思うんすけど」
「あー……じゃあ『犬』でいいや。犬にしよう。犬好きだし。犬種は……好きに決めてくれ」
どこか投げやりなニッタ。狼と若干被るけど、実際犬と狼は別の動物だしね。
「よし、これで全員決まったね。ナマケモノ・鷲・犬の覆面は、僕たちがお世話になっている専門の業者に早急に造ってもらうから、完成したら連絡を入れよう。連絡先を教えてもらってもいいかな?」
「ぎゃああ連絡先交換んんんん!!!!」
私の顔は一瞬にして真っ赤に高揚し、気絶寸前になる。
「待ってたぜこの時をよぉぉぉ!!!!」
「心の声駄々洩れっすね。はい、これ俺のオラインのQRコードね」
皆はスマホを取り出し、連絡用メッセージアプリ『オライン』で連絡先を交換し合った。
人生で今が一番幸せなのかもしれない。明日死ぬかもしれない。
このイベントを経て、私たちはようやくノバフラの――
「そうだ、ちょっと聞きたかったんだけど、このメンバーのチーム名みたいなのってあるの?」
「あ~そういやそうだな。オレらの一員だが、バンドに加入ってことでもねェしな」
またアジト全体に唸り声が小さく響く。
「ケーボー。この後の説明④で敵対勢力のこと話すよね? さっきスミカから聴いたんだけど、その敵さんらはスミカたちのこと『獣』って呼んでたらしいよ」
「テラ、それは本当か? まずいな、やはり――」
何か思案に暮れるリーダーは、キャスター付きのホワイトボードを回転させ、盤面を白紙にする。
しかし、私は思わず声に出てしまう。
「チーム『ビースト』、カッコ良くない? ノバフラらしさもあるし私好きかも」
「『ビースト』……反対意見はあるかい?」
特に誰も反応することなく、満場一致とは言えないけれどもチーム名はこれで決まり。
「チーム『ビースト』。シンプルだけど、今後僕たちはこの活動名で共に闘っていこう。その闘う相手は妖魔の他に、実は先の襲撃犯のような存在がいる――」
ホワイトボードに、一つの単語を書き込むケーボーイ。
「――『上位妖魔』。これは予測の域だけど、奴らは『下位妖魔』を使役し、歪みの有無に関わらず、普通の人間を次元の狭間に巻き込んで事件を起こしている。僕らは最終的に、その上位を叩かなければならない」
ジータスが続く。
「俺ら、一回だけ上位妖魔と闘って倒してるんすよ」
「えっ、すご」
ただ、納得いかない様子のケーボーイは足をクロスさせ、腕を組む。
「そいつは、僕たちと会話が通じたんだ。知能レベルが人間と比べて遜色がなく、ただひたすらに強かった」
「野郎とは4対1でやっとってところだったな……クソが」
気になる点は幾つもあるけど、私もいつかそんなヤバイのと闘う日がくるのだろう。
めちゃくちゃ怖い。身体がぷるぷるしちゃう。
「問題はさ、そいつはただの強い化け物だったってとこなんだよ。話は通じるが殺意ばかりで会話にならない。でも、あたいが先日遭ったのは『見た目は人間』の妖魔さ」
「今の僕ら4人は、妖魔を気配で識別できる。相手の強さも大体わかるけど、それよりも懸念されるのは、奴らは人間か妖魔か――」
もし、見た目が人間の妖魔がいるとしたら、私は闘えるのだろうか。
「あの……ボクが闘った相手なんですが、人間にしか見えませんでしたよ」
最もな意見だよ。私だってあんなオシャレさん人間だと思うし。
「人間の姿で、半分くらい妖魔の気配がある、って感じっすかね。いやー正直きついっすね」
「オレらと同じように能力使ってるし、元人間か? それとも妖魔が姿変えてんのか? めんどくせぇ……」
ここで、ケーボーイは会議の締めに入る。
「今後、奴らと遭遇しても対処できるように、狭間へ行く時は基本、二人一組だ。特訓するなら自分より格下に限定して、もし人間の姿をした者が現れた時は一旦戦闘は避け、テラ経由で応援を呼ぶか、直ぐに狭間から脱出してくれ」
ポケットに手を入れ、交差していた足を元に戻し、背筋をピンと伸ばす。
私たちのリーダーカッコいい……。
「スポーンは音咲さんを鍛えつつ、引き続き現実世界の妖魔出現を警戒。テラは湖沼くんに能力のコツを早めに教えてくれ。ジータス――」
「⑤恋人は……」
「募集は好きにしていい。似内先生に闘いのコツと『獣化』について伝授するのが先だぞ」
凄く小さな声で「御意」って聞こえた。
闘いの意思が高まる中、テラは危惧する。
「上位妖魔……今頃どこで何やってんだろうな――」
――【2028年 2月29日 PM1:00】
――【東京都 目黒区 ???のアジト】
「皆さん、よく集まってくれました」
暗がりの広い部屋に、9人の男女。
異様な空気が漂うその空間は、決して居心地の良いものではないだろう。
「早速ですが、今夜の件について話しましょう――」
響いている若い男の声は『法則』のものだ。
音咲スミカですっ! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価・ブックマーク・いいね・感想・レビューをビーストらしいテンションでお願いします!
続きを更新したらぜひまた読んでくれると嬉しいです!
っはぁー、ちゃんと言えたぁ。早く帰ってノバフラのライブ映像見たい!
「心の声ダダ漏れっすね」




