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2-3 目的の場所へ


 現代人からすれば非科学的なものに見えるかもしれない。ただ、実際そういったゲン担ぎはどこの国でもあるものだろう。もしかしたら神社参りや願掛けのようなものなのかもしれない。心理面において役に立っているのだろう。


 そんなことを考えていると空港にたどり着いた。電車を降りて改札の外に出て、空港第2ビルまで入っていく。さまざまな飲食店やお土産の店がある。ディスプレイには風水情報が映っていた。今日の運量は10段階中7、運気の方角は東ということだ。これから向かっていく方向も東のバンダの国だ。自分は少しだけ縁起がいいのかもしれないと思うようになった。


 今は10時8分だ。飛行機は11時10分に出る。搭乗口には15分前までに向かっていないといけないようだ。僕は目的の搭乗口まで向かっていった。搭乗口前にはカフェがあるが、まだボトルコーヒーを飲み切っていないので入らなかった。僕はスマートフォンで調べ物をしながら、コーヒーを一口飲んだ。


 11時になると飛行機の中に入れるようになった。僕は飛行機の中に入っていく。窓側の席だった。僕はスマートフォンを機内モードに設定し、窓の外の景色を見ながら、飛行機内で流れている音楽を聞いた。


 70年前の朝鮮を思わせるような古いイメージの曲が流れている。言語はアスフィラン語の1方言のようだ。方言といっても標準語とは別言語と思えるくらい違うらしい。僕は音楽を聴きながら今後向かっていく地に想いを馳せた。


 バンダの国はここから東にある島国であり、世界的な位置関係としては現実世界の日本に相当する国のようだ。しかし、形状がひらがなの「う」のような形をしていたり、また隣国の朝鮮半島にあたるであろう半島が南側ではなく東側に突き出しているなど、相違点も非常に多い。気候もおそらく日本とは違うのだろう。


 飛行機が離陸する。アスフィラン語で携帯電話の電源を切るかマナーモードに設定する旨のアナウンスが流れた。シートベルトをつけるが禁煙のマークはない。僕は何もすることがないので、エマア県アリト市という地名を何度も復唱した。


 ヘッドフォンからは音楽が流れてくる。今流れているのはクワルテの町出身の歌手のようだ。女性で低音のヴォーカルだが非常に発音が明瞭で聴きやすい。声調言語に合っているメロディーが綺麗だ。曲調もゆっくりで眠くなってしまいそうだ。


 座席の前にあるカタログのようなものを見てみると、そこにはお酒の広告があった。異世界にもお酒があるようだ。僕はどのような味なのか気になってしまった。


 2時間後、飛行機が高度を下げ始める。Wandaの国の東南にあるコルーゾ(Koru'uzo)県のバキ(Baki)空港にたどり着いたようだ。上空から見たぱっと見の印象だが街並み自体はあまり日本と変わらないようだった。使われている文字体系も日本語と同じように表意文字と表音文字を組み合わせているようだった。


「現在のコルーゾ市の気温は7度、天候は快晴となっております」


 機内のアナウンスが現在のコルーゾ市の気候を告げる。飛行機が地面に離陸した衝撃が伝わってきた。数分後飛行機が完全に止まる。僕は飛行機を降りて、空港ビル内にある駅まで向かって行った。


 バキ空港内にある古代の文化の展示にはバキという地名の由来を解説している文章があった。2500年ほど遡れば大陸の言葉に由来しているらしい。普通に考えたら気づかないレベルの発音の差(現代の大陸の言葉では「カリク」とのこと)だが、研究によりそれらが関連づけられているようだ。そんな展示を読みながら、僕は駅の方まで向かった。

 

 駅には思ったより多くの人がいた。日本人に見える人が多かったが、他国籍と思われる人もいた。いずれにせよ、多くの人の外見は日本人にそっくりで、よく見ても区別できないレベルだった。誰もお互いを気にしていないようで気が楽だ。僕は、ここから6駅程度のアリト中央駅まで行き、そこから乗り換え1本で行けるサイェバン駅まで到着した。


 時間は14時2分だ。ほぼ予定ちょうどの時間についた。ショッピングモールの入り口に立つと、バスターミナルがある左奥にガソリンスタンドがある交差点が見える。空は晴れているが、この地域だと夜は雨が降るらしい。ふとお腹が空いていることに気がつく。僕は駅前のビルにあったフードコートで蕎麦のような麺を食べた。言語こそ違うものの、もといた世界の蕎麦と変わらず美味であった。箸も元いた世界と同じ形状で、上側が止められていないものだった。


 山葵や唐辛子、ねぎといった薬味もあるらしい。正直、言語や文字以外はあまり異世界を感じなかった。建物や植生も日本で何ら違和感がない。


 僕は蕎麦を食べた後、ビルの中のベンチに腰掛けて時間を潰すことにした。後は目的の相手を探すだけだが、どのような見た目をしているのかさえも伝えられていない。そもそもその人がここにいない、いや、実際にはこの世界にさえ存在してすらいない可能性すらある。


 僕はあたりを探索しながらそれらしき人がいないかと探していた。建物は4階建てだが、駅とつながっているのは2階だ。僕はその辺りを探索しながら、それらしき人を探し続けた。

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