1-4 ピラミッド
サイズはぴったりだ。足がスースーして違和感を感じる。僕は、その格好でピラミッドの方まで歩いて向かった。
そこまで熱くなく、20分ほどですぐにピラミッドにたどり着いた。21時まで中に入れるらしい。今は20時すぎだ。僕は200円の入場料を払い、中に入った。
ピラミッドは砂岩でできており、中には空に浮かぶピラミッドの上の星を人々が崇めている壁画があった。研究によると、このピラミッドは元々天体観測のために建てられたものであり、これを用いて星の位置を観測し国の将来を占っていたらしい。星の位置を知ることで運勢や未来がわかるという文化だったようだ。時代が下るにつれ、かつて栄えた王族の眠る墓としても使われるようになったが、200年前までは本来の天体観測目的という用途で使われていたようだ。
当時としては考えられないほど正確な技術を持っていたようで、現代の科学と比べると流石に劣るが、100〜200年前の最先端と同じくらいの精度を有していたらしい。
内部を探索していると反対側の出口にたどり着いた。ふと夜空を見上げてみる。日本からは見られないほどの星が綺麗に輝いていた。天の川(と呼ばれているかはわからないが)が見える。元いた世界と同じ星なのかわからないのが残念だ。
ふと近くを見てみると、そこには当時観測されていた星々の解説が書いてあった。
「当時天体観測をする上で重要だとされていた星は、夜空で全く動かない星である北極星でした。北極星は当時、動かない星として神聖視されていました。このピラミッドの傾斜の角度は、北極星が見える角度であると同じである約30度弱となっています」
僕はその解説を読み込んだ。北極星はアッサード語では「ノサハマ」というらしい。動かない(ノサ)星という意味のようだ。古来は違う名称で呼ばれていたが今はこの名称が一般的ということだ。
自分はピラミッドの探索で満足したので、そこを去ってホテルまで向かって行った。まだ21時すぎだが特に何かすることがあるわけでもないし、明日の午前中にはムスティ空港まで向かいたいので、自分は飛行機を予約してすぐ早起きするために眠ることにした。4万円程度だった。
次の朝起きたら5時だった。外はほの明るいが、まだ太陽は登っていないようだ。僕はかなり早いがホテルを出て、近くのコンビニでサンドイッチを食べた後、7時前に出る電車からムスティ空港まで向かっていった。
ムスティ市の中央大聖堂(自分が見た第一感が大聖堂だったが、実際に大聖堂なのかは不明。かつては宗教で使われていたようだが、現代は宗教的な考えは薄れているようだ)からはピラミッドの方角に太陽のが見えるらしい。一度見てみたかったがそんな余裕もなかった。
この地方ではかつてウモラ教という一神教の宗教が信仰されていたらしいが、近代化につれて人々の宗教に対する信仰も薄くなっていったようだ。この国では人々が特段宗教というものを意識しているというわけでもないようだが、無宗教や無神論が主流というわけでもないらしい。それぞれの地域に昔から根付いているものを信仰している、いわゆる「土着信仰」が近年の主流のようだ。
僕自身も、無宗教だとは思ってはいないが、特段何らかの宗教を信仰しているわけでもない。家は曹洞宗の系譜らしいが、家族自身そこまで宗教を意識した生活をしているわけでもなく、自分自身も宗教をそこまで意識していない。
ウモラ教はかなり厳格な宗教であり戒律も厳しかったようだが、外国からもたらされた宗教だ。土着の宗教というわけではなく、近代化と同時に信仰が薄れてしまったようだ。僕は、そんなことを考えながら空港まで向かっていった。




