1-3 フィルハータの街へ
スープは魚介系と言った印象で、現実世界が恋しくなるようなうどん風味の麺の味だった。野菜も魚も文句を言えないほどおいしい。机の上のスパイスを手に取り麺が入ったスープに振りかける。スパイスはピリリとしていて辛いが爽やかな味だった。
僕はあっという間に食べ終わってしまった。値段は800円弱ということだった。この値段で800円弱とは日本で言えばかなり破格な印象だ。僕は、ごちそうさまでした、と伝えて店を後にした。
元の世界に戻れるならばレシピごと持ち帰りたい。自分はそう思っていた。
店を後にしたのち、駅前まで戻っていく。爽やかな気候だ。高層ビルもそこまで多くなく、すこし高いところに行けば町全体を一望できそうな雰囲気がある。僕はそんなことを考えながら、空港のあるムスティ市まで向かっていくことにした。
ウェルバイ市駅の周辺は電車も多いらしい。この地域は世界でも有数の都市らしく、ウェルバイ市周辺にアッサード国の人口の3割が集まっているという。一極集中しているということでは日本の首都圏とあまり変わらないかもしれない。
僕は切符を買い、電車に乗り込んだ。頑張れば今日中に空港までたどり着けるかもしれないが、そうだとしても始発の飛行機に乗れるのは明日からになる。おそらくサブーティク市までしかたどり着けないだろうと自分は予測している。僕は、電車に揺られながら、今日の旅の終わりとなるサブーティク市まで向かった。
気づいたら18時になっていて外が暗くなっていた。サブーティク市は最初の町と同じで砂漠の都市だった。少し離れた場所にピラミッドのような四角錐の建造物が見える。現実世界のピラミッドよりも薄い。街は夜も明るく活気があるようだ。ムスティ市はここから2個隣の都市だ。今無理に向かってもおそらく着くのは21〜22時ごろになる上、調べたが今日中に出る飛行機はなくホテルが満室であった。そのため、仕方なくサブーティク市で1晩を過ごすことにした。
電車内にはアッサード国の国旗が張られていた。中央の太陽をモチーフにした図形から放射状に外側に出ていく光と背景の青空がやけに印象的だった。
電車内で検索したホテルの方に向かう。砂漠の街ではあるが砂が吹いていたりはせず、特に不快感はない天候だ。地面も整備されており、街灯が配置されている。ホテルも難なく見つかった。僕はホテルに入りチェックインを行った。
「207号室です」
僕は指定された部屋まで向かって行った。僕は室内に荷物を置き、ホテルの部屋の中を探索した。朝止まって泊まっていたホテルと同じように、様々なアメニティが付属しているようだった。ただ、夜ご飯はないらしい。僕はホテルのロビーにいた人に、この辺でおすすめのレストランありませんか、と聞いてみた。
「少し遠いんですけど、このレストランおすすめです」
そういって彼はレストランを教えてくれた。ここから約600mほど離れた場所にあるとのことだ。自分はそこに向かった。どうやら、サンドイッチ屋さんのようだ。自分は中に入っていった。
「いらっしゃいませ」
僕は、店員に案内された通りの席に座る。メニューを眺めてみたが、夜のサンドイッチ定食があるらしい。僕は、それでお願いします、と注文した。
アッサード語でサンドイッチを意味する単語は「ドクィル」らしい。元いた世界で「サンドイッチ」と呼ばれている食べ物を考えたとの逸話で世界中の人たちに知られている人のようだ。アッサード語では音韻の関係上「ドクィル」になるようだが、日本語で書き起こせば「アメサック・ドピル(Amésak Dopir)」さんとなるとのことだ。どの世界でも似たような食べ物が発明されることは非常に面白いと感じる。
注文してから数分で定食が運ばれてきた。パンの間に様々な野菜や肉・チーズが挟まっている。そして玉ねぎスープもついてくるようだ。想像以上に量が多いが、なんとか食べきることができた。
僕はお腹いっぱいになってしまった。僕は水をもらい、喉を潤した。そして、ごちそうさまでした、といってレストランを出てホテルに戻った。
僕はお腹がいっぱいだが、あのピラミッドが気になったのでそこに向かうことにした。ふと支給されていた衣服の中にスカートの形状をしたものがあったと記憶している。自分は気になったのでそれを履いて向かうことにした。