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8-6 高次元雪見だいふく


 死後の世界は楽園ではなく意外とここと似ている世界なのだろう。根拠はないが自分はそう思うようになっていた。ただ、死という現象が怖いのは変わらない。しかしそれはまだ死というものをリアルなものとして受け入れられてないからなのかもしれない。病気や老衰などで自分にとって死が現実的なものになってくるにつれ、また死生観は変わっていくものなのだろう。徐々に死を理解し始めるか、それとも突然死を突きつけられるかによっても精神的な影響は異なってくるはずだ。


「何の話だっけ」


 話が脱線してしまった。彼女は、あの文章の話をしよう、といってくれた。


「あの世界を旅してみたいという気持ちはあるよね」


 彼女はそう話した。戻れるという安心感を持った上で旅したい感覚はある。ただあの世界に行く確実な方法がないのが辛い。


「また行く方法ないのかな」

「ないだろうね……」


 異世界というものが無数に存在するのならば、その次元はおそらく4次元以上にはなるだろう。よほどの天才でない限り、我々はどう頑張っても4次元以上の空間を空間を想像することはできないと思っている。数式や物理的な議論等で4次元空間にある物質がどのような挙動を示すのかは説明できるかも知れないが、それはあくまで「説明」というだけであり、脳内にそのイメージを思い浮かべるのは(少なくとも、僕にとっては)まず無理だ。


「次元で思い出したんだけど、次元が高いほど、雪見だいふくのアイスの体積が指数関数的に少なくなっていくみたいな話を聞いたことがある」


 ゆーまは話す。全く想像できない話だ。


「雪見だいふく球体の半径が1だとして、中のアイス部分の半径をRとすると、n次元雪見だいふくのアイスの部分の割合が全体のR^nぶんになって、nが大きいとR^nの部分が0に近づくからほとんどアイスの割合が少なくなっていくってことらしい」


 ゆーまはそう付け加えた。n次元球体の体積は半径のn乗に比例するという話は直感的に理解できる。ただ、次元が大きくなるにつれアイス部分が減っていくということは考えたことがなかった。新しい発見だ。


「アイス食べたくなってきた」


 ゆーまは話す。アイスの話をしていると、僕もふとアイスが食べたくなってしまった。僕たちはカフェにあるアイスを食べることにした。

 

 自分はチョコアイスにした。彼女はバニラアイスにするようだ。


「甘いもの好きだったんだ、なんか意外」


 ゆーまはそう言った。あまり僕は甘党っぽい見た目をしていないらしい。


「そういえばさ、ゆーまって辛いもの好きって言ってたよね?」


 ふとあっちの世界で一緒にカレーを食べたことを思い出す。なぜかはわからないが、自分は向こうの「ゆーま」と今目の前にいる「ゆーま」を同じ人物として扱うことに違和感がなくなっていることに気がついた。


「あれ美味しかったな」


 あの空港で夜食べたカレーは確かに美味しかった。探せばあれ以上の絶品はあるだろうが、あの値段帯では間違いなく破格だっただろう。


「今度カレー食べに行かない?」


 ゆーまは提案する。僕は、いつか行きたいね、とコメントした。


「おすすめのカレー屋さんとかあるの?」


 彼女は、ココイチくらいしか知らないと言っていた。確かこの近くにココイチがあった記憶がある。


「マジで今度行く?」


 ゆーまは提案する。自分は、行きたい、とコメントした。彼女は笑った。


「いいね」


 彼女はそう言ってくれた。今はこの服だから行けないが、またいつか行こうという話だ。


「他に何か話すことある?」


 ゆーまはそう聞いた。僕は,ふと思い出したかのように戻る直前のことについて聞いてみる。


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