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8-4 思い出話

「なんていうか、奇妙な話だよね」


 僕は思ったことを話す。僕としてもまだ心のどこかで信じ切れていない話だ。2年半ぶりにこうやって話していると、あのとき一緒に異世界を探検したことを思い出す。

 

「私もたまに思い出してたんだよね、あれが単なる夢だったら悲しいなって」


 確かにあれが脳内の幻覚だと納得させられると泣きたくなる。ただこうやって実際に夢じゃない可能性があることを知ると、それはそれでかなりの驚きだ。


「正直聞くけど、異世界でのあの旅楽しかった?」


 僕は聞いてみる。彼女は、今思い返すと楽しかったけど、それはこの世界に戻ってこれてるから言えてることだと思うと言っていた。


「確かに、戻れるかどうか未確定な状態で旅を続けるのは大変だしね」


 彼女は笑いながら話す。


「でも、ともくんがいてくれたからなんとかメンタルを保てていたのはあると思ってるかな。私だけだったら耐えられてなかっただろうなって思う」


 僕もそう思っている一面はあった。僕は、彼女にありがとうを伝えた。


「っていうかこうやって話してるけど、周りに聞かれてないよね?」


 彼女は心配する。確かに、異世界どうだった?とか真面目に話しているのを聞くと、周りからしたら変な人と思われるのも必然かも知れない。僕は、コーヒーの氷を噛み砕いた。


「あっちの世界で未練あるって言ってたけど、何かあるの?」


 彼女は聞いてくる。僕は、単にまだやるべきことがあると思っているだけだった。この世界をここまでで終わらせる準備も覚悟もまだまだできていないし、するつもりもない。やりたいと思うことが山のように重なっているが、手をつける気が起きず今になるだけだ。


「私もそんな感じかな、なんとなくわかるかも」

 

 1杯目のコーヒーのコップが空っぽになった。僕はスマートフォンで時刻を確認した。12時22分だ。


「恋愛とかで未練あるのかなって」


 特に恋愛で未練があるとかいう事はない。高校時代に別の高校で好きな人がいたが、大学に入ってから恋愛はほぼ完全に諦めてしまった。


「確かに女子少ないもんね」


 実際まだ理系に女子は増えていないのが現状だ。ゆーまは話す。


「そういえばさ、あの文章を書こうと思ったきっかけは何? 結構長かったけど」


 僕は後書きに書いた内容を伝えた。文章を書くこと自体は僕にとってそんなに大変なことではない。1ヶ月程度で書き上げてしまった。


「ものすごい猛スピードで書いてるね」


 彼女はそう言ってくれた。正直、僕自身でさえ自分でもよく書けたなと思っている。


「逆に気になるんだけど、男性として向こうで生活してたりとか、戻ってきたら戻ってたこととか、違和感なかった?」


 自分は彼女に気になっていることを聞いてみた。彼女は、そこまで違和感はなかったと言っていた。実際のところは経験しないとわからない感覚なのだろう。もしかしたら経験してもわからないかもしれない。


「自分が男性ということを受け入れてはいたね」


 ゆーまはそう付け加えた。そして、僕に質問した。

 

「逆にさ、最後に打ち明ける前に私のこと実は女子かもしれないって思った? 女子の私が聞くのも変なことかもしれないけど」


 僕は、全く思わなかったということを伝える。名前の漢字が少し女子っぽいとは思ったが、確証を持てるほどではなかった。一人称が私であることは全くおかしいと思っていなかった。


「なるほどね」


 彼女は自分の話を聞いてくれた。ゆーまから見たら僕は初対面ではないが、僕からみたら目の前のゆーまは初対面だ。それなのにあっちの世界のゆーまと同じノリで話せていることに自分は驚いている。


「うまく説明できないけど、あの世界で男子だったことに違和感はなかったから、今まで持っていた世界に対する考えとかあの体験で少し変わったことはあるかも、自分だけかもしれないけどね。何ていうか、肉体はあくまで魂が動くためのデバイス?って言い方があってるかわかんないけど、本体は肉体というよりは魂にあるっていうか」


 僕は、よくわからないながらも、なるほど、と答えた。


「本当は肉体と魂は切り離せないんだろうけどね」


 彼女はそういった。トイレの使い方など、男子として生きていくために必要な知識がわからないということはなかったらしい。知識として入っているというよりかは、自然と理解していただとか、そういった感覚だったようだ。元いた世界では知らなかったことも知っていた記憶があるというのが不思議だ。


「でもこういうことって本当にあるんだね、アニメみたい」


 僕はそう呟く。彼女はアイスコーヒーを飲み切ったようだ。


「そういえばさ、男子になっていたことを、旅の途中じゃなくて、最後に話したのって何か理由あるの?」

 

 自分は彼女に聞いてみる。彼女は、途中で明かしても信じてもらえないだろうと思ったからだと言っていた。あとはそう考えているうちに話すタイミングを見失ったということもあるとのことだ。


「なるほどね」


 僕は相槌をうった。納得できているかと言われればNOかもしれないが、そういうものだと心のどこかで受け入れている自分がいた。


「あと聞きたいことあれだ、戻った時どこにいたかだ」


 僕は思い出したかのように聞きたいことが浮かんだ。自分は彼女に聞いて見た。

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