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8-2 もう二度と会えないと思ってたあの人


「交通事故中、私たち会いましたよね? おかしいことを言っているのは百も承知です。ただ、今のうちに聞かなければとどうしても思ってしまって。すみません。私が変なことを言っていると思ったらブロックしてください。」


 僕は彼女のメッセージに驚きすぎて時間が止まったような衝撃を受けた。とりあえず、心当たりはあるが記憶を整理させて欲しい、と彼女に伝え、返信の文面を考える時間をもらった。


 僕としてもあの世界での記憶を一言一句を覚えているわけではない。急ピッチで書き進めた文章で、もう2年以上の月日が経つので、僕は軽く読み返して何があったか思い出した。特に思い出すきっかけがなかったので忘れていたが、読み返したときに「こんなことがあった」という記憶は消えていなかった。


 そして、僕は考えて彼女に返信した。


「実はあの経験があった後に思い返して文章を書いていたのですが、送って良いでしょうか? 長いのでGoogle Documentかなにかで送ることになりますが」


 彼女は、わかりました、と返信してくれた。僕は、実際に書いた文書を少し編集しGoogle Documentにアップロードして、彼女にリンクを送った。正直、実際に他人に読んでもらう日が来るとは思っていなかった。


「ありがとうございます、読んでみます」


 彼女はそう言ってくれた。かなり長い文章なので読むのにも時間がかかるだろう。僕はベッドの上で横たわり、あの出来事について考えていた。約3時間後、彼女から再びメッセージが届いた。


「軽く一通り読みましたが、2人が会った以降本当に私の記憶と同じで驚いています。本当にびっくりしています」


 おそらく相手と僕は実際に同じ経験をしていそうだ。僕としても驚きだ。


「あなたはどこの国のどの地方から始まったんでしたっけ?」


 僕は彼女に聞いてみる。彼女は、記憶が確かならレーニの国のトルミィウ(Tørmyiü)だったということを話してくれた。Wanda国はるか南にある国だ。


「私はあなたと同じような経験をしているのは間違い無いようです」


 彼女はそう言った。彼女としても嘘をついているわけではないだろう。


「よかったら今度実際に会って見ませんか?」


 彼女は提案する。ただ、SNSで人と会うのは初めてなので怖いと思わなくもない。そうはいっても僕の体験は誰にも話していないので、一致している以上あの「ゆーま」と同一人物(外見が違っていたとしても、同じ記憶を持っている人物という意味)で間違いないと信じていた。もしあの体験がなければ、確実に「別の世界で会いましたよね?」という質問は出てこないはずだからだ。


 もしかしたら最後の告白が嘘で、もしかしたらこの世界でも男性だった可能性はあるかもしれない。仮にそうであっても、違う人が来たとしても、それはそれでという感じだ。誰もこないことだけが唯一最悪の未来だ。僕は、話している相手が何者なのか気になっている。彼女が言っていることが本当であれば、実際に会って話せば全てがわかるはずだ。仮に嘘だったとしても、そもそも「ゆーま」じゃなかったとしても、その場合に誰が来るのかは気になる。


「どこでエンカします?」


 僕は聞いてみる。伊藤さんは数分考えてDMしてくれた。


「最寄りの路線どこですか? 私は東急東横線です」


 僕も同じ路線であることを伝えた。大岡山駅という地名を伝えると、彼女は提案してくれた。


「日吉駅前のドトールコーヒーとかどうでしょう? 個人的に行きやすいというだけで申し訳ないのですが」


 僕は、わかりました、と伝えた。日程調整した結果、早いが明日3/8の12時に駅前に集合することになった。気づいたらもう23時だ。明日の予定が急遽できたので、僕は少し早いが眠りにつくことにした。


 朝起きると7時だ。軽く朝食を食べた後、僕はYouTubeを見て時間を潰した。気づいたら11時すぎになっていたので、こないだ無印良品で買った長袖の服を着て髪を整え髭を剃った。


 日吉駅には駅での待ち時間を考慮しても20分ほどあればつく。僕は最寄り駅から日吉駅まで電車で向かった。気候は爽やかだ。到着は11時30分。伊藤さんはまだ来ていないようだ。どうやら11時50分くらいに着く予定らしい。僕は、20分の間を本屋さんで潰した。


 彼女が駅前についたとの連絡が来た。駅前にある銀色の球体のオブジェの東急東横線側に寄っかかっている黄色の服の女性ですとのことだ。僕は駅前でそれらしき女性を発見した。黒を基調に黄色の服が似合っている子だった。ショルダーバッグを背負っている、自分と同じくらいの身長の子だった。


 彼女も僕を認識したようだ。彼女は僕をみて、やっぱり想像していた加藤さんでした、と言ってくれた。

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