5-9 最後の夜
「なんかこの世界で生きていると、決して見ることのできない可能性を見ている気分になる」
ゆーまはそう言った。この世界にもゆーまと同じような人がいて同じように世界が回っていると考えるとなぜか不思議な気分になるとのことだ。
自分は妙な気分になった。この世界の話をしてもわからないことが多すぎて結論は出ないだろう。僕は違う話をすることにした。
「そうだ、元いた世界ではどんなことしてたの?」
自分はゆーまに聞いてみる。ゆーまは、サークルは特にしていなかったと答えた。自分も、特にこれと言えるサークルはしていない。
「同好会も含めるといろんなのあるよね、友達が『アイドル同好会』とか『百合同好会』みたいなのに入ってた記憶がある、何やってるのかはよく知らないけど」
ゆーまはそう言った。確かによくわからない同好会はある。
「後、麻雀やってた」
ゆーまは付け加えた。僕も麻雀はやっている。ゆーまはオンライン麻雀から入ったそうだ。
「4麻結構やってたけど、なかなか段位が上がらなくて難しいよね」
僕は話した。ゆーまは13番目の段位まで上がったがそこから先なかなか上がらなくなったと言っていた。
「ゆーまも結構やってるね」
自分はそう言った。気づいたらゆーまがレモンサワーを飲み終えていた。僕も残っていたものを飲み干した。
自分は急にトイレに行きたくなった。僕はトイレで用を足した。トイレもかなり清潔であった。
「トイレってどこにあるの?」
戻るとゆーまから質問を受けた。自分は、奥の方だよ、と説明した。
「おけ、ありがとう」
ゆーまは4杯目のパイナップル酒を頼んでいた。自分はソーダ酒を頼むことにした。
「どこの世界でも同じような飲み物があるのって本当に不思議だよね」
アルコールは腐らないため元いた世界でも世界中あらゆる国で飲まれてきたという話を聞いたことがある。古今東西様々な歴史を感じるのが好きだ。
「強いね」
ゆーまは今のところ全く顔を赤くしていない。彼の顔を見ていると、どこかで見覚えがある気がしてきた。どこだったかは覚えていない。いわゆるデジャヴというものだろう。
頼んだアルコールが届いた。僕はそれを飲んで、気分を紛らわした。
「初めて会ったときなんか見覚えがあるなと思ったら、小学生の頃好きだった子の面影があるのかも」
ゆーまはそういった。自分を見ていると、小学生の頃好きだった人(初恋の相手)を思い出すらしい。小学校2年生の時に親の都合で転校してしまい、どんな人だったかは10年以上たった今となっては覚えていないとのことだ。顔も名前も性格も、性別さえも覚えていないらしい。そもそも実在したかさえ怪しい可能性まであるといっていた。
「今会ったとしても、多分わからないと思う」
ゆーまはそういって僕に目を向けた。
「まさかと思うけど、転校してないよね?」
「自分じゃないと思う、小学生の頃は転校してないし」
僕はそういった。ゆーまは、まあそうだよね、といっていた。アルコールが入っているからそう思うだけで実際戻ったら似てないと思うのがオチだろうと付け加えていた。
「なんか思い出しちゃって、ごめん」
ゆーまはそういっていた。思えば自分も恋愛的な意味で誰かを好きになったのは小学校が最後だ。中学校高校は男子校だったため出会いがなかった。言い訳になるかもしれないが、自分としてはそう思っている。
「なんか最近、自分のじゃない記憶が流れてくる気がしてる」
ゆーまはそういった。自分が持っていないはずの記憶があるとのことだ。大体幼少期に見た記憶を忘れているだけだろうが、たまにそれでは説明のつかない現象があるらしい。彼自身前世の記憶があるだとか霊感が強いとか言うわけではないようだが、たまに知らない場所に立っているイメージが自分でも気づかずにふと湧いてくることがあるようだ。
「1回、家族で台湾に行ったとき街並みが夢の中に出てきたものと同じだったことがあったんだよね。1回も行ったことないのに」
本当の意味でのデジャヴはあまり経験した記憶がない。自分はそんなことを考えながら出されたものを食べた。まだそこまでお腹いっぱいではなく、ゆーまもまだ食べれるとのことだった。
様々な食べ物が少しずつ運ばれてくる。ゆーまと色々な話をして盛り上がりながら話し合っているともうすぐ20時だ。そろそろ終わりの時間だろう。
かなりの量を食べた感覚だが、これで3000円分くらいらしい。僕たちは、そろそろ終わりにしよう、といって会計を済ませた。2人とも食べた量はほぼ同じだろうと言うことで、同じ量のお金を払った。
外に出るとかなり寒い。僕たちはそのままホテルの方まで向かった。
「じゃあね」
僕の部屋の前でゆーまはそういって自分の部屋に向かっていった。僕も自分の部屋に入った。かなり疲れている。僕は布団に伏せると、すぐに眠ってしまった。




