表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

1-1 目覚め

 僕は、ベッドの上で目を覚ました。感覚としては、今までの体験は、時折見るタイプの、鮮明で奇妙な夢だったかのような気分だ。しかし、周りを見渡してみると、僕は知らない部屋にいることに気が付いた。僕はベッドから出て、状況を把握することにした。


 鏡には赤一色の半袖の服を着た自分が映っていた。そしてすだれを開けて、窓の外を見ることにした。

 

 まず第一に、窓の外を見た感じ、自分が今いる場所は3階くらいの高さの場所のようだ、ということが分かった。空は晴れており雲ひとつない。また、外に広がっている景色を見る限り、ここは砂漠の町といった雰囲気だ。砂漠の町といっても、地平の涯何処までも広がる荒涼の大地の中にポツンと存在するような町ではない。見わたせる限りはレンガ製の建物が多いといったイメージだ。


 ホテルには1人用のベッドが備え付けられており、他にも風呂・シャワー・トイレといった設備や、歯ブラシ・歯磨き粉・バスタオルといったアメニティもしっかり付属していた。結構きれいな部屋だった。


 体に異変はない。机の上には次のメモ書きが置いてあった。手書きでかなり綺麗な字だった。


「加藤友樹様 このかばんの中に入っているものを使用して、バンダ(Wanda)の国のエマア(Ema'a)県アリト(Aritho)市にあるサイェバン(Sajeban)駅に向かってください。そこで同じような境遇を持っている方が待っています。中に入っている紙幣は100万円相当ですが、50万円あれば余裕を持ってあなた方の旅を終えられるかと思いますので、残りの50万円分は観光などに使ってください。応援しています。 M」


 自分はかなり不気味に感じながらも、そこに書いてあることに従うほかないと感じた。


 僕は部屋に置いてあったかばんを開けた。中には、衣服・電波が通じるiPadほどの大きさの端末・大量の現金 ・世界地図が入っていた。僕はとりあえず赤い半袖の服に青色の長ズボンを着用した。


 部屋の中にある冷蔵庫の使い方などはこの国の言語で説明が書いてあった。知らないのはず言語なのに意味が理解できる。「英語を読める」ような感覚で知らない文字を読むことができるようになっていた。横一本に引かれた線を貫くように書かれた記号とその上下に補助記号を書いて母音と子音を区別する仕組みのようだ。そして、話すための知識もあるようだった。文章を読み、それに対してこの国の言葉で答えられるようになっている。


 実際には会話は日本語ではないが、以下の文章においては、特に発音が意味を持つ言葉でない限りは会話の文章は翻訳して記すことにする。また、食べ物の場合、基本的に現実世界にあるものは現実世界の名称で呼称することにする。翻訳できないものはカタカナで表記する。


 そして、僕は、中に入っていたものを一通り確認した。


 タブレット端末。どうやらインターネット・GPSが通っているようで、調べ物を行うことが可能になっていた。僕はこれを利用して、自分が今いる場所について調べた。どうやら、僕は「アッサード」という国の「フィルハータ」という都市にいるらしい、ということが分かった。地形だけ見れば、現実世界の中東に相当する場所に位置する国だ。


 時間は12月5日木曜日7時20分だった。すべての月が31日と言うことを除けば、1日は24時間・1時間は60分といった基本的な計算は元いた世界と変わらないようだった。曜日も1週間が7日なのは同じだ。どうやら、アッサード国の言葉では「何番目の曜日」という言い方で月曜日から日曜日を指定するようだ。


 僕はかばんの中に入っていた世界地図を見て、世界の様子を把握した。どうやら、形こそ違うものの、大まかな大陸の配置はもと居た世界とあまり変わらないようだ。

 現実世界のユーラシア大陸に相当するのがオリエンティア大陸であり、アフリカに相当する大陸はアスケーラ。南アメリカ・北アメリカに相当する大陸はそれぞれ南・北オルマージャ大陸。オーストラリアに相当する国にアウステラリージャが存在し、さらに南には南限大陸が存在している。

 形は細部を見れば違うものの、大雑把に言ってしまえばもと居た世界の大陸配置と一致している。

 

 現金。これは、どうやら謎の人物の肖像画の書かれている緑色のお札多数(100枚以上?)、違う人物の印刷されている赤色のお札7枚、およびルーローの7角形と呼ばれる形をした銀色の硬貨3枚とそれと相似ではあるが少し小さい黄金こがね色のコイン9枚から構成されているようだ。

 お札には見たことのない文字が書かれているが、翻訳のおかげで「読める(意味が分かる)」ようになっていた。お札の右上および左上には、いわゆるアラビア数字とは異なる数字が書かれている。しかし、どうやら0と1は異世界でも同じ形をしているようだった。


 緑のお札は100アッサード・ヒジヤ(AC)札のようだ。ヒジヤとは、僕が今いる国であるアッサード国周辺で用いられている通貨単位であり、それに国名を表す形容詞がついて、この国の中のみで用いられる貨幣単位になっているようだ。現実世界で言えば、「ジンバブエ・ドル」や「エジプト・ポンド」、「ノルウェー・クローネ」に近い仕組みのようだった。

 肖像画の人物については、詳細は不明だが、横には「アリジユブラ・ヨウグ」と発音できる文字が書かれている。おそらくその人の名前だろう。

 そして、赤いお札は10アッサード・ヒジヤ(Asaado Higiya)札。書かれている人物の名前は「サンレビム・ディヨウ」。これについても誰なのかは不明だ。

 3枚の銀色の硬貨は1アッサード・ヒジヤ玉であり、そして黄金こがね色のコインは、通貨の最低単位である1トリホコイン(100トリホ=1アッサード・ヒジヤ)のようだった。


 緑色のお札の枚数は(数え間違いがなければ)61枚だ。これから所持金を計算すると、約6000アッサード・ヒジヤを所持していることになる。つまり、1アッサード・ヒジヤは約165日本円に相当するようだ。

 もちろん、物価等が違う可能性もある。しかし、今後お金を利用する際における、ある程度の目安にはなるだろう。


 部屋の机の上に置いてあったホテルの説明を読むと、どうやらホテルの1階で朝食が出ているらしい。とりあえず、僕はそれを食べに行くことにした。

評価・ブックマークしてくださるとモチベーションが上がります。気楽にお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ