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3-4 目的の国へ


 早朝5時。2人は起きる。ホテルには朝食はないが、飛行機の中で朝食が出るようだ。僕たちはフロントで集合し、チェックアウトを済ませて空港のほうに向かって行った。


 朝一番と言えるくらいの速さで空港内に入る。僕は、近くにあった自動販売機でコーヒーを買った。伊藤さんはオレンジジュースを買っていた。


「加藤ってコーヒー好きなの?」


 彼は僕に尋ねた。僕は、昔から好きでよく飲んでいる、ということを伝えた。彼は苦くてブラックは飲めない(ミルクがあれば飲めるらしい)ようだった。


 僕たちは搭乗口前まで向かう。不気味なほど人がいなかった。70代くらいに見える老人の男女2人が談笑していたが、それ以外には人はいなかったと思う。


 6時になり、飛行機の中に入れるようになる。僕たちは飛行機の中に入っていった。僕たちは窓側の隣あっている2つの席が指定されている。僕はそこに座った。


 飛行機の中は異様なほどに空席であり、ほぼ貸し切り状態だ。伊藤さんは、誰もいないね、と言っていた。


「加藤ってさ、何か趣味ある?」


 伊藤さんは無言の間を縫うように話しかけてくれた。僕は、麻雀したりアイドルを見るのが好きだ。アニメや漫画はあまり読まない。


「アニメ見ないの珍しいね」

「1話か2話で完結するのならいいんだけど、長いと自分のキャパオーバーしちゃってわからなくなっちゃって」

「あー」


 彼もアニメはあまり見ないらしい。自分のペースで進められる漫画や小説の方が好きだと言っていた。


「アイドルって何見てる?」


 彼はアイドルの方からも話を広げてくれた。僕はヘリアンサスガールズというアイドルをなんとなく推しているが、特に詳しいわけではない。飛行機が動く轟音で声がはっきり聞こえなかったようで、彼は聞き返した。


「エリアサス?」

「ヘリアンサス」


 ヘリアンサスはラテン語で太陽(Heli)の花(anthus)、転じてひまわりという意味らしい。いつだったかあるYouTubeチャンネルで発掘されていた記憶がある。高身長の子が印象的な子だった。


「初めて聞いた……」


 自分もそのチャンネルで初めて聞いた名前だった。彼は韓国の男性アイドルである백미룡(ペンミリョン、別名ホワイトテイルドラゴン(화이트테일드래곤、ファイトテイルドゥレゴン))が好きらしい。KPOPアイドルは最近有名になっているもののあまり追えていない。백미룡も名前を聞いたことがあるくらいだ。


「推しのサミンがこないだ兵役に行くとのことで活動休止しちゃって……」


 確か韓国には徴兵制があり、男子は一生のどこかで兵隊として軍事活動をしなければいけないと聞いたことがある。その点に関しては自分は日本に生まれてよかったと思っている。


「韓国語もちょっと覚えたけど、まだ全然わからないや」


 韓国語は敬語が複雑なイメージがある。僕は全くわからない。彼はハングルを発音できる程度で、文法については日本語に似ているということくらいしか知らないらしい。僕も似ているという話は聞いたことがあるが、どの程度似ているのか、あるいはあまり似ていないのかについては詳しくない。


 アイドルについて彼は話す。


「実は私もアイドル目指してたんだけど、なかなか過酷だと聞いてなる気が薄れちゃったんだよね。特に何のアイドルとは考えてなかったけど」


 伊藤さんは話す。そう言われて見てみると、確かに外見は整っていると思う。ただ歌がうまいかとか、運動神経があるのかについてはわからない。


 話していると飛行機が上昇を始める。その瞬間、文字通り頭が割れそうな痛みが頭を襲った。比喩抜きで人生で感じた痛みの中で5本指に入る痛みだ。中学生の頃群発頭痛(頭の中で怪獣が暴れているほどの痛みらしい)の体験談をネットで読んで恐怖で夜も眠れなかった記憶がある。その話の記憶を呼び起こすほどの痛みだった。


「大丈夫?」

「大丈夫じゃ無いかも、結構痛い、なんか頭の中の血管が破裂したような痛み」

「スタッフ呼ぶ?」

「上昇中に呼べるの?」

「あー」


 痛みは悪化こそしないもののずっと続いていく。耳の奥から頭の中に至るまでかなりの痛みだ。自分は呼吸を整えた。頭の中が金槌で叩かれるような痛みだった。


 もしあの痛みが毎日特定の時間に続くことを考えると恐ろしくなる。眠れなくなってしまうかもしれないし、生活に必ず支障が出るだろう。あの瞬間は神様に祈った。普段は神を信じていないが、かなり辛い状態にいるとすがれるものには何にでもすがりたくなるものだ。


 ゆーまはこちらを心配そうな表情で見ていた。数分後、飛行機は高度10000m程の高さに到着したようだ。飛行機が上昇を止めると驚くほどすぐに頭痛が治まった。


「治ったぽい」

「よかった」

「なんだったんだろ」


 結局謎の痛みは直ぐに引いた。ただ再発すると怖い。一応をキャビンアテンダントさんを呼んで頭痛のことについて聞いてみることにした。僕は経緯を伝えた。


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