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3-3 出航に備えて

 電車が来る。僕たちはそれ乗り込んだ。特段混んでいるわけではなく、次に降りるのはアンダアン(Andaan)駅である。そこから4駅でムーサイェ空港に移動できるようだ。


 電車の中は空いている。僕たちは席に腰かけた。

 

「加藤くんさ、肉体ごと来てると思う?」


 彼は聞いてくる。僕は適当に考えて答えた。


「んー、わかんないけど、それだったら元いた世界だと行方不明になってるのかもね」


 僕は一人暮らししているので連絡できなくても特段不思議とは思われないだろうが、伊藤さんは実家暮らしとのことでもし肉体ごと来ていたら大変なことになるだろう。


「この世界に来る直前の記憶ないって言ってたよね?」


 彼は、うん、と答える。僕はこの世界に来る直前の記憶を持っているというのが謎だ。ただ、このことについてはいくら考えても答えは出ないだろう。僕はそう思っていた。


 元の世界に戻れるかもわからないのにそんなことを考えていてもしょうがない。この世界に来てまだ5日くらいなのに、もうものすごく濃い印象だ。お互いともここが「異世界」だという認識を持っていたと思う。そうとでも考えなければ意味が分からないからだ。


 僕たちは乗り換えをすませ、ムーサイェ空港で降りた。


「広いね」


 空港の中はかなり広いが、人はそこまで多くないのが少し不気味だ。様々なレストランがある。どこに行こうとか考えていると、彼はホテルの位置を尋ねた。

 

「キャリーケースが重くて疲れたんだけど、ホテルってどこ?」


 彼は聞く。ホテルはここから400mほど離れた場所に存在しているようだ。僕は103号室で伊藤さんは301号室だ。僕は自分の部屋に行き、キャリーケースとカバンをおいた。ベッドが1つだけあるシンプルな部屋だったが、歯磨き粉やタオル・備え付けのシャワーといった必要最低限のものはあるようだ。


 時間は18時だ。僕たちはキャリーケースを置いた後、夕食を食べることにした。


「何食べたい?」


 僕は彼に聞いてみる。彼はカレーが好きなようだ。この世界にもカレーのような食べ物があるらしい。僕たちは、じゃあそこにしよう、と決めて、空港ないにあるカレーライスのチェーン店まで向かって行った。

 

 僕たちは店に入り、2人でカウンター席に腰かけた。机の上には福神漬けと紅生姜、千切りにされた野菜、そしてスパイスのようなものが置いてある。僕は立てかけられているメニューを2人の目の前におき、何にするか考えた。


 カツカレーやビーフカレー、カレーうどんがある。他にも納豆やオクラ、とろろなど様々なトッピングがあるようだ。僕はカレーうどんと納豆にすると決めた。彼は辛さレベル5段階中3(普通辛)のカツカレー大+納豆トッピングにするらしい。


 僕たちはそれで注文した。


「伊藤さんって辛いの好きなの?」


 自分は聞いてみる。伊藤さん曰く、昔から辛いものが好きらしい。僕も辛いものは嫌いというわけではないのだが、辛すぎると食べられないので程よい辛さだといいなと思う。


「私昔から激辛が好きでよくチャレンジしてるんだけど、ペヤングの激辛Max Endとそれから先はダメだった。一応新しいのが出るたびに毎回食べてはいるんだけど、食べるたびにすごいなこれって思うんだよね。一応残さないようにはしてるんだけど、リピートはしないかな。普通の激辛が限界のちょい下ライン辺りにあるイメージ」


 確か高校生の頃自分もペヤングの無印激辛を食べた記憶があるが、辛すぎて涙が止まらなかった記憶がある。


「確か高3の頃何かの罰ゲームで獄激辛を5人くらいで食べたんだけど、あれは人生で食べた何よりも辛かったなあ」


 僕たちは初めて出会ったとは思えないほど話で盛り上がっていた。約10分後、それぞれが注文したものがほぼ同時に運ばれてくる。僕たちは同タイミングで食べ始めた。


 僕は納豆をかき混ぜてうどんに入れる。彼も同じようにカレーにかけていた。


「納豆好きなんだ」

「ずっと食べてるくらい好き」


 雑談をしながら僕たちはゆっくりと食べていく。


「それ、辛い?」


 僕は味が気になったので聞いてみた。彼曰く、そこまで辛くはない、とのことだ。

 

「いる?」


 彼は少しくれるとのことだった。僕はスプーンを持ってきてもらい、一口食べてみた。


「んー」


 辛いか辛くないかでいえば辛いが、自分でも食べられる程度の辛さだ。


「4の激辛にすればよかったな」


 彼的にはそう思ってるようだ。ネーミング的に中辛と激辛では結構差がある印象だ。激辛だったら多分自分は食べられなかっただろう。


 僕と彼は同じくらいのタイミングで食べ終わった。僕たちはお金を払い、ごちそうさまでした、と言って店を出て行った。日本のカレーと同じで美味しかった。


「美味しかった!」


 彼もそう言っていた。笑っている彼を見ると自分も幸せになってきた。僕たちはホテルに戻り、部屋にあるシャワーを浴び、それぞれの寝室で朝を迎えた。僕は眠くなっていたので、直ぐに眠りに落ちてしまった。

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