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3-2 次の国を目指す

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「自分も昔慶應だったけど、仮面して今は東京工業大学ですね」


 彼は、東工大は無理だと思った記憶があると言っていた。自分も現役のときは無残に落ちたが、1年間仮面浪人してなんとか合格した。今もう1回受けて合格できるかと言われたらまず無理だろう。


「慶應って理科1科目でいけるんですか? 確か2科目ですよね?」


 僕は気になったことを聞いてみる。彼は、英語・数学・物理で8割近く取れたことが大きかったと思うと言っていた。彼が理科2科目必要なところを諦めた理由は化学が苦手だからだと言っていた。


「確かに早慶理工は理科1科目で特攻できなくもないのかとか考えたことはありますが……。理科1科目の特攻受験は慶應の方が難しそうと考えてたんですけど、早稲田じゃない理由ってあったりします?」


 彼は、単に家から近いという理由だけで記念受験したとのことだ。実際に合格できる可能性などないと思っていたようで、彼は、今でも奇跡だったと思います、と付け加えた。


 早慶や上位の国公立大は受験のために理科が2科目必要になるが、私立大学の中には理科が1科目だけのところも多い。彼はそんな中から理科2科目が必要なところを特攻して合格したことになる。


「話してると驚かれますね、結構話のネタとしては話題性あるみたいです」


 僕は、ですよね、と相槌をうった。周りが驚くのも無理のない話だろう。


「でもそれだったら、化学ちゃんとやってれば国立行けたんじゃないですか?」


 彼女は、昔から化学があまり得意ではなかったといっていた。理科1科目でいけるところという点で探していたが、せっかくだったら慶應も記念受験しようという流れになったらしい。

 

 雑談していると、気がつけば乗り換え駅の前まで来ていた。僕たちはこの駅で降りて、次の路線まで向かって行った。そこまで遠くはなく、割と近い位置に次の電車が来るようだ。彼は話す。


「同い年ですし、タメ語でもいいですか?」


 僕は、おーけー、と伝えた。もしかしたら同級生になっていた可能性もある。


「で、次は何駅で降りるんだっけ」


 僕は彼に確認する。彼は、12駅先のコンジョーバ駅で降りると教えてくれた。コンジョーバという発音だが、平仮名に相当するWanda文字で書くと「コンジャオバ(konjaoba)」に近いスペルになるとのことだ。そこまでは約40分かかるらしい。僕は、クマティティ空港についてからの移動方法について調べながら、電車の中にある広告を読んでみた。コンサルティング企業やジム、雑誌の新刊や塾、ロースクールなど様々な広告が掲載されていた。


「加藤さんってどこ出身?」


 何も話せずにいると、伊藤さんが話題を振ってくれた。僕は出身は横浜だが、親の転勤の都合で中高時代は山梨にある、とある男子校の中高一貫校に通っていた。最初は大学も実家から通っていたが、頑張れば通えなくはないものの通学に片道2時間ほどかかることや、その間の通学費用がかかりすぎてしまったため夏休みから大学の徒歩圏内で一人暮らししているのが現状だということを付け加えた。


「そっちは?」


 僕は逆に出身を聞いてみる。彼も生まれは横浜のようだが、僕と違う点は生まれて20年間ずっと横浜に住んでいることのようだ。大学も市営地下鉄で一本のところに住んでいるらしい。


「なるほど……」


 僕は相槌を打つ。意外と近いところが出身で驚いた。


「次の駅は、デケギ、降り口は左側にございます。デケギの次はコンジョーバ駅にとまります。中間のフブロにはとまりません」


 デケギのアクセントは「卵」や「外科医」に似ていた。異世界の言葉だが、油断していると日本語のように聞こえてくる。眠い時に聞く日本語といった印象だ。電車内のアナウンスが目的の駅に着実に近づいていることを伝える。今は17時すぎだ。あと2回の乗り換えと1時間20分ほどでほどでムーサイェ空港駅に着くらしい。


「明日の早朝6時過ぎの飛行機に乗るから、今日は21〜22時には寝ときたいね」


 僕は話す。どうやら、彼は結構睡眠時間が短いらしく、5〜6時間睡眠でなんとかなっているようだ。僕は7時間寝ないと疲れてしまう。


「睡眠時間はどうしようもないからね」


 ロングスリーパー・ショートスリーパーは遺伝子で決まっているらしい。1日だけなら短時間睡眠でもなんとかなるかもしれないが、長い期間ともなるとそうもいかないだろう。


「でも睡眠時間が短いと体には良くないだろうから、寝れる時間は長めに取っておきたい感はあるよね」


 彼は、それもそうか、と言ってくれた。しばらくするとコンジョーバ駅にたどり着く。僕たちはそこで違う路線に乗り換えた。そこまで複雑なホームではないので、難なく乗り換えることができた。


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