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3-1 次に向かうのは

「伊藤さんと加藤さんですよね?」


 僕たちは、そうですと答える。彼はポケットの中から1枚の紙切れを取り出した。


「次はこの場所に向かってください」


 彼はそう言って1枚の紙を僕たちに渡した。そこには、「サジの国・ハングラン市・4A通り・ヨシコビル」とカタカナで書いてあった。この世界で初めて見るカタカナだ。その下にはバンダ文字でも同じことが書いてあった。


 伊藤さんは、どこだ、と調べているようだ。僕は作業服の男性に、あなたは何者なのですか、と聞いてみた。


「あなた方が理解できる範囲では、私は何者でもありません。私が説明しても、あなた方には理解できないでしょうし、説明しようとしても中途半端な説明になると思います。これはあなた方の頭脳や知識の問題ではありません。仮に著名な物理学者といった存在であっても、あなたの時代の人には理解できないと思います。この世界の人にも理解できないと思います。一言で言えることを言うならば、私はあなた方の味方です。頑張ってください」


 この台詞はうろ覚えだが確かこんなことを言っていたように思う。明瞭に覚えていることが多い中、この作業服の男性に関しては顔も覚えていない。彼は、それでは別に用があるので失礼します的なことを言ってそのままどこかに去ってしまった。少し見下したような言い方にも感じたが、そこまで苛立ちはしなかった。僕は不気味に思いながらも、この街に向かう方法を調べることにした。


「ハングラン市、ここらしい」


 彼はそう言って画面を見せてくれた。ここからさらにはるか東にある大陸の北の方にあるようだ。かなり移動が厳しそうな位置にある。


「飛行機あるの?」


 僕はそう言って調べてみたが、バキ空港からはサジの国までの飛行機は出ていないようだ。3つ隣の県のムーサイェ空港から移動することになるらしい。それも、サジの国で最もハングラン市に近い最寄りの「ハヴュクァヅァ(Hav'uqaadza)空港」になるようだが、それでも早くても明日の朝出発になりそうだ。


 所持金も不安である。2回の飛行機と列車および食事含めてで20万円近く溶かしたので、日本円に換算して80万円程度となっている。50万円で余裕だとは言われているが、油断は禁物かもしれない。


 移動しながら考えるしかないだろう。僕たちは立ち上がり、ムーサイェ空港まで向かっていくことに決めた。


「どうやって行きます?」


 彼は問う。僕は電車で行くしかないのではないか、と答えた。僕たちは先ほど降りたサイェバン駅から再び電車に乗り、2回の乗り継ぎを経てムーサイェ空港まで向かうことにした。


 電車は6両編成だ。僕たちは駅のプラットフォームで、向かって左側から来る電車に乗り込み、ムーサイェまで向かうことにした。空港には夜に着くが、そこで一晩を過ごさなければならない。空港の近くに小さめのホテルがあるようだ。


「ここ2室とっておきますね」


 僕はそう言って2部屋を予約した。その間に、彼は質問する。


「加藤さんって大学生ですか?」


 僕は、そうです、と答える。彼は僕と同年度生まれ(2003年度生まれ)だが、高校で1年留学したため卒業が1年遅れた影響で大学1年生のようだ。僕は1浪しているので学年は同じだ。


「何専攻しているんですか?」


 僕は、情報工学を専攻していますが、まだ1年なので教養科目が中心ですと答えた。彼は材料系のようだが、彼もまだ1年のうちとのことで自分と同じように教養科目メインのようだった。


 彼は慶應大学の理工学部に通っているようだ。本当は私立理系で理科が1科目である東京理科大を第1志望にしていたが、記念受験で受けた慶應大に物の弾みで合格してしまったためそっちに通うことになったようだ。

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