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2-4 ついに出会う

 旅の途中で服を買っていなければ僕と同じような服装をしているだろう。スーツケースを持っている可能性も高い。そう思いながら赤青緑どれか1色の服を着ている人を探すことにした。


 ショッピングモールには様々な店があるようだ。この国では男性がスカートを履くことが割と一般的なようで、メンズファッションのアンドビレという店で男性向けのスカートやワンピースと呼ばれる形状の服が置いてあった。


 いまの目的は相手を探すことだ。このショッピングモールが指定されている以上そのうち見つかるだろう。よく考えると変に動いて入れ違うよりここで待っていた方がいい気もしてくる。ただ相手が同じことを考えているとずっと見つからない。


 僕は再び歩いて探し出すことにした。人はそれなりにいるがそれらしき人は見つからない。もし既に見つけていたとしても、違う服を着ていて気付いていないだけなのかもしれないが……。バンダ人の外見が日本人と同じことも相まって、探すのには相当苦労する。そもそも単色の服を着ている人がいない中、僕は探し続けて行った。


 諦めるのはまだ早いと思っていたその頃、青単色の服を着てキャリーケースを持ち歩いている男性がショッピングモール内に入ってきた。クール系の外見をした大学生くらいの男子だった。彼はすぐ僕に気がついたようだ。彼は僕を見て、すみません、と声をかけてくれた。この世界で初めて聞く日本語だった。

 目の前に現れた男性は僕を見て声をかけてくれた。優しそうで整った顔立ちをした同い年くらいの男性だった。彼は僕を見て話しかけてくれた。


「あの、あなたが加藤友樹さんですか?」


 流暢な日本語だった。僕は、そうですけどなぜ知ってるんですか、と答える。彼は、逆になぜ知らないんですか、と不思議がっていた。確認してみると、どうやら、彼は僕のフルネームと行き先のショッピングモールだけを伝えられていたようだ。


「僕には行き先と、この場所で新しい指示が出されることしか伝えられていなかったんです」


 彼は、なるほど、と言ってくれた。改めて本名の加藤友樹を告げる。


「私はいとうゆうまと言います。伊藤に悠久の悠に、草冠にすえの茉です。よろしくお願いします」


 彼女はそういって紙に名前を書いた。書道部の女子が書くような綺麗な文字で「伊藤悠茉」と書いてあった。僕も、よろしくお願いします、と挨拶した。名前を音で聞いた第1印象は男性っぽい名前だなと思ったが、悠茉という文字列を見ると女子っぽいと感じてしまう。


「綺麗な文字ですね」

「ありがとうございます」


 これからの旅は2人で行うことになる。身長は僕と同じくらいだった。僕は交通事故で目を覚ますとこの世界にいたことを伝えた。彼はこの世界に来た前に何があったか覚えていないようで、気付いたらこの世界にいろいろな荷物を持って眠っていたと言っていた。そんな彼は僕の顔を見て思うことがあるようで、目を見つめて聞いてきた。


「最初に聞くことではないかもしれませんが、どこかで会ったことないですか? 気のせいだったらすみません」


 僕は、申し訳ありませんが記憶にないです、と答えた。どこでですか、と聞き返してみる。


「それは私もわからないですけど、どこかで会ったような気がしたんですよね」


 僕としては全くわからなかった。いわゆるデジャヴュか、あるいは単に人違いだろう。少なくとも、僕としては全く覚えがなかった。少なくとも小学校・中学校・高校・大学では出会っていないと思う。中学受験の塾までは覚えていないが、たぶんいなかったように思う。


 詳しく聞いてみたが、彼女は、わかりません、と伝えた。いずれにせよ僕が理解している範囲ではいないのは間違いない。


「変なこと聞いてすみません」


 自分は、大丈夫です、と話した。僕からも話す。

 

「自分はここで次の指示が出されると聞いているんですけど、待ってればいいんですかね?」


 彼はそのことが伝えられていなかったようだ。僕はそのことが書いてある紙を見せた。


「謎ですね」


 2人でベンチに座りながら次の指示が出されるのを待つ。どういった形態で出るかは分からないが、僕たちはベンチに座っていた。数分後、青色の作業服を着た男性が目の前にやってきた。彼は、日本語で何か話してくれた。かなり自然で綺麗な日本語だった。

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