2話
「お婆さんもいじめられてたの?」
「そうじゃよ。 お前さんの婆さんもお前さんと同じ守り人じゃ。守り人は生まれながらにして変わり者じゃ。下界の奴らは変わり者を排除する。だからワシが婆さんが9つの時に守り人にしたんじゃ。」
「ありがとう。 でも… 1人だけ 生かして欲しい人がいるの。 近所に住むお兄さん。 昔ね、お母さんと喧嘩して家出したんだけど泣きながら家を出たから心配して私の事を家に入れてくれて暖かいシチューを作ってくれたの。どこだったか忘れたけどどこかの山の…」
「そいつとは会うな。」 人狼は低い声で言った。
「え?」梓は困惑した。
だが人狼はそれ以上何も言わなかった。
その日の夜
「笠霧日向君ですね?」
「誰だ!? …て、狼!貴様… もしかして人狼か!」
「ご名答!流石ですね。 」
「何が望みだ!命か?」
「いいや。 僕は君みたいに外道ではないのでね。君みたいにね…」
「なんのことだ?」
「狙ってるんだろう。 人狼の血が僅かに流れる彼女のことを。殺すより残酷な事をしようと考えているんだろう。 そこのノートに書いてあるぞ。」人狼は1冊のノートを指さした。
「貴様!なぜそれを!?」
「見えてるからさ。 あの日、あの子は母親と喧嘩したと言ってたがその原因は妹が帰ってこないことを責められたもの。あの子は妹の存在を忘れていたみたいだがそれもそのはずだ。 貴様はあの子の目の前で妹を殺して精神的ショックを与えた。そう、貴様は優しいフリをした化け物だ。地獄を味わえ!」
「お兄さん、騙してたんだね?私思い出したよ。お兄さんは私の妹を殺したの。 お兄さんって狩人さんでしょ?狩人さんは下界では優しいって言われてるけど本当はとんでもない人なんだね。さよなら…」
いつから居てどこに隠れていたのか分からないが梓が現れて指を鳴らす。
断末魔と共に日向は奈落の底へと落ちていった。
それから梓は家族に別れを告げ長い長い間ジンロウの守り人として 否、ジンロウに守られながら山の上で暮らしましたとさ。
おわり