表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/49

食堂にて②

「アリス様、ちょっとよろしいかしら?」

 学園の食堂で食事をしていたアリスとハースの前にやって来たのは、メルルだった。

 取り巻きはいなかったが、アリスはデジャヴを感じる。

 だが、メルルの悪評は最近聞かなくなってきている。まだ多少何かと衝突してはいるようだが、概ね学園生活は平和だった。

 

「何だ?」

 返事をしたのは、当然のようにハースだった。

 テーブルの下で、ハースがアリスを励ますようにきゅっと手を握った。

 アリスは気をはる必要を感じずに首を傾げた。


「ええ、ハース様でもいいですわ! 私、お二人の純愛を認めようと思いますの!」

 アリスは耳を赤らめて首を傾げ、ハースは訝しそうにメルルを見た。

「なぜ?」

 ハースの言葉に、メルルが拳を握る。


「私が見る限り、お二人は純愛だからですわ!」

 力強く言い切ったメルルは、本気のようだ。

 アリスはぽかん、と口を開ける。

 ハースはメルルを見る目を細めた。

 なぜか不穏な空気が漂い始める。


「なぜ、メルル嬢に認められる必要がある?」

 その声は、絶対零度だ。

 耳をそばだてていた学院生たちは、ぶるりと体を震わせた。

 どうか平和に戻りますように、と心から念じ始めた。そして、我関せずの態度を続行した。


「アリス様! 本当にお二人は素晴らしいわ! 私、これが純愛と言うのだと、ようやく理解したんですの!」

 メルルは続ける。どうやらハースの様子など目に入っていないようだった。

 ハースたちの周辺の温度が下がる。

 アリスは困った顔でハースを見ている。


「メルル嬢、アーディン侯爵に手紙を書こう」

 ハースが冷たく言い放つ。

 メルルも流石に父親の名前を出されて、おののく。

「一体何を書くつもりなの?!」

「頭がイカレテいるようだから、幽閉するのをお勧めすると」

 淡々とハースは告げた。


「やめて! やめてよ! またそんな手紙が来たら、ほんとうに幽閉されちゃう!」

 メルルが焦る。

「では、我々の関係に口を出すのは辞めてもらえるかな? 前にも言ったと思うんだが」

「わ、わかったわ。……でも、本当のことなのに!」

 悔しそうにメルルが去って行く。


 困った表情のアリスが、ハースの服をつつく。

「どうして怒ったの?」

 ハースがムッとした顔でアリスを見る。

「どうして、メルル嬢に俺たちの関係を認められる必要があるんだ?」

「……そうね」

 アリスが困ったように微笑む。


「それに、俺たちが純愛なのは、いちいち言わなくても分かり切った事だ」

「……そうかしら」 

 アリスが顔を赤らめて首を傾げる。

「それに、だ!」

 ハースの語気が強まる。


「せっかくのアリスとの時間を3回も邪魔されたんだ! 3回目だ! 許せるわけがない!」

 なるほど、と周りの学園生たちは心の中で頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ