その後の話
「メルルは家を継がないことになったそうだよ」
ハースの声に、アリスは曖昧に頷いた。
「もう、興味はない?」
「……そういうわけじゃないんだけど」
もぞもぞとアリスが落ち着かない様子で動く。
「どうやらもう一人血を継いだ子供が市井に居たらしい。……考えれば考えるほど悪趣味だけど。私はアリス以外を愛することはないよ?」
「そ、そう……」
アリスは気もそぞろだ。
「アリス? 話を聞いている?」
「ねえ、ハース。やっぱりこれはないと思うんだけど?」
「何が?」
ハースは、真顔だ。
それに対して、アリスの顔は赤らんでいる。
なぜなら、アリスはハースに横抱きにされて移動している最中だからだ。
「ねえ、降ろして」
アリスの訴えに、ハースが首を横にふった。
「アリスがまた転んだら困るからね」
たしかに先ほどアリスは転んだ。だが、立ち上がるのを助けてくれるだけでいいはずだったのだ。
だが、ハースはそっとアリスを抱きかかえたのだ。
「もう転ばないわ!」
「いや、さっき転んだので足を痛めているはずだから、また転んでしまうよ」
「転ばないって言ってるじゃないの!」
「アリス、あまり騒がれると、落としてしまいそうだから、静かにしてくれないかな?」
「だって!」
「え? 唇を塞いでほしいって?」
「ちがうわ!」
顔を赤らめるアリスを見て、満足そうにハースが笑う。
周りの学園生たちは、いつもの二人を呆れた様子で見ている。
アリスはいつもハースとイチャイチャしていないと言い張っているが、どう見ても二人はイチャイチャしているようにしか見えなかった。