31/49
雪
「あ、雪」
アリスが窓の外を覗き込む。
「ホントだね」
ハースも窓の外を見つめる。
フワフワと雪が空から舞い降りて来ている。
ハースがそっとアリスの手を握った。
「どうかした?」
アリスがハースを見る。
「アリスが寒いかな、と思って」
ハースの言葉に、アリスがふふっと笑う。
「室内だし大丈夫よ。でも、ちょっと暖かくなったかも」
「そっか。僕はいつでもアリスが隣にいてくれれば、心はポカポカだよ」
アリスが耳を赤くした。
とても、穏やかな空気が流れている。
──二人の間だけ。
この教室には鬼気迫る雰囲気が漂っていた。
今日は一番厳しい先生の試験の日だ。これを落とすと落第間違いなしで、卒業が危ぶまれる試験だ。しかも、例年平均点が落第点ギリギリという難しい試験なのだ。
二人のほのぼのとした空気を楽しめるクラスメイトは、今他にいなかった。
学年1位の天才ハースはともかく、今ほのぼのできるアリスの精神構造はやはり尊敬すべきレベルだと、クラスメイトたちは皆思っていた。