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アリスの誕生日の深夜
トントン。
アリスがもう眠りに入ろうとしていた時だった。
窓から、音がした。
シンと静まり返っているんだから、空耳ではないだろう。
トントン。
誰が窓を叩いているのか。
アリスには一人しか思いつかなかったが、念のため、電気をつけて、鍵を掛けたまま窓の外を見た。
やっぱり、ハースがいた。
アリスはため息をつきながら、窓を開ける。
「どうしたの? こんな夜遅くに。明日じゃダメなの?」
「明日じゃ、駄目なんだ」
そう言うなり、ハースは窓から部屋の中に乗り込んできた。あまりに軽い身のこなしで、何だかアリスは呆れてしまった。
「明日じゃダメって、何?」
ハースはぎゅっとアリスを抱きしめた。
「やっぱり、アリスは直接抱きしめなきゃ駄目だね」
アリスが真っ赤な顔になる。
「アリス、誕生日おめでとう! 誕生日の一番最初と最後の時間に言いたかったんだ!」
ハースの言葉に、アリスは文句が言えなかった。




