アリスの誕生日の前々日
できた!
ハースは、完成したものに、感動すら覚えた。
完璧だ!
ここはハースの寮の部屋。いつもなら整然としているこの部屋は、今は雑然としていた。
ハースが作っていたもののためだ。
ハースの目の前には、箱のようなものがあった。
高さはハースの身長を越え180センチはあるだろうか。
箱の大きさは、ちょうど人一人入れるくらいの、そう、ハースがぴったり一人、立って入れるくらいの箱のようなものだった。
箱のようなもの、と説明するしかないのは、その素材のせいだった。
箱のようなものの本体は、木枠。その平面は、透ける素材の布で覆われていた。
本当はガラスのように透明のもので覆いたかったのだが、生憎ガラスは扱いにくくて断念した。
手持ちのノリでもネジでもくっつけることができなかったからだ。
透ける素材の布を見たとき、天啓を受けたような気持ちになった。
これだ! とハースは確信した。
その布は、ピシッとひとつのよれもなくきっちりと張られている。
それぞれの木枠に、のりでピッチリとくっつけた。
これぞ、アリスにあげるのにふさわしい入れ物だ!
と、ハースは自画自賛した。
この中に入ったハースをうっすらとした布の向こう側から気づいたアリスは、きっと感激するだろう。と、ハースはその成功の図を思い描いて、微笑んだ。
ただ、問題が4つ。
ドアからも窓からも出せそうにないこの木枠を、どうやって学院に持っていくかが一つ。
ピッチリと四方と底には布を張り付けたため、ハースがこの箱のようなものに入るためには上から入るしか無さそうだが、どうやって180センチ上から入るのかが一つ。
もし学院に持っていけて、ハースが中に入れたとして、一番てっぺんの布を誰がピッチリときれいに張ってくれるのかが一つ。
そして最後の最大の問題は、プレゼントをプレゼントに飾り立てるリボンを、きっちりと美しく誰が結んでくれるのかが一つ。
ハースであれば、布の問題もリボンの問題も解決するのだが、生憎箱のなかではなにも出来ない。
ハースは出来上がった箱もどきを見ながら、どうしようかと悩み始めた。




