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誕生日プレゼントの話直後

「このアリスがずっとここに置いておけたらいいのに」

 うっとりと告げるハースに、アリスは首を横にふった。

「無理よ」

「どうして?」

 ハースの目は本気でそう告げている。


 アリスは頭がいたくなったが、あいにく腕はリボンの下に押さえ込まれていて頭を押さえることができなかった。

「ねえ、ハース。そもそもここは男子寮だわ。いつまでも私がいるわけにはいかないでしょう?」

「大丈夫だよ。俺がいるから」


 答えになっていないハースの答えに、アリスは首をふった。

「ここは男子寮よ! 私がいていい場所じゃないわ!」

「だから、俺がいるんだから、アリスがいつまでもいてもいいんだよ?」

 ハースはアリスに言い含めるようにゆっくりと告げた。

 アリスはため息をついた。どうやら違うアプローチが必要なようだ。


「だって、あと4ヶ月で卒業するのよ? いつまでも男子寮にいるわけにはいかないでしょう?」

 アリスが咄嗟に思い付いたのは、そんなことだった。

 フフ、とハースが微笑む。

「卒業するときには、一緒に連れていくに決まっているだろう? 心配しなくても、俺がアリスを置いていくことなんてないよ」


 アリスは、違う! と首を激しくふった。

「心配してるんじゃなくて、物理的な問題よ!」

 ああ、とハースが声を漏らす。

「リボンが解けちゃうんじゃないかって? 大丈夫。解ければすぐ結び直せばいいだけだし、1日に1回は結び直してあげるから」


 ニッコリと笑うハースに、アリスはガックリと肩を落とす。

「リボンが解けるとかじゃなくて……そもそもリボンは必要ないでしょう?」

 ハースが目を見開く。

「だってアリスはプレゼントなんだよ!」 

 力強く告げたハースに、アリスはため息をついた。


「誕生日は今日だけよ」

 ハースがまた目を見開く。

「アリスはいつでも俺のアリスだよ?!」

 すがりつくハースに、アリスは心を決める。このままじゃ、らちが明かない。


「帰してくれないと、キライになるわ」

 アリスが伝家の宝刀を抜いた。

 ハースが目を見開いたまま、青ざめた。

 力なくハースがアリスのリボンを解き始める。 

 アリスはホッとしつつも、悪いことをしたような気持ちになる。

 急に静かになった部屋に、ハースがスンスンと鼻をすする音がする。


 結局、10年以上経っても、ハースはアリスの「キライ」が、一番堪えるのだ。

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