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グリーン先生3回目の授業

 グリーンは、ハースのいるクラスで3回目の授業だ。

 もうハースのことは気にしない。そう心に誓っていた。


 気にしない、とは思っていても、ハースに目は行ってしまう。

 ただ、今日のハースは、概ね前を向いていた。時折アリスをチラチラと見てはいたし、常識的に考えるよりも多過ぎる回数だったが、それでも、初日からすれば、不快には感じなかった。

 

 それに、グリーンをねっとりと見るようなこともなかった。

 グリーンも、これならば授業をまともにやれる気がした。


 授業が終わり、グリーンが片付けていると、なぜかハースがやって来た。気まずそうな表情をしている。

 グリーンは首を傾げた。

「どうかしたかい? ハース君」

 意を決したように、ハースが口を開いた。


「大変申し訳ありませんが、先生の気持ちは受け取れません」

 ハースの声は小さな声だったが、しっかりとグリーンには聞こえた。

 は?

 グリーンが声を漏らした。

「申し訳ない、ハース君。何のことだかさっぱり分からないんだが」

 やっぱり天才は思考回路が違うのか、とグリーンは思った。

 

 ハースが首を振った。

「先生の熱い視線を授業中感じました。でも、その気持ちには応えることはできません。私はそもそもノーマルですし、何よりも愛するアリスがいます」

 小さな声で、でもきっぱりと告げたハースに、動揺したグリーンは手に持っていた教科書を落とした。


「先生。お気持ちは分からなくはないんですが、もう私をあんな視線で見るのは止めてください」

 そっと、ハースが告げる。その顔は、グリーンを困ったように見ていた。

「いや、それは違う」

 慌ててグリーンが言った。グリーンは間違いなくノーマルだった。


 だが、ハースは眉を下げて静かに首を振った。

「この事は、誰にも告げません。ですから、その気持ちは心の中にしまっておいてください」

「だから、違うと言っている」

 グリーンは焦る。勘違いされたくはなかった。


「……でも、頻繁に私のことを見ていましたよね? 私がアリスを見るように」

 グリーンは首を振った。

「それは、そう言う意図ではなかったんだ。……もう、ハース君を授業中にあんな風に見ることはないと約束しよう」

 ハースがホッと息をつく。

 理解してもらえたと、グリーンもホッと息をついた。


「この事は、私の胸にしまっておきますね」

 ハースがグリーンから離れていく。

 グリーンは、ハースを呆気にとられて見送る。

 ハッとグリーンが我に返る。


 もう絶対ハースを授業中に見るのは止めよう。

 グリーンは、そう誓った。


 でも、次の瞬間、いや、と首を振った。

 ハースには関わらないようにしよう、と、グリーンは拳を握りしめた。


 グリーンはふと、他の教師からの忠告を思い出した。

 ハースには口を出してはいけない、ではなくて、関わってはいけないの間違いだと、心の底から思った。

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