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大罪の神器  作者: Teko
王都編 双子の聖女
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33 聖女杯 事件解明編1

 

 決勝戦の熱気を遮るディアンの叫び声は、会場にいる全ての人達を困惑させた。

 それは観覧席の高台にいるオルディバル達も同様だった。


「ディアンではないか。どうしたのだ?」


 観覧席からディアンのいる観客席の出入り口までは遠いため、オルディバルは元々待たされている拡声魔法が付与されている魔石で尋ねる。


「申し訳ありません、陛下。しかし、止めねばならない理由があるのです」


 オルディバルは何のことなのかと思い当たる節を探す。


 記憶が正しければ、ディアン隊には人喰いの調査を進行させていた。


「もしや! 人喰い(例の件)で動きがあったのか!?」


 試合を止めるほどのことということもあり、オルディバルは少し危機迫る声色で尋ねるが、


「いえ。人喰い(例の件)ではありません」


「な、ならば何だというのだ。このような場に水を差すなど……」


 文句を言いながらも内心ホッとするオルディバル。

 人喰いに動きがあり、この会場を襲われるでは堪らない。

 それが無いことには安堵する。


「それなのですが……」


 ディアンはチラリとフェルトを見下ろすと、その視線を見ていたエメローラが通信用の魔石を使う。


『各王宮騎士達に告げます。先程、警備配置を変えたことにより、近くに聖堂騎士がいると思います。ライク、ゴルドを除く聖堂騎士を今すぐに取り押さえなさい』


 すると、


「なに!?」


 オルディバル達の後ろで控えていたダミエルとレックスがフェルマ達、王宮騎士に取り押さえられた。


「なっ!? 何ッスか!?」


「フェルマ殿……!? 一体何を……?」


 すると各観客席を警備していた聖堂騎士も取り押さえられ、会場は更にざわつく。


 その様子をフェルトは、ほーっと感心しながら眺めている。


「なるほど。さすがは姫殿下様だ」


 だが事態を理解できていないオルディバルは、何事かと尋ねる。


「フェルマ! どういうつもりだ!? 聖堂騎士を取り押さえてどうする?」


 尋ねられたフェルマだったが、その彼自身もわからない様子で、


「い、いえ。姫殿下の指示でやったので、わたくしは何とも……」


「なに!?」


 フェルマはエメローラの真剣味を帯びた命令に従っただけだと口にし、オルディバルはその命令の主であるエメローラに尋ねる。


「ど、どういうつもりだ、ローラ? 聖堂騎士に手を出すなど……」


 その聖堂騎士が取り押さえられ、状況がまったくわからないラフィは混乱してか、オロオロとする中、エメローラは逆に冷静に語る。


「……お父様。わたくしも全容を知っているわけではありませんが、少なくとも今来られた彼らの話を聞けば、わたくしの行動にも説明がつきます」


 するとエメローラは観覧席から見える場所に移動し、ディアンに尋ねる。


「ディアン、報告があるのではありませんか?」


「ハッ! 御座います、姫殿下」


 エメローラは辺りの観客達を見る。

 ここで公にするべきか、一瞬悩んだが、


「皆さま! 一度、落ち着いて下さいませんか? これよりとても重要なお話があります」


 何だとどよめく観客達だが、姫殿下の言うことならばと、シンと静まり返る。


「……ありがとうございます。それではディアン! 報告なさい!」


「ハッ! 先ずは陛下、お尋ねしたいことがあります」


「何だ?」


「陛下は以前、聖都オルガシオンに調査隊を派遣なされたかと思います」


「!」


 オルディバルはラフィを見て、都合が悪くないかと思うが、


「お父様、大丈夫です」


「……」


 とりあえず娘の言うことと、ディアンの緊急報告を信じ、極秘で送っていた調査隊の件を認める。


「う、うむ。聖都オルガシオンでは違法の奴隷商が出入りしているなどというウワサが立っていたでな。その調査をさせるために、行かせたことがある。それがどうした?」


「……陛下。それは当たりでした」


「なに?」


「今、聖都オルガシオンは魔窟となっております」


「は……?」


「違法で手に入れた奴隷達に労働をさせ、洗脳した住民達を武装させ、聖堂騎士達が道楽の限りを尽くすデストピアとなってございます」


「!?」


 その報告に会場も酷く響めき、


「と、とんでもない報告だぁ!! えっ? 聖都が聖堂騎士に支配されている!?」


 司会も思わず驚きのひとこと。

 そして、その当事者であるアスベルは、闘技場のど真ん中に差し出されている。


「フェ、フェルト・リーウェン……!!」


 そう睨むアスベルの視線の先のフェルトは、にやりとしたり顔の横顔が見えた。


 そしてオルディバルもその報告には勿論、驚く。


「そ、そんなはずはない! 私が出した調査隊の報告にはそんなことは……」


「はい。確かに陛下が派遣された調査隊の全ての報告は問題無しだと報告されていたと思われますが、それが聖堂騎士の陰謀による隠蔽だとすればどうでしょう?」


「な、何だと……?」


 するとさすがにこれ以上は聞いていられないと、闘技場のど真ん中にいるアスベルが叫ぶ。


「黙って聞いていればふざけたことを!! わたくし達、聖堂騎士を侮辱するおつもりか!?」


 するとノーウィンが鼻で笑う。


「侮辱? そうですね。犯罪者である貴方達を軽蔑するのは当然ではありませんか?」


「な、何だと!? 何を証拠に……」


「言われなくても報告しますよ」


 すると後ろにいるアーガスがひとりの男を突き出す。


「ア、アスベルさん……」


「あ、あいつは……!?」


 突き出されたのは、証拠の隠滅をするよう指示を出していたロマンドだった。


「コイツから全て聞きましたよ。貴方達が国取りを企てていたことをね」


「「「「「!?」」」」」


 事情を知るフェルト以外は全員驚き、そしてノーウィンは周りの動揺を置き去りにするように、次々と証拠になることを語り出す。


「違法の奴隷証文に……」


 その証文はユナが手に持っている。


「今現在の聖都の様子……」


 ディアンがひとつの水晶玉を取り出し、証拠の映像があるぞと突き出す。

 そこには虚な表情をし、どこか気の抜けた住民達の様子が映っていた。


「更にはその違法奴隷商達の身柄の確保も行い、今現在は王宮の尋問官に引き渡してきたところです」


「!?」


「今頃、証言してくれている頃合いではないでしょうか? 貴方の計画の全貌を知らずとも、ある程度の訳ありくらい話していたのでしょう?」


「……っ!!」


 アスベルは全てバレてしまっていると、動揺を隠せないでいる。

 その証拠に、戦ってもいないはずなのに、汗が止まらないでいた。


 それだけの証拠を突きつけられれば、さすがにオルディバルもアスベル自身に問わなければならない。


「どういうことだ!! アスベル・カルバドス!!」


「……くっ!」


 アスベルは正に壇上に突き出された犯罪者そのもの。

 会場の全ての視線がアスベルに集まる。


「どんな気持ちだ?」


「!」


 すると同じ場所にいるフェルトが今の心境を尋ねる。


「犯罪者として、公の場に無理やり突き出される気分はよぉ」


「まさか……! これが最初から狙いで……!」


「まさか! 俺はいつでも良かったんだが、たまたまディアンさん達のタイミングが今だったってだけだよ」


「!?」


「まったく……ディアンさんも粋なことをしてくれる。狙ってかそうでないかは知らねえが、ネフィと同じ状況を作ってくれてやがる」


 フェルトは聞いた話ではあったが、ネフィが裁判にかけられていた状況とデジャブすると思った。


「ま、あんたの場合はネフィと違い、本当に犯罪者だがな」


「くっ……」


「司会さん!」


 するとフェルトは司会者にこちらへ来るよう手招きする。


「は、はい」


「悪いんだけど、そのマイク……? みたいなの、貸してくれませんか?」


「え、えっとぉ……」


 司会が困惑していると、


「司会者さん」


「は、はい!」


「フェルトさんにその魔石をお渡し下さい」


「わ、わかりました……!」


 エメローラの呼びかけに応じ、フェルトに手渡す。


「それと司会者さん」


「はい」


「それの予備はいくつかありますか?」


「は、はい……」


 すると司会者は懐から数個の魔石を見せる。


「ではそのうちのひとつをディアン隊の元へ。叫ばせるのは酷ですから……」


「わ、わかりました」


 司会者は飛んでディアンの元へと向かい手渡すと、フェルトは早速話しかける。


「それにしてもディアンさん。こんな時に来なくても良かったんじゃないです? もっと穏便に済ます手段もあったでしょうに……」


「確かにそうだが、いかんせんこれほどの規模のものが放置されていたとなると、国民達への信頼問題になるからな」


「……だったら尚更悪手では?」


「そうかもしれないが、俺は手柄を横取りするような真似はしたくない」


 その言葉にオルディバルは疑問を投げかける。


「どういうことだ? ディアン」


 ディアン隊が証拠を持ってきた経緯を見たままで考えると、ディアンは命令無視はしたものの、アスベル達の思惑を読み解き、証拠を探す行動を取ったと捉えられる。


 誰しもが思ったことだ。


 だがディアンは首を横に振った後、オルディバルに一礼する。


「陛下。先ずはご相談も無く、独断で動いたことを謝罪致します。処罰等が御座いますなら、お受けする次第です。ですが、それらも必要だった処置だったとご理解下さると嬉しく思います」


「なに?」


「我々が連絡を受けた方法が普通ではなかったが故に、陛下へ連絡することができなかったのです」


「普通ではなかった?」


「はい」


 するとディアンはひとつのメモ用紙くらいの紙を取り出す。


「こちらのメモを貰い、その書かれている内容から、陛下へのご相談は控えた方が良いと判断し、現在に至ります」


 アスベルは、何だそのメモはと言いたげに驚いている。


「それは一体、誰からのモノだ?」


「……」


 それに答えるように、ディアンはわかりやすくそのメモをくれた張本人に視線を向ける。


 そして周りの人達もその視線の先を見る。


「フェ、フェルト・リーウェン!?」


「「「!?」」」


 フェルトはフッと不敵に笑い、そんな馬鹿なとアスベルと聖堂騎士達は驚く。


 フェルトはずっと監視下にいたため、そんなメモを渡すような余裕はなく、だから証拠を掴ませに向かっている人物がいるという情報はブラフだと思っていたわけで。


「どういうことだ? フェルト・リーウェン」


 オルディバルがそう尋ねると、その前にエメローラが割り込む。


「お父様。わたくしもディアン同様、途中からでありますが、おそらくはあのメモと同じ内容を知りました」


「なに!?」


「ディアン。そのメモには、聖堂騎士達の反旗について書かれているのではありませんか?」


「はい。正確にはかなり簡略的ではありますが……」


「それで十分です」


 自分と行動理由が一緒ならばよいと、まだ事態を飲み込めていない父オルディバルへと話を続ける。


「わたくしが聖堂騎士を捕らえよと命じたのは、その事実を知り、ディアン隊が証拠を掴むよう、行動していたことを知っていたから行なったこと。これで少しは事態の理解ができたでしょうか?」


「う、うむ」


 するとエメローラは観覧席のテラスに両手をつき、闘技場にいるフェルトを見下ろす。


「しかし、わたくしも全てを知るわけではありません。この全ての事を知っているのは、今、闘技場に居られるあのふたり……当事者達に事情を伺う方が早いでしょう。その主犯であるアスベル・カルバドスと、それを見破りディアン隊に証拠を見つかるよう促したフェルト・リーウェンに……」


 奇しくも狙い澄ましたかのように、役者が揃っているとエメローラが宣言すると、フェルトはやれやれと呆れた反応でディアンに語る。


「アンタも人が良いというかなんというか……手柄は俺のもんにして、アンタは勝手に行動したことを責任取るって、どんだけなんだよ」


「俺はあくまでこの国に仕える騎士であり、君は本来、一般学生だ。いくら俺と君が友人関係とはいえ、その立場は揺らがない。責任を取るのは大人の仕事だ」


「真面目なこった」


 友人関係と聞いたことにアスベルが、


「友人関係、だと……!?」


「何を驚いてる? アンタなら知ってるはずだろ? ディアン隊は俺達が人喰いに襲撃された際、助けてくれた関係がある。その後も何度か人喰いの調査の時に村には来てたんだ。その時に色々ね」


「もう三年も前になるか。ディーノ君と共に無断で魔物がいる森に特訓に行ったことをどれだけノーウィンさんと説教したことか……」


「い、いやぁ〜、そんなやんちゃだった時代もありましたねえ〜」


 フェルトは思わず苦笑いすると、ノーウィンが呆れたため息を吐く。


「私からすれば今もそう変わりがないように思えます。姫殿下の救出には感謝していますが、学生のグリフォンライダーを引き連れ、犯罪ギルドの中でも要危険指定されているブラックギルドの船に乗り込むなど……やんちゃじゃないと評価する方がどうかしてます」


「はは……」


「本当に懐かしいですよ〜。当時の人喰いの調査の際に村に来ては開口一番、村長さんから貴方達を連れ戻してほしいでしたから……」


「はは……」


 ノーウィンの嫌味に対し、もうフェルトは苦笑いでしか返せなかった。


 実際、連れ戻されてはディアンとノーウィンの前で、ディーノとふたりで正座させられ、説教を受けていた。


「も、もういいじゃないですか。こんな大衆の前でそんな……」


「……それもそうだな。実際、君のおかげでそこの男の悪行を我々は知ることになったのだからな」


「……っ」


「とはいえフェルト君。俺もこれを受け取った時は半信半疑だったぞ。俺と君との関係まで計算してこのメモを渡したのだろう? 大したもんだ」


「俺はディアンさんを信じただけですよ」


 やれやれと少し嬉しそうに鼻息を鳴らすディアンは、それでも全てを知っているわけでは無いと語る。


「だが俺は……いや、俺達はあくまでここに書いてあることを信じただけに過ぎず、結果としてアスベルが国取りを企てていたことを知った。しかし、全てを知っているわけではない。話してくれないか、フェルト君」


 ディアンは隣にいるアスベルを冷徹な眼差しで見る。


「どうせその男は真実を語らないだろうからな」


「……」


 フェルトもアスベルの様子を見るが、確かに真実を語る様子はない。


 するとフェルトは、オルディバルに向けて跪き、頭を下げた。


「陛下。よろしければ、この若輩が見破ったこのアスベル・カルバドスが起こそうとした事件の概要……そして起こした事件の真実を語る許可をいただきたい」


「起こした、事件だと?」


 あくまでオルディバル達に伝えられたのは、聖都オルガシオンが支配され、それが国取りの準備であったことだけ。

 起こした事件というのは何だと疑問が過る。


「聖都の住民を武装させた理由のことか?」


「それもありますが……もっと重要な事件の方です」


「なに?」


 するとフェルトはチラッと闘技場の入り口あたりから顔を出すネフィに視線を向けた。


 どうやら闘技場の様子が気掛かりになって見に来たようだ。

 その両隣にはライクとゴルドもいる。


「元聖女ネフィ……まさか!?」


「はい。陛下の察しの通りでございます。聖女ネフィは冤罪をかけられたのです。ここにいるアスベル・カルバドス……そして――」


 フェルトはオルディバルがいる観覧席を指差す。


「陛下の隣にいるそこの聖女――ラフィによってね!」


「「「「「!?」」」」」


 観覧席にいる聖堂騎士以外の者達は、一斉にラフィを見て、ラフィは「ひっ」と怯えた様子を見せた。


「フェルト・リーウェン! 君が何を言っているのか、わかっているのか!?」


「勿論です、陛下。そこにいる犯罪者を名指ししただけのことです」


 オルディバルはそういうことを言っているわけではないと驚愕すると、その理由を怯んでいたラフィが強がってフェルトに返す。


「あ、貴方! この私を犯罪者呼ばわりすることがどういうことかわかってるの!? 聖女である私を侮辱することは重罪なのよ! 不敬罪よ! 不敬罪!」


「アンタが本当の聖女であるなら、確かにそうなるな」


「なっ!?」


「だがアンタ達がして見せたんだぜ? 聖女であっても、聖女を傷付け、犯罪を犯させれば、死罪にまで追い詰められるってことをよぉ」


「……!」


 ラフィは心配そうに見つめるネフィを見た。


 確かにネフィはラフィを襲ったということで、死罪にした過去があり、現在奴隷となっているのは、ラフィ自身が死罪を取り下げた結果だった。


「つまり聖女ネフィの冤罪が証明されれば、逆にアンタが犯罪者だ、聖女ラフィ。その覚悟はできてんだろうな?」


「あ……ああっ!」


 ラフィはフェルトの凄みにまた怯む。


 すると、


「貴様ぁ! ラフィ様にそこまでの侮辱を――」


 アスベルが苦し紛れのフォローを入れるが、


「もう演技はよしませんか? アンタ達の仲がそんな畏まった関係じゃないことくらい知ってますよ? だって共犯者なんですからね」


 次々と出てくる真実に、もう周りは黙っているしかなかったが、


「フェルト・リーウェン……」


 シンと静まり返った闘技場にオルディバルの声が通る。


「全ての真実を、ここにいる国民達と共に私に語る許可を出す」


「は!」


「国民達よ、聞いてくれ」


 するとオルディバルは頭を下げ、会場が響めき、王宮騎士達もおやめ下さいと止める。

 だがオルディバルはどうしてもこうしたかったようで、


「私が不甲斐ないばかりに、このような事態になったことを謝罪する。しかし、今ばかりはそこの少年、フェルト・リーウェンの語る真実に耳を傾け、そして動揺せず、最後まで聞いてほしい。そして、このようなことが起こらぬよう、私は全力で王としての責務を真っ当しよう。どうか聞き入れてほしい」


 フェルトの話を聞いてほしいと語るオルディバルに、来た観客もとい国民達は喝采で答える。


「勿論です!」

「聖堂騎士の悪行を許すな!」

「本当は聖女ネフィが犯罪者ではなかった? 教えてくれ!」


 国民達の関心を掴むには十分であった。


 オルディバルは喝采を止めるよう、片手を上げて鎮める。


「ありがとう、民達。……フェルト・リーウェン」


「はい」


「では真実を語ってほしい」


「かしこまりましたが、その前にいくつかお願いがあります」


「ん? 何だ?」


「先ずはそこの聖女ラフィの監視を怠らぬよう、お願いしたい。ここからは聖女ラフィにひとことを喋らせぬよう、お願いできますか?」


「それは何故だ?」


 ほとんどの証拠をディアンが突き付けたため、逃れようがないと思うオルディバル達だが、


「今回の一連の事件は聖女ラフィが得た力の影響が大きい。それを発動する条件が言葉を発することにあります。どうかここは俺を信じていただけませんか?」


 このフェルトの意見には勿論、アスベルは反対する。


「ふざけるなよ、フェルト・リーウェン! ラフィ様に発言する権利を奪うというのか!」


「発言する権利? ハッ! これはアンタ達のためでもあるんだぜ?」


「なに?」


「アンタ達も予期しない命令をあの女が出されちゃあ困るだろ? アンタなら知ってるだろ? あの聖女様の無能っぷりとクソガキっぷりをよ」


「……」


 思い当たる節しかないとアスベルが言い澱む。


「ちょっ! ちょっと! そこは反論しなさ――」


 ラフィが発言すると、その喉元にナイフが突きつけられる。


「ひっ……!」


「これでよろしいですか? フェルトさん」


 ナイフを突き付けたのはエメローラだった。


「と、とんでもない姫殿下様だ……。ちなみに何故ナイフを?」


「護身用です」


「あーあ」


 ナイフを持っている理由には納得したが、行動がまったくお姫様らしくないと驚く。


「聖女ラフィ……いえ、ラフィ・リムーベル。ここから許可なく、一声でも上げてみなさい。わたくしは国のために貴方の喉元を裂きます」


「ひいっ!?」


 当然そんなことをするつもりはエメローラの立場上、毛頭ないと思うフェルトだったが、その凄みはいかにも本当にやるぞと言わんばかりだった。


 これにはラフィは黙っているしかない。


「か、感謝するよ、お姫様〜」


 フェルトは苦笑いしながらも、自分の要求に応えてくれたことに感謝すると、


「それともうひとつお願いがあります」


「な、何だ?」


 娘の行動に驚きを隠せないオルディバルが少し動じながらも、フェルトの要求を聞くと、フェルトは嫌悪感を強めた視線でラフィにこう告げる。


「そこにいるクソ聖女……もう呼び捨てでも構いませんか? 聖女と呼ぶには下衆過ぎて吐き気がする」


「……」


 フェルトの本当に苛立っている様子に息を呑むオルディバル。

 そしてそう侮辱されたラフィは、エメローラの刃がある以上、答えられなかった。


「わ、わかった。聖女ラフィを犯罪者という証明ができるというのだろう? きょ、許可しよう」


「ありがとうございます、陛下」


 そしてここからオルディバル達を含めた闘技場内の人達に、全てが語られる。

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