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大罪の神器  作者: Teko
王都編 双子の聖女
93/177

32 聖女杯 試合編2

 

「お、お疲れ様です、リーウェン様。いやぁ、我が部下が不甲斐なくて申し訳ない」


「いやいや、いい引き立て役だったよ。今、医務室にいるからさ、改めてありがとって伝えておいてくれる?」


「そ、そうですね。後程……」


 嫌味を言いやがってとアスベルは感情を押し殺すが、フェルトはしてやったりとしたり顔。


 すると、


「!」


 ゴルドがフェルトを引っ張り、小声で尋ねる。


「どういうおつもりですか!? 聞いていた話と違いますよ」


 するとライクもすずいと近付いて尋ねる。


「そうですよ! どういうつもりで――」


「まあまあ、混乱させるのが目的だろ?」


「「!」」


 するとフェルトはふたりを突き放す。


「大丈夫だから心配すんな」


 するとアスベルも参加。


「何の心配ですかな?」


 フェルトは不敵な笑みを浮かべ、


「知ってるくせにぃ〜」


「……っ」


 他の参加者のいるこの部屋で言えないだろと、フェルトはそれだけ答えた。




 モニターからは『準々決勝は十分後に行なう』とアナウンスされ――、



「さあ! 決勝トーナメント二回戦、準々決勝を行いたいと思いまーす!!」


「「「「「――うおおおおっ!!」」」」」


「それでは第一試合! 先ずはこの方! 聖堂騎士団長アスベル・カルバドス!!」


 こちらは歓声がしっかりされての登場。


「そして対戦相手は、こちらも聖堂騎士ライク!!」


 対してこちらはブーイングでの登場となった。

 女性客が多い中でのこれは珍しいが、大会を冷やかしたかたちを作った元凶としては仕方のない扱いだった。


 それをアスベルは開始前の握手の時に嫌味混じりに語る。


「何を企んでいるのか知らないが、俺が相手だ……同じ手が通じるとは思わないことだ。これだけの罵声を浴びせられているというのに、残念なことだ」


 するとライクはフッと笑う。


「ざけんな。こんな罵声、ネフィ様の今まで飲まされた苦汁に比べれば屁でもないぜ」


 早々に握手を終え、ライクは捨て台詞に、


「それに俺は今、初めてアンタに感謝してる」


「なに?」


「今の相手がアンタだからな」


「……!」


 お互いに定位置についた。


「上司対部下の真剣勝負が行われます。団長としての意地を通せるか!? それとも下克上なるか!? では! 準々決勝第一試合……開始っ!!」


 開始と同時にふたりとも駆け出し、お互いの剣がぶつかり合う。


「おっと!? これは……?」


 司会も会場もどよめく。


「どういう心変わりだよ、団長様よぉ!!」


「いやぁ……たまには貴方のように意地汚くがっついてみるのも一興かと思っただけですよ!!」


 お互いに激しい斬り合いが始まる。


「これはこれは!! アスベル選手、先程とはまったく戦い方を変えてきてのもうラッシュ!! そしてそれに呼応するようにライク選手も先程ののらりくらりとした戦い方とは一転、激しい斬り合いとなっている!!」


 これが観たかったんだとばかりに会場もヒートアップ。

 お互いに譲れないものがあるという、鬼気迫る雰囲気に会場も呑まれていく。


 そんな剣撃が激しく舞う中で、ふたりは会話していた。


「良く言うぜ! 聖都じゃあ、奴隷にした女によくがっつくくせに。今頃本性丸出しでやんのかよ?」


「黙れ。貴様こそいつまであの奴隷聖女にご執心だ? まあその方がこちらとしては都合が良いがな」


「ハッ! お前みたいに欲望丸出しのクズ野郎とは違うんだよ!!」


 ライクも戦いの雰囲気に呑まれたのか、時間をかけるということを忘れているようで、先程とは別人のように自分の得意な戦い方で攻める。


 だが元々はカウンター型のアスベルとは相性が悪く、


「くっ……!」


「ふん。何だ? 正義は勝つとでも言いたいのか? ガキめ!」


 ライクの剣を強く弾き、アスベルは斬りかかる。


「ああ! そうだよ!!」


 だがライクは持ち前のガッツで、その弾かれた剣にわざと引っ張られるように身を任せ、くるっと後退し、


「!」


 体勢を立て直し、カウンターで斬りかかる。


「――うおおおおっ!!」


 そして再びお互いの剣が入り交じる。


「必死だな、ヒーロー気取り」


「あんたこそな! むっつり眼鏡!」


 お互いの一歩も譲らない攻防に司会進行の彼女の実況にも熱が入る。


「攻める攻める攻めるっ!! お互いに一回戦とはまるで別人のような戦いぶり! これが観たかったとばかりに会場もデットヒート! 食らいつくライク選手に下克上などさせてたまるかとアスベル選手も斬り込んでいくぅ! これはどちらに勝敗が傾いてもおかしくはないぞぉ!!」


 歓声と熱弁実況のせいもあって、ふたりの会話は聞こえないようで、


「お前は所詮、フェルト・リーウェンに頼らなければ、生意気にも剣も向けられないような愚図。自覚はあるか?」


「……ああ、そうだな。否定はしねえよ。実際、俺は無力だったからな。それをお前達は散々教えてきたからな。本当にムカつくぜ」


 ライクはネフィが道具として扱われているのを見守るしかなかったことを思い返す。

 全てこの目の前にいるアスベルの策謀であり、自分の無力さが招いたことだと。


「だがな! 愚図でも貫き通したい意地のひとつやふたつくらいあんだよっ!! ましてやてめえみたいな愚図以下にやられっぱなしってわけにいくかよ!!」


「ああん?」


 アスベルは怒りを一瞬露わにする。


「何だよ。てめえの方が自覚がねえのか? 【絶対服従】の聖女に頼るしかなく、本物の聖女を突き落としたゴミ野郎が。そんなに女のケツが好きなら追いかけ回してろよ。犬みたいにさぁ!!」


 ライクは聖都でのアスベルの様子も知っていることから、そう挑発してみせると、


「……ブッ殺す」


 額に血管が浮き出るほど、アスベルはブチギレた。


「おおっと! アスベル選手の攻め方が……」


 先程よりも殺意がこもった剣撃が加えられるが、ライクはそんな攻撃など物ともしないと捌き切る。


「ぐっ……!?」


「ハッ!」


 フェルトが教えてくれたことだった。

 敵を手中に収めることで、自分が優位に立つことができることを。


 フェルトがたったひとつ、自分達が性癖を暴露しただけで、アスベル達が困惑し、正常な判断が難しくなったことを目の前で見ている。

 それを戦いに活かしたのだ。


「どうしたどうした? 団長様ってのはこの程度なのかよ?」


「調子に乗るなよ! 愚図があ!!」


「てめえこそ、いつまでも上座に居られると思ったんじゃねえ!! ゴミが!!」


 遂にお互いの罵詈雑言が聞こえたのか、司会もそれを拾う。


「おおっと! 本来ならあり得ないような言葉が飛び交っている! 互いに本性剥き出しの戦い(バトル)! たまにはこういう戦いがあってもいい!! そう思いませんかぁ!!」


「「「「「――うおおおおっ!!!!」」」」」


 会場も大盛り上がりの中、ふたりは本当に勝負を譲らない激戦が繰り広げられ、そして――、


「タイムアーーーーップ!!」


「「はあ、はあ、はあ……」」


 時間いっぱいまでの勝負だったが、一回戦の時のようなブーイングが起こるわけもなかった。


 すると司会は誰かと連絡を取っているのか、どちらもやられていないため、勝敗の決着を聞いているようだ。


「この試合、どちらも倒れず、お互いに立っていますので……引き分けではありますが……おおっと! 第一回戦での勝負の決着が早かった方、つまり……」


 司会はアスベルの方に手を上げた。


「勝者! アスベル・カルバドスっ!!」


 大きな歓声が上がり、周りは勝者であるアスベルを讃えるが、その本人は納得がいかない悔しそうな表情で歪んでいた。


 そして敗者であるはずのライクはその場で背中から倒れ、息を整えながらも、どこかやり切ったような清々しい表情をしていた。


「はあ、はあ……ハッ! ざまあみやがれ」


「くっ……。良い気になるなよ。フェルト・リーウェンをはじめ、俺達の邪魔をする連中は全員見張ってるんだからな」


「そうだろうな。俺にすら監視がついてんだ、わかってるよ」


「くっ……! だったら――」


「少しは悔しそうな顔しろって?」


 ライクはむくっと起き上がる。


「あの人は約束してくれた。ネフィ様の冤罪を晴らしてくれると。……俺は信じるしかないからな。悔しいなんて気持ちは湧かねえよ」


 そう言うと、先に会場からライクは出て行き、


「くそがっ!」


 アスベルもその後に続いた――。


 ***


「お疲れ〜」


 フェルトをはじめとする待機選手が先ずは先に来たライクを出迎える。


「あっ……お疲れ様です」


「こっから観てたけど、中々イケメン同士の戦いとは思えない、醜ーい争いしてたんだな」


 フェルトは会話の内容すら知らないものの、司会の熱弁がそれを受け取っていた。


 するとライクは、ハハハと苦笑い。


「ま、まあ普段の不満をぶつけただけですよ」


「だそうですよ? アスベルさんよぉ」


「……」


 その後に帰って来たアスベルの方が荒れた雰囲気をしており、他選手も避けるほどだった。


「だがライク。見事だった。結果は敗北だったが、成果としては十分だ」


「おう! 次はゴルドだな。頼んだぜ?」


 アスベルはそれを聞いてハッとなり、対戦表を見た。


 次の準決勝、ゴルドが勝ち進めば、今のようにギリギリまで詰められてしまうのではと思った。


「ああ」


 そのゴルドも先程と違うように勇んで会場へと向かった。


 アスベルはそれを見送るしかできず、フェルトはその悔しそうに睨むアスベルの横に立つ。


「どうよ? 何かを救いたいって奴の強さは並じゃねえだろ?」


「……そんなガキくさい精神論を語りに来たのですか?」


「おうとも。つか、お前の野望とやらもガキくさいんじゃねえのか? 【絶対服従】でやりたい放題とくれば、やりたいことなんて、なんとなーく察しはつくからな」


「くっ……」


「……本来だったら、さっきの試合、団長であるアンタが圧倒的な勝利を飾れるはずだったろう。伊達にお前さんだって団長は名乗っちゃねえだろうからな。だが、今回の勝敗の結果……いや、試合内容がこうなってしまったのは、少なくともライクの意志が強く、アンタの意志が大したことがないことの証明だ」


「くっ……!」


 アスベルは強くフェルトを睨む。

 だがそれはフェルトの言うことが的を突いているからであろう。


「それはっ! お前がそういう風に促したからだろ! フェルト・リーウェン!」


「だとしても、それは応えたいと望んだライクの強さだ。アンタは負けたんだよ」


「くっ……!!」


 アスベルは乱暴に立ち上がると、待機部屋から去っていく。


「……リーウェンさん。何を話したんです?」


「あん? ちょっと図星を突いてやっただけだ。出てったのは、俺が試合中に何もしていなかったかの確認だろう」


「ふーん」


 するとモニターでは、ゴルドの試合が始まっていた。


「アンタといい、ゴルドといい、よくやるよ」


 そのゴルドは再び先程の試合のように、気長な戦いをするようだが、準々決勝ということもあり、相手が強いのか、その違和感はない。


「そりゃ当然だ! 全てはネフィ様を救うため、俺はやれることをやった。……本当なら勝ちたかったが……」


「いや、別に勝敗はどっちでもいいさ。聖堂騎士を惑わせられればそれでいい。……それとも純粋に下克上したかった?」


 するとライクはニカッと笑い、


「まあね! 折角ならあのクズ野郎の顔面、ぶん殴ってやりたかったですが、それ以上の結果をリーウェンさんは約束してくれたんだ、我慢するよ」


「ハハッ! そうかい」


 それにフェルトも軽く笑って返した――。


 ――そしてゴルドとフェルトは無事に準々決勝を勝ち進み、準決勝第一試合であるゴルドとアスベルの試合が始まった。


「さあ! 始まりました、準決勝! その第一試合も先程同様に聖堂騎士同士の戦い(バトル)! ライク選手は下克上なりませんでしたが、果たしてゴルド選手はどうか? それともアスベル選手の意地が通るかあ?」


 そんなアスベルはどこか余裕が無く、攻め立てていく一方で、ゴルドはその焦りを見抜き、確実に攻撃を捌いていく。


「クソがぁっ!! 愚図が生きがりやがって!」


「愚図か。確かにそうだな。普段ならばな!」


 ゴルドはわかりやすくなった剣撃を躱すと、反撃に出る。


「くっ!」


 だがアスベルも一筋縄では行かず、こちらも捌くが、アスベルはこのままではライクと同様に、時間をかけてしまうと焦燥感に駆られていく。


 アスベルはフェルトがどうしてこのふたりに試合時間をかけさせているのか不明であり、フェルトは先程の試合も一瞬で終わらせていた。

 それには何かしらの意味があるのではないかと悶々としている。


 そしてその焦りは戦いにも出ており、ゴルドはフェルトの指示通り、時間いっぱいまで戦うことに成功できる基盤が出来上がってしまっている。


「くそおっ……!」


「どうした? このまま時間切れになれば、第一回戦の勝利時間の早かった貴方の勝ちだ。何を悔しそうにしている」


「貴様ぁ……わかっていながら挑発か!?」


「ハッ! なんのことだか……」


「舐めやがって……ゴルドぉ!!」


 思い通りにさせるかとアスベルは怒りに身を任せた戦い方になり、それを観覧席から見ていたラフィは後ろにいるダミエルに話しかける。


「ねえ? 何かあったの? アスベルの奴、何か焦ってない?」


「……さあ? 何ででしょうね」


 こちらでは何もできないとダミエルは諦めたように返答した。


 これもフェルト・リーウェンの狙いなのだろうが、オルディバル達がいるこんなところで、そんな相談もできず、しかもラフィに相談したところで解決にはならない。


「……」


 焦るなよ、アスベル。


 そんなダミエルの願いも届かず、アスベルは自分のペースを取り戻すことができず――、


「タイムアーーーーップ!!」


 結局、ライクと同じ結果となる。

 アスベルは勝者宣言をされるも、最早観客に応える余裕もなく、ズブズブとフェルトの策略に呑まれていく。


 そんなアスベルにゴルドは捨て台詞を吐いた。


「どうだ? 貫き通したい意志の強さは?」


「くっ……! 黙れよ! 正義のヒーロー気取り共が!」


「綺麗事は通らないか? 確かにな。アンタはそれを俺達に教えてくれたよ。どんなにネフィ様が綺麗でも周りの汚し方次第でどんどん取り返しがつかなくなることをアンタは教えてくれた。悔しいが……それが現実だろう」


 ネフィは周りの人々のためにあれと、身を粉にして役目を果たしていたが、【絶対服従】という理不尽な力にねじ伏せられた。

 それをゴルドは知っている。


「だがな。それがまかり通っていいというわけではない! それはネフィ様がネフィ様らしく生きることを諦める理由にはならない。俺達が俺達らしく生きることを諦める理由にもならない。だから……今抗うんだ」


「ハッ! いくら綺麗事を並べようとも、お前達はフェルト・リーウェンに頼っているだけの愚図。違うか?」


「……それでネフィ様を救えるなら、いくらでも愚図と言われても構わないさ」


「くっ……」


 ゴルドはアスベルに背を向け、会場を後にしようとする。


「不思議なもんだな。つい最近まで、何もできない悔しさしかなかったのに、今はこんなにも清々しい。負けたはずなのにな」


 周りも不思議に思うほど、ふたりの様子は違っていた。


 ゴルドもやり切った表情で会場を後にし、アスベルは先程よりも険しい表情で戻っていった。


 そしてフェルトはあっさりと準決勝を勝ち上がる。


「さあ! これで……決勝戦のカードが決定したぁ!! 決勝戦はこのふたりの熱い戦いが繰り広げられることでしょう。先ずはこの大会の主催者、聖女ラフィ様の刺客! アスベル・カルバドス! ふたりの聖堂騎士の下克上もモノともせず、決勝戦まで辿り着きました。団長の意地は通せたのではないでしょうか?」


 司会は空中に出たモニターを指しながら、決勝戦の選手を解説。


「そしてもうひとりは、エメローラ姫殿下をはじめとした貴族嬢達を見事救い出した救世主がひとり、フェルト・リーウェン! ここまで他の実力者達を瞬殺! その実力の底は計り知れず、団長であるアスベル選手にも引けを取らないものとなるでしょう」


 司会はバッと手を上げた。


「――このふたりの熱い決勝戦を見逃すなぁ!!」


「「「「「――うおおおおっ!!!!」」」」」


 そのふたりは待機部屋におり、フェルトはその司会の仕事ぶりに苦笑い。


「ハハ。休憩中くらい、煽るのはやめとけってんだ」


「まあ決勝戦ですからね。司会も熱が入るというものですよ」


「まあ、わかるけどね」


 もうアスベルは全然余裕がないのか、いつの間にかフェルトの隣にはゴルド達がおり、アスベルは黙ったまま、俯いた状態で椅子に腰掛けている。


「アスベルの奴、相当追い込まれてるみたいだな」


「リ、リーウェンさんがやったんでしょうが……」


「ま、そうなんだけどさ」


「それより大丈夫なのですか? もう決勝戦ですが……」


 決勝戦になっても動きのないフェルトに、さすがにゴルド達も焦ってくる。

 アスベルに、ああは言ったものの、不安は付き纏う。


「大丈夫だって! 別にこの試合中じゃなくてもいいんだ。今日中に結果が出ればいい」


「それはどういう……?」


「神のみぞ知るところならぬ、頼り人のみぞ知るところって話さ」


「「は、はあ……」」


 その様子を遠巻きに見ていたアスベル。

 ライク達の様子から、本当はあのふたりは何も知らされていないのではないかと過るが、確証は無かった。


 そんなことを考える時間も与えないようで、


『さあ! 皆様、お待たせしましたぁ!』


 決勝戦が始まろうとしていた。


「さてじゃあ……決着といきましょうか? アスベルさん?」


「……望むところですよ、リーウェン様」


 ――そんなふたりが会場に現れる。


「先ずはこちらの方!! 聖女ラフィ様を守る守護騎士! その実力に恥じることはないとばかりにここまで登り詰めました! 勝つのは俺だ! アスベル・カルバドスっ!!」


「「「「「――うおおおおっ!!!!」」」


「そしてもうひと方!! 普段はどこにでもいる学生ではありましたが、その才能は輝いている! 貴族嬢達を救い、その実力の証明をし続け、ここまで来ました! 時代は我にあり! フェルト・リーウェンっ!!」


「「「「「――うおおおおっ!!!!」」」


 大袈裟な文言にフェルトは苦笑いを浮かべながら、恒例の握手を交わす。


「ったく……気恥ずかしいったらないぜ」


 だがアスベルはそうは思ってないようだ。


「フェルト・リーウェン……」


「何だ?」


「俺は勝つ。この試合で貴方に負けようが構わない。最後に笑っていれば、それでいいんだ!」


「だな。それに関しては同意見だよ。大会の勝ち負けなんか、俺にもどうでもいいからな」


 フェルトは辺りを軽く見渡す。


「観客には悪いけどな」


 するとフェルトは、知り合いが目に入った。


「アイツ……!」


 そこにはディーノの姿があり、『負けるんじゃねえ!』と遠巻きからでもわかるくらいに叫んでいた。


「何だよ、アイツ。応援にマジで来たのか? ん?」


 その両隣には冒険者だろうか、そのような身なりをした女の子がいた。


 フェルトはそういえばケレン達がハーレムパーティーを組んでいたと言っていたことを思い出す。


「ははーん。後で紹介してもらうことにしよう」


 フェルトが余裕そうな表情で観客席を見ていると、気に食わなかったのか、アスベルが噛み付く。


「随分と余裕そうですが、貴方が何もできていないことは知っていますよ」


「――! ほう? それはどういう?」


「ずっと貴方達の監視をしていたんだ……何かできる隙もなければ、聖都からは定期連絡も来ている。こちらは何も問題ないんだ」


 するとフェルトは鼻で笑い、


「言ってろ」


 そう言って定位置へと向かい、


「くっ……」


 アスベルも表情を歪ませながら、定位置へ向かった。


「それでは今宵の聖女杯も決勝戦! さあ、どちらの元に勝利の女神が微笑むのか!? では……」


 司会は改めて対戦選手を宣言。


「アスベル・カルバドス対フェルト・リーウェン」


 司会は手を上げた。


「試合、開――」


 上げた手を振り下ろし、試合開始を宣言するその瞬間だった。


「――その試合、待ったあぁああああっ!!!!」


「「!?」」


 観客席から叫び声が聞こえ、皆がその方へ振り向く。


「おおっ!?」


 司会進行は虚をつかれ、空中でこけた仕草を取ると、


「一体、何なんですか!?」


 その声の主は観客席の出入り口にいた。

 するとフェルトがほくそ笑む。


「ハッ! まったく……今頃のご到着かよ」


 そのフェルトの視線の先にはアンジュを除く、ディアン隊の姿があった。

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