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大罪の神器  作者: Teko
王都編 双子の聖女
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15 提案

 

「――失礼します! フェルト・リーウェンを連れて参りました」


 ふたりの王宮騎士の案内の元、フェルトは応接室へと通されようとしていた。


 フェルトとしてはとてもラッキーな話。

 早速、昨日得た情報をオルディバルに伝えるチャンス。

 オルディバルより呼び出されたということが気にかかるが、こうして王族であるオルディバルのところへ直接通れるのは有難い。


「うむ。入れ」


 扉の向こうからオルディバルの返答が聞こえ、フェルトを連れて来た騎士達は、失礼しますと挨拶すると、扉を開けた。


「陛下、お呼び出しとのことですが……」


 フェルトは騎士に通され、先ずはオルディバルの話から伺うことにしたのだが、


「!」


 そこには昨日教会で見た聖堂騎士がいた。


 片方は見覚えがないが、もうひとりの色黒には見覚えがあった。


「よく来たな、フェルト・リーウェン。さあ、かけたまえ」


「ども」


 フェルトはふたりの聖堂騎士に無言でお辞儀をし、オルディバルにソファへ座るよう促されたため、座った。

 そこにはまた無愛想な大臣とフェルマもいたが、先ずはオルディバルから話をされる。


「さて、早速なのだが、先ず謝らねばな。すまない」


「は、はあ……?」


 謝られる覚えはないとフェルトは首を傾げる。


「何かありました?」


 そう尋ねるとオルディバルは、ふたりの聖堂騎士を見る。


「いや、実は今朝早くにアスベルが来てな」


「!」


「何でも昨日、教会で会ったとか?」


「ええ、まあ……」


 フェルトは丁度その時の話もしようとしていたが、様子がおかしい。

 アスベルとしては、昨日の教会の話は極力避けたいはずの話。


 フェルトはとりあえずオルディバルの話を最後まで聞くことにした。


「それを見たアスベルが指摘してきたのだ、どうして護衛をつけていないのかとな」


「護衛、ですか?」


「うむ……」


 オルディバルは少し困った表情をしているが、それは自身が反省するような様相だった。


「俺に護衛なんて必要ないですよね?」


「私もそう思っていたのだが、アスベルに指摘され、考えを改めたのだ。……君は先の件でブラックギルドと戦っておる。そして生き残った……」


「ええ。この通り、五体満足で生きてますよ」


「だからこそ、ブラックギルドがこの聖女祭の間に暗殺を図るのではないかと指摘されたのだ」


「!」


「確かに浅はかだった。君達はブラックギルドから恨みのひとつやふたつ、持たれていても不思議ではない。とはいえ、この聖女祭で我らが騎士や衛兵を割くことも難しい。それで聖堂騎士であるこのふたりが君の護衛として寄越すと言ってくれたのだ」


 フェルトは、なるほどと思い、聖堂騎士のふたりを見た。

 オルディバルは本心から心配しての提案だろうが、アスベルの狙いは別のところにあるのだろう。


 アスベルは昨日、正確には今日の夜中、ライクとゴルドの性癖暴露によって、フェルトが【絶対服従】のことを知っており、フェルトが持つ神眼の脅威を知った。

 その時にフェルトはほとんどの目論見を見抜かれていると考えたアスベルは、情報を漏らされる前の朝一に城へ駆け込み、護衛という名の監視を置くことに決めたのだろうと予想がついた。

 しかも敢えてオルディバルに持ち込み、表立って監視をすることで、フェルトが余計なことを口走るのを止めるということができ、隠れて監視していないため、後ろめたさもない。

 名目も護衛のためフェルトは断りにくい、という状況を作ろうと考えたのだろう。


 だがこれでフェルトはある程度の情報を得たことにもなる。


 先ずは向こうの対策としては、少なくとも自身の命を狙われる可能性が低いということ。

 神眼の持ち主ということもあり、【絶対服従】を知っていると間接的にも教えたこともあり、かなり慎重をきたしているようだ。

 フェルトはこの色黒を副団長だと聞いている。

 その人を寄越すというのはその表れだろう。


 そして大々的には動くこともないということ。

 聖女祭ということもあり、聖女の護衛もあるため、これは大方の予想通りだが、ここでクーデターを起こすつもりなら、その人員を割くような真似はしない。

 しかも聖堂騎士は王宮騎士より圧倒的に数も少ないはず。


 だから自身を仲間にしようと考えたり、ラフィの『傲慢の左足』、そして聖女という知名度を利用しようと考えているのだから。


 それなのに副団長を含めた人員の分断はそれらを行わないという表れであると予想がたつ。


 つまりアスベル達は今回は様子見、もしくはやり過ごすつもりなのだろうと推測できる。


 ダシに使われたブラックギルドには同情する。


「なるほど、呼び出された経緯はわかりました」


「うむ。しかし、私()強要はしない。折角の聖女祭、しかも君は初めてだろう?」


「はい。田舎から出てきましたから」


「ならば友人と気兼ねなく楽しみたいはず。無粋というなら無理強いするつもりはない。ただ、ブラックギルドのことを考えるなら、命には変えられないということも考えてほしい」


「『も』って?」


 オルディバルの『私も』の部分が引っかかったので尋ねると、オルディバルはダミエルの方へ向いた。


「ああ、それはアスベル達もそのあたりは配慮してくれるようで、護衛は断ってくれても構わないそうだ」


「なるほど……」


 敢えてってことね。


 アスベルはわざと護衛はどちらでも良いということで、フェルトに護衛は重要性があると誇張しているのだと気付く。


 してくれと頼むより、どちらでもいいよと言われる方が、こちらが断ることを前提とする話の場合、後者の方が断りづらいだろう。

 内容にもよるが前者の場合、真っ当な理由でも話せばスッパリと断り、後腐れが無くなるだろうが、後者の場合はもやもやした罪悪感が残る可能性がある。


 相手は本当は断ってほしくなかったのではないかとか。


 しかも今回の場合は、国王陛下であるオルディバルに言わせており、こちらの身を案じての提案。

 フェルトが断りづらい状況を見事に作ったもしか思えなかった。


 するとダミエルが、


「発言、よろしいですか?」


 とオルディバルに尋ねると、それを許可した。


「リーウェン様、僭越ながらこのわたくし、副団長ダミエルとその部下レックスが護衛を務めたいと考えております。正直、相手はブラックギルド。お役に立てるかは定かではありませんが、盾くらいにはなれましょう」


 中々後ろ向きな言葉だが、ブラックギルド相手となれば納得がいくことだった。


 さて、どうしたものか。


 フェルトは少し考え込む。


「……」


「どうかね?」


 特に悩む理由もないのではとオルディバルが尋ねてくる。


「そうですね。わかりました」


「うむ」


「――お断り致します」


「「「!?」」」

「……」


 その返答にダミエル以外驚いた。

 ダミエルは想定していたのだろうか、特に動じる様子はなかった。


「何故だ? やはり聖女祭を気兼ねなく楽しみたいのかね?」


「それもありますが……」


 そんなことはないが。


 フェルトにとって、【絶対服従】で行われることに決まった祭りは胸糞が悪いとしか捉えられなかった。

 だが建前としてはそういうしかなかったりする。


「色々と懸念材料があるもので……」


 アスベルの提案の引っかかる点を語る。


「先ずひとつ目として、ブラックギルドが奇襲を仕掛けてくる可能性が低いってことです」


「何故、そう言い切れる?」


「陛下もシギィのウワサはご存じですよね?」


「それは勿論。このフェルマも相手をして死にかけたと聞いている」


 するとフェルマは少し悔しそうに頭を下げ、謝罪する。


「不甲斐ないばかりで申し訳ありません」


「いや、責めているのではない。それだけあの男は厄介だということだ。何せ世界中で暗躍しておる奴らしいからな。それで? そのシギィがどうした?」


「はい。()り合った自分の感想としては、あの男が奇襲してくる可能性は極めて低いと考えたからです。少なくとも俺に対してはしてこないと断定までできます」


「断定までできると?」


「はい。確かにシギィは俺達と遭遇した際は、護衛という任務についており、侵入者を奇襲するなどで対応もあったかと思います」


「ふむ。つまりは仕事上ではそのような行動を取ると?」


「はい。ですが、奴の趣味思考的にそれを行なうというのは考えられません。対峙されたガルマの父ちゃんである貴方なら、わかるんじゃありませんか?」


 フェルトがそう尋ねると、フェルマは当時のシギィのことを振り返るように考える素振りをしながら答えた。


「確かに……。奴は何やら芸術がどうのとか……とりあえず、襲っていた人間に執着するような素振りがあったな」


「俺、その気に入られる側らしく、理由も聞きました。要するには芸術品のような造形の人間がお気に入りらしいです」


「は、はあ……」

「う、うむ……」


 オルディバル達の反応に、上手く説明ができていないと思ったフェルトは更に補足を立てる。


「奴は人間を神が作った芸術だと思っているらしく、取り分け、それで珍しい状態で生まれてきた人間がいたくお気に入りだそうで、俺が元から左眼がない状態で生まれてきたことをめちゃくちゃ喜んでましたよ」


「う、うーむ。常人には理解できぬことだな」


「……まったく同意見です」


 フェルトはそう呆れたが、それが襲われない理由だと告げる。


「ですがそのおかげ……? と言えばいいんですかね? そんなお気に入りの俺を奇襲や暗殺なんてやり方で命を奪うとはとても考えにくい」


「陛下。確かに今の話やわたくしと戦った際の執着性を考えると、シギィはそのような卑怯な行動は取らないでしょう」


 フェルトの意見を擁護するように、フェルマも賛同した。


「なるほど。シギィがあくまで襲う確率が極めて低いことはわかった。しかし、笑顔の(スマイル・)娯楽提供者(エンターテインメント)はどうだ? 奴らはむしろシギィのような狂信者でなければ誇りある戦士でもない。ケチをつけた君に奇襲をかける可能性は高くないか?」


「それは確かに」


 アーディルは逃げる際にそのような捨て台詞を言っていたことを覚えているため、フェルトは即答。


「特にその最大の要因であらせられるエメローラ姫殿下は狙われるのでは?」


「――んっ! んんっ!!」


 飛空艇を爆破したのはあくまでエメローラだとあざとく言ってみせると、オルディバルは咳き込んだ。


「そ、それはそうだが……」


「わかってますよ。姫殿下の護衛は万全でしょうね」


 クレアから融通が効かない護衛がついたと聞いているため、エメローラには同情しか湧かなかった。


「でもそれなら俺だけに護衛をつけるのは変でしょ?」


「!」


「まあ、そういうことも貴族の義務だって言うなら、ヘヴンやガルマは対象にならなくとも、俺と同じで平民のユーザやグエルはどうなるんです? アイツらも一緒でしたが?」


「そ、そうだなぁ……」


「それに下手に俺だけに聖堂騎士の護衛をつけるのは返って目立ちますよ。隙あらば奇襲してくれと言ってるようなもんだよ。それにユーザやグエルを人質に取られたらどうするんです?」


「む、むう……」


 旗色が悪くなってきたと、護衛をつけることに賛成していたオルディバルが困惑の表情をしているが、それ以上に困惑していたのは、レックスだった。

 そのレックスに肩肘でつつくダミエル。

 表情に出すなと言わんばかりの態度に、レックスは一応表情を隠す。


 ダミエルも内心はマズイと考えている様相。

 少しばかり眉を顰めている。


「だったらいっそのこと、聖女祭の時にわざと一目につくところで聖堂騎士と仲良く話しているところを見せつけて、知り合いなんだと思わせる方が、抑止力になるのではないですか?」


「な、なるほど」


「護衛について目立つ聖堂騎士の制服も、それなら十分役に立ちますし、このおふたりも聖女様の護衛に専念できるというもの。それでも心配なら、たまに気にかけてくれるよう、見かけたら話しかけてくれればいい。その機会を増やせば増やすほど、俺達に何かしらのちょっかいを出そうって連中は難しいと判断するだろうさ」


 フェルトのその意見に、ほうほうと感心するオルディバル達に対し、ダミエルは非常にマズイと更に眉を顰めた。


 完全に流れがフェルト・リーウェンにある。

 私達の護衛を間接的なものにするという解決策を提示すると同時に、我々の意見も取り入れていることから、こちらがその策に対する反論を潰している。

 こちらは朝早くに仕掛けているというのに、何という頭の回転だ。


 改めて厄介な存在だと苦悶の表情を見破られたのか、フェルトが振り向き尋ねる。


「どうかされました?」


「い、いえ。とても素晴らしい提案だと思いまして……」


「ホントか!? いやぁ、聖堂騎士様にお褒め頂けるとは嬉しいねぇ」


「何を仰いますか。神に選ばれた神童である貴方様ほどではありません」


 そう褒めるダミエルだが、内心はわざとらしいと少しばかり憎らしさすら芽生えている。


 ダミエル達にとって神眼の能力は未知数である以上、側での監視は必須。

 どうあっても護衛という監視をつけたいところだが、ダミエルはフェルトの提案を返す意見がまだまとまっていない。


 どうすればいい……。どうすれば……。


「どうですか? 聖堂騎士の副団長のダミエルさんもこう言ってますし、護衛の方はお断りでも大丈夫でしょ? ……断られても大丈夫なんですよね?」


「……! そ、それは……」


 ここにきて、ダミエル達の提案として出した建前が仇となった。


 フェルトは、そんな思い通りにさせるかよとでも言いたげな表情でダミエルに振り向き、悪戯っ子のようなニヤッとした笑みを浮かべる。


 するとレックスが、


「い、いや! 護衛は必要っス!」


「「「「「!?」」」」」


 それでも護衛は必要だと、危機迫る表情でフェルトの提案を否定。


 するとフェルトが冷ややかな目で尋ねる。


「そう仰るなら、何かご意見あるんですよね? 聖堂騎士様?」


「ぐっ……!」


 フェルトは全てを見透かしているぞと言わんばかりの表情で、レックスを見下す。


 レックスからすれば、事前の話し合いでフェルト・リーウェンは強大な敵であると語り合っている。

 何も考えず、とりあえず否定したレックスにとって、そのプレッシャーは半端ないものだった。


「ダ、ダミエルさん! だ、ダメですよね? 護衛をしないなんて……ね?」


 堪らずレックスはダミエルに助け舟を求めると、そのダミエルは何故か少し安堵した表情をしていた。

 まるでこの空気を変えてくれたと、少し冷静な顔つきに変わっていた。


「……確かにリーウェン様の提案ならば、ブラックギルド達への牽制になり得るでしょう。しかし、ちゃんと考えてもらいたい。相手はブラックギルドです。そのような間接的なもので防げるとは考えにくいです」


「……」


笑顔の(スマイル・)娯楽提供者(エンターテインメント)はその狡猾性もウワサされるほどの厄介さ。あの英雄の盃ですら手をこまねく存在。あまり甘く見立てるのはよろしくない」


「確かにダミエルの言う通りか。確かにフェルトの提案も良いとは思うが甘いか……」


「はい。ですがリーウェン様の仰る通り、リーウェン様のみを護衛するというのも不信感を抱かれるのも事実。……陛下、確か先日の事件以降、学園区の警備は強化されたとのことですが……」


「そうであったな?」


 その警備を割り振っているであろうフェルマに振り向き尋ねるオルディバルに、フェルマは頷いた。


「ならばその警備に聖女祭までとなりますが、我々も表向きはその警備に加えて頂くというのはどうでしょう?」


「!」


「表向きは?」


「はい。我々はリーウェン様の住まう男子寮を警備するというのはどうでしょう? お互いに人員もこれ以上は裂けませんし……」


「ふむ……」


 つまりダミエル達は学園区の警備をするフリをしつつ、本当は男子寮、そしてフェルトの護衛もとい監視をするということだろう。


「我々が男子寮全体を警備すれば、多少のカモフラージュにはなるでしょう。仮にリーウェン様を警備しているとバレても、これなら人質の確保も難しいかと。向こうも先日の件からあまり派手には動かないでしょうし」


「そうだな……」


 笑顔の(スマイル・)娯楽提供者(エンターテイメント)の先日の誘拐手段を知っているオルディバルは、ダミエルに再び丸めこまれそうだ。


 フェルトは、抵抗もここまでかなと半分諦めた。


 実際問題、確かにブラックギルドの襲撃が必ず無いとは言い切れない。

 アーディルは確かに飛空艇を失ったが、それでもあの激情ぷりを見ているフェルトとしては、完全否定は難しく、アーディルに圧倒されていたユーザをはじめ、それよりも戦闘面で完全に劣るグエルが人質に取られる可能性も否定はできない。

 だから護衛というのは、いくらフェルトの監視が目的だとしても、本当のところは有難かったりする。


「……どうかね? フェルト・リーウェン。これならば護衛をしてもらえば良いのではないか?」


「そうですねー……」


「「……」」


 ダミエルとレックスの心境は、これ以上の反論をされると困るといった真剣なものだった。

 何せ、この後の計画に関わってくること、少しでもフェルトの動きを抑止しておきたい。

 そのための策ですら、ここまでの心労をせねばならないのかと思うと気が気ではなかった。


 するとフェルトはあっさり。


「わかりました。護衛を受けましょう」


「「!」」


「そうか。聖女祭を楽しむという点に関してはアレだが……」


「まあ、命には変えられませんから」


 ふたりは思わずキョトンとしてしまう。

 あれだけの提案をしたのなら、もう少し何かあると思っていたのだが、あまりにあっさりと受け入れられたことに驚く。


 その表情を見てフェルトは、


「どうされました?」


「えっ? あ、いや……」


「そちらの――()()()()()でしょ?」


「「!?」」


 フェルトはわざとらしくニッコリとそう答えた。

 そしてダミエルは悟った。


 護衛の話を『望み通り』と尋ねるのはおかしい。

 それはダミエル達にのみ伝わるメッセージだと気付く。

 そこから読み取れる答えは、フェルトにとって護衛という監視がつくのはどっちでも良かったということ。


「望み通り?」


「はい、陛下。こちらの聖堂騎士様は神眼持ちである俺のことを神聖視してるところがありまして……」


「ああ、なるほどな」


 ダミエルはそこの言い訳までちゃんと用意してあるところに、ギリっと歯軋りを立てた。


 フェルトの今回のやり取りは、お互いにどこまでの考えが浮かぶのかという、力量を測るためのものだったのではないかと気付く。


「じゃあ、話はこれで終わりですか?」


「うむ」


「では失礼致します、陛下。ダミエルさん達も聖女祭からお願いしますね」


 そう立ち上がるフェルトだったが、


「何を仰っておりますか?」


「……は?」


「今からですが? 護衛の件」


「は?」


 話が違うと言いたげなくらいにフェルトは目を丸くしていると、オルディバルもダミエルに同意する。


「そうだぞ。今、聖女祭の準備期間ではあるが、あのパレード見たさに来た観光客も多く、そのまま聖女の儀式を見ていこうと滞在する者達も多い。護衛をするなら今からであろうな」


 フェルトは少し不機嫌そうな顔をするが、


「……わかりました。オッケーです」


 渋々了承。


「じゃ、今日は歓迎会ですね。ちょっと買い出しにでも行きますか」


「歓迎会?」


「ええ。護衛してくださるんでしょ? タダでやってもらうのもアレなんで、ご馳走くらいしますよ」


「い、いえいえ。わたくし達はあくまで仕事として――」


「あーあー、そういうのいいから。遠慮はいらねーよ。それに料理が趣味の俺としては感想をくれる人は多い方がいいからな」


 するとオルディバルは少し羨ましいそうに語る。


「娘から聞いているぞ。砂漠での自炊の際、振る舞われた料理は中々に美味だったと聞いている。是非、私にも振る舞ってほしいものだ」


「姫殿下に気に入ってもらえたなら光栄ですが、所詮は庶民の味、陛下のお口に合うかどうか。それに……」


 横で大臣が凄い形相でこちらを睨んでいる。


「陛下の横におられる方が許しそうにないので、当分は諦めてくださると有難いです」


「……まったく。大臣は心配性だな。では許してもらえた時にでも頼むよ」


「は、はい。その時は是非。……今回の件、配慮ありがとうございます。それでは失礼します」


 フェルトは、まあそんなことは訪れないだろうなと思いながら、応接室を後にした。

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