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大罪の神器  作者: Teko
王都編 消えた貴族嬢達
58/177

35 ファバルス王国流行病事件 解明編3

 

「「「「「!?」」」」」


 一同がその指差されたへーデルに視線が向いた。

 そのへーデルも酷く驚いている。


「ば、馬鹿な……!?」


「へーデル……? き、貴様ぁ……!!」


 裏切られたと思ったタルターニャは、一瞬信じられないといった表情を浮かべたかと思うと、すぐに怒りの表情へと豹変した。

 勿論、へーデルは違うと口にする。


「お、お待ち下さい! 殿下! わ、わたくしはそのようなことなどしておりません!」


「抜かせ! この者に毒を飲ませ続けるためには、強い脅し効果が必要になろう! そのためには権力のある人物が直接やった方が効果があると、フェルト・リーウェンもそう言った! 主はその条件を満たしており、あまつさえその者に示されているではないか! 往生際が悪いぞ!」


「ち、違います! わたくしは本当に……! あ、貴方も適当なことを言わないで下さい!」


 へーデルは無実の弁明を、毒を盛っていた男に求めるが、


「あ、貴方こそ、ふざけないで下さい! わざわざ適切な毒の量まで精密に書かれたこんなものまで、渡したくせに、いざ犯人だとわかれば言い逃れですか!?」


 そう言って、その指示書をぶちまけ、フェルトは騒がしくしていることなど気にせず、それを拾って【識別】で確認した。

【識別】を使えば、書かれていることに関しての情報は得られないが、()()()()()()()()情報は得られる。


「おい! 衛兵! 何をしておる! この痴れ者を捕らえよ!」


「は、は!」


「お、お待ちください、殿下! 信じて下さい! わたくしは無実です!」


「まだそんな――」


「まあまあ早とちりすんなよ、殿下。確かにへーデル宰相の言ってる通り、宰相さんは犯人じゃないぜ」


「……えっ?」


 あまりに状況がコロコロ変わるものだから、一同はフェルトの発言にポカンとしている。


「な、何を言ってるんですかぁ!! あ、貴方が! 貴方が真犯人を教えれば、家族を守れるって! ぼ、僕は本当のことを口にしました!」


「そ、そうだぞ、フェルト・リーウェン。主が言ったではないか。毒を飲ませるよう指示した人物は犯人を見ておると……」


「確かにそう言ったが、ちょっとよく考えてみろよ。権力者であるこの三人が言えば説得力がある反面、リスキー過ぎないか?」


「!」


 すると冷静な判断ができているエメローラがこう推理した。


「確かにこんな状況になった場合、逃げ場が無くなりますし、それに陛下の暗殺はまだ実行途中でした。証人となる彼はあとで殺害するにしても、生かしておく理由もある以上、その生かしている間に誰かしらに相談される可能性だってあった……」


「つまりはへーデル宰相に最初から犯行をなすりつけるつもりで、へーデル宰相になりすました! そうだよね? フェルト君!」


「ああ、正解だ。それにその証拠はすぐに出せる。宰相さん」


「な、なんでしょう?」


「『ダイオ・オルチン』って書いてくんねえか?」


 フェルトは適当な紙とペンを手渡し、その指示書に書かれている『ダイオ・オルチン』という文字を書かせた。


 そしてそれと今書いた文字を比べるよう、皆に見せた。


「ほらよーく見てみな。確かに指示書の筆跡と今、へーデル宰相に書いてもらった筆跡は似てはいるが、かろうじて違わないか?」


 エメローラやタルターニャ達のみ、それを見比べてみると、


「た、確かに。似せて書いておるな」


「え、ええ……」


「まあなすりつけるつもりなら、筆跡を似させることもするだろうし、へーデル宰相の筆跡なら、このふたりでも、書類をくすねれば可能だろうね」


 ほとんどの奴が似ていると判断した。


「でもこの段階だと結局、誰が犯人かわからないのではないか?」


「確かにへーデル宰相がわざと筆跡を歪ませた可能も無くはないし、ふたりの容疑も晴れるわけでもないが……」


 フェルトは犯人の肩を叩く。


「随分と楽しそうな笑みを浮かべてたな? 真犯人の――ルドラー大臣?」


「「「「「!?」」」」」


「なあっ!?」


 ルドラーは何を言うかと、バッとフェルトに向かって振り返る。


「俺は最初からアンタしか疑ってなかったからな。へーデル宰相が指差された時、みんながへーデル宰相に向く中、俺はアンタから視線を逸さなかったぜ。まるで思い通りに事が運んだとでも言いたげな笑みだったな」


「ルドラー……!! 貴様ぁ……」


 先程へーデルに向けていた怒りの形相を今度はルドラーに向けたタルターニャ。

 しかし、ルドラーは怒りながらも、フェルトのその言葉に冷静に反論する。


「馬鹿を抜かすな! 異国のクソガキ! そんな理由だけで犯人にされてたまるか! 私が笑みを浮かべたのは、これだけの策を労しながらも、結局暴かれてしまい、挙句に犯人だと判明させられ、策士、策に溺れたと思っただけのことよ!」


「ほう? あくまで犯人に対し、ざまあみろ、悪いことはするもんじゃないなと笑ってやっただけだと?」


「そうとも。それに異国の少年よ……」


 まだ弁明できると思い、クソガキから少年に戻った。


「確かに貴殿の推理は見事だ。まさかこんな短期間で我々すら判明できなかった真実にたどり着いたのだから。しかし、貴殿は少々考え過ぎなのではないかな?」


「と、言いますと?」


「なすりつけると見せかけて、素直に本人が脅しに行ったとは考えられませんでしたかな?」


「なっ!?」


 何を言うかとへーデルの表情も変わる。


「なるほど。裏の裏をかき、本当は表だったと?」


「そうだとも、異国の少年。確かに貴殿の言う通り、なりすますことも可能ではあるが、その逆も然り。なりすましに見せかけることも可能ではありますぞ」


「ルドラー大臣! そんな屁理屈を……!」


 するとルドラーは、ゆらりとへーデルに振り向く。


「屁理屈ぅ? それは犯人である貴方の詭弁ですな。証人がいる貴方の方が決定的だということを理解してもらいたいものです」


「だからそれをなりすましだと言っている! その証拠にこの指示書とわたくしの筆跡は……」


「だから! それを貴方の偽装だと言っているのですよ! 元々流行病に偽装しようとしたのです。同じ考えだと思われませんかな?」


「貴様ぁ……」


 お互いの言い合いが平行線に続くのを見越して、タルターニャがふたりの間に割って入る。


「落ち着け、主ら。妾が言うことではないだろうが、落ち着くのじゃ」


「「……」」


「フェルト・リーウェンはそれすらもきっと見越しておるに違いない。そうでなければ、ルドラー大臣()を犯人だと名指しもせんじゃろう。……フェルト・リーウェン!」


「はい」


「あるのじゃろう、証拠が。ルドラー大臣が犯人だという証拠が……」


「ねえよ」


「「「「「……」」」」」


 一同、フェルトのひとことに沈黙し、タルターニャはもう一度尋ねる。


「き、聞き間違いかのぉ。も、もう一度訊くぞ。ルドラー大臣を名指しで犯人扱いするのじゃ、証拠は……」


「いや、ないって」


 すると機嫌を良くしたのか、犯人呼ばわりされたのにルドラーは高笑いした。


「――あっははははっ!! 証拠が無いではわたくしが犯人ではありませんなぁ。まあ、元よりそうだと言っておりましたが、やれやれ……」


 証拠を言ってやりたいフェルトだが、【識別】で判断したものを証明できる証言や証拠を提示できないから、こればっかりは仕方ない。

 だが、カマをかけることはできる。


「まあまあ早とちりすんなって、ルドラー大臣。アンタを疑う理由は別にある」


「なに?」


「アンタ、他国に拠点を置いている違法の奴隷商と繋がりがあるだろ?」


「「「「「!?」」」」」


 フェルトは出会った時の【識別】を行なった際、殺人歴と奴隷商との繋がりがあることを知った。

 だからこそ、奴隷が薬漬けされて殺されたんじゃないかと、推理も立てられた。


「それにアンタは動機も明確だ。なんでもアンタ、他国のように奴隷を労働者として働かせようと陛下に何度か打診し、口論になってるそうじゃないか」


「き、貴様、それをどこで……」


「聞き込みは事件解決の基本だよん!」


 毒を盛っていた男を割り出しながら、厨房の人や使用人から聞いた話だ。


「誰かがどこかで色々聞いてるもんさ」


「た、確かにルドラー大臣は陛下とそのような口論を……」


「ふざけるな! へーデル! 私はこの国のことを思っての提案だ。他国の者達より早く、ユースクリア砂漠より国力を高めるための発見をすべく、労働力の確保は必須だと唱えているだけのこと。ユースクリア王朝跡地を管理している我らだからこそだと……」


「だが父上はそんな過酷な労働をさせれば、他国のような死人が出てしまう。それは人権に反することだと指摘があったろう!」


「それを甘いと仰っているのです! 確かに陛下は優秀でいらっしゃる。しかし、その甘さが――」


「あーっ! そのあたりの国のお話は後でお願いできます? 俺達、そのあたりは関係ないので」


 ルドラーが捕まれば、そのあたりの話は無くなるだろうけどが、今は関係ない話だ。


「確かに貴様の言う通り、動機はあるだろうが、奴隷商との繋がりなどでっち上げだ!」


 よく言う。

 奴隷の労働力の打診をしてる奴が、奴隷商との繋がりが無いわけがない。

 それに奴隷商との繋がりがないと、毒薬の確保や実験用の奴隷の確保はできない。

【識別】でそんな繋がりを知っているフェルトからすれば、ルドラー以外に犯人はいない。


「そうか? 外交と称して奴隷商と連絡し合っていたとすれば……」


「だから! そんなことは妄言に過ぎん! 証拠を見せてみろ! 証拠を! 貴様は先程、私が犯行を行なった証拠は無いと言ったであろう!? 証人がいるへーデルが犯人で決定ではないか!」


「確かに証拠は無いが、今から出せばいいだけだろ?」


「な、なに?」


「ど、どういうことじゃ? フェルト・リーウェン」


「何でわざわざ流行病の未来予知を見た連中、全員この部屋に呼んだと思ってんだよ。それは互いに監視させるためと同時に、決定的な証拠を隠滅させないためでもあるんだぜ?」


「け、決定的な証拠だと……?」


「ああ。それは奴隷だ」


「ど、奴隷?」


「俺はさっき言ったよな? この犯人は数年前からこの計画殺人を企てていたと。その際、奴隷を薬漬けにした可能性が高いって……」


 するとまたしてもヘイヴンが気付く。


「なるほど。その薬漬けにされた奴隷、もしくはその死体でも出てくれば、証拠になるね」


「……!」


 ルドラーの表情が一瞬曇ったが、無視して話は進む。


「何で証拠に?」


「奴隷は奴隷制度という法で守られているのさ。今、細かく説明はしないが、おそらくここで重要となるのは、その奴隷の所有者かな?」


「……なるほど。奴隷の所有者はその奴隷を守り、養う義務があり、人権を侵害するようなことは禁止されている。仮に殺害や人権を害する拷問などされた場合、その主人が誰かわかるよう、その奴隷紋に主人の名が刻まれている。その毒漬けにされてしまった奴隷が出てくれば、証拠になる!」


 さすがはエメローラというべきか。

 そのあたりの勉強もしているらしい。


「そ。いくら違法の奴隷組織であったとしても、違法だとバレないよう、そのあたりは守られているはず。そして奴隷の所有者は基本、この真犯人が管理している所有地にいるだろうし、拷問する奴が部下だったとしても、違法の奴隷組織なら当人が所有者にならないと信用ならないとか、あるんじゃないか?」


 違法奴隷組織だからこそ、そのあたりのルールを守ることが、契約し続ける条件だったりする可能性は極めて高い。

 その重鎮の手綱を違法奴隷組織が握ることで、対等な立場にしているのだろう。


「……」


 どうやらそれは本当のようだ。

 ルドラーの表情が変わっていく。

 追い詰められているような、目を見開き、焦っている表情。


「そしてこれだけの計画を練った真犯人様だぁ、きっと証拠の隠滅、いや、なすりつける方法も考えてあるはずだ」


「!?」


 フェルトはポーカーフェイスが崩れてきているルドラーを軽く鼻で笑いながら、内心、侮蔑する。


 何を言い出すみたいな顔すんじゃねえよ、ルドラー大臣。

 ポーカーフェイスが崩れ始めてるぜ。


「この国では奴隷を所有することは禁止されてる。だろ?」


「うむ」


 この国を調査して回った時、奴隷紋や首輪をしてる人は誰ひとり見かけなかった。

 オルドケイアでは、たまーに見かけていたが。


「それなのに奴隷の死体や薬漬けにされた奴隷が出てくるのは、犯人にとって極めて都合が悪いことだよな?」


「うむ」


「だから真犯人様は、その奴隷の処分には困っており、おそらく自分の屋敷、もしくは管理施設などに隠していると思われる」


「!?」


「だから真犯人様は、なすりつける相手に向けてその奴隷を運び出そうと考えるとは思わないか? しかも確実にバレないように……」


「それはどうやって……」


 ここからは予想を踏まえてと補足をつけた後に語った。


「真犯人様は自分が管理できる範囲にいる間は自分で管理し、自分が管理できない状態だった場合、おそらく部下か誰かに――数時間が経った後、連絡がなければ、なすりつける相手宅や管理施設にでも押し付けろと指示されてるんじゃないか? なすりつけた先でその奴隷を見つけて、調査でもするフリでもして奴隷に近寄り、奴隷紋を消すなり、隠蔽するなりすればいいからな」


「!?」


 ルドラーはガタンっとテーブルを叩いた。


「……? どうしました? 大臣?」


「い、いやぁ……続けたまえ」


 どうやら図星のようだ。

 計画を立ててる内に、その証拠の処分も考えていただろうが、おそらく実験に時間をかけ過ぎた結果、薬漬けした奴隷が以外と多いんだろう。

 微調整しながらの薬漬け効果実験だ、ひとりやふたりでは済まないだろう。


「その部下をとっ捕まえることができれば、それも証拠にはならないか?」


「そうじゃの。吐かせればよいからな!」


「ああ。そして王女殿下。俺はここにみんなを呼ぶ時、何か付け加えなかったか?」


「うむ? そうだなぁ……流行病の未来予知を知った者達を()()()以内に集めて欲しいと言うたから、ここにいる者らにはすぐに来るよう、伝令させたぞ」


「……!」


 ルドラーは、自分がもう既に鳥籠(とりかご)の中に閉じ込められていることに気付いたようだ。


「ということは、その部下にはその指示をさせたままだろうし、真犯人様はそもそもこんな話を聞かされるとは思ってなかったはずだ。殿下の信頼を得るためにも、その指示には従ったはず……」


「つまり犯人は、証拠隠滅ができていない!」


「そしてここで妙な動きをしたり、この部屋から出ようとする奴が……」


「真犯人になるね。なるほど、フレンドがのらりくらりと推理を披露していたのは、そのための時間稼ぎか」


「まあな。毒を盛ることの重要性を考えると、真犯人は権力者を使ったはずだろ? そこまで推理できれば、あとはなすりつけする方法を想像するだけだ」


 真っ青な表情のルドラーを横目に、フェルトはすかさず犯人ではないアガルとタルターニャに指示する。


「なあ、おふたりさん? 容疑者になってるふたり以外の私兵を使って、今すぐに調べに行ってくれないか? そうすれば証拠の隠蔽役やそもそもの証拠も押さえられるはずだ」


「そうじゃの! 了解じゃ! アガル!」


「は! 早急にへーデル宰相宅とルドラー大臣宅を調べます!」


「あー、待て待て。ルドラー大臣んことを優先で。自宅だけでなく、管理している施設から最近立ち寄ったところとか、隅々まで頼むよ」


「へーデルのところも調べるのかのぉ?」


「ああ、一応な。おそらく毒ビンや奴隷の契約書みたいなもんは、おそらくなすりつけてある可能性が高い。それを見つけ次第、本当は誰の物なのか、さっき話した【鑑定】の盲点について気をつけて捜査すれば、わかるはずだ」


「了解したのじゃ。……ふたりとも異論はないな?」


 タルターニャがふたりに向かって、そう語ると、へーデルは迷うことなく跪いた。


「勿論で御座います。わたくしは誓って、そのようなことはしておりません。身の潔白が証明されるのであれば、慎んで協力致します」


「うむ。ルドラー……主はどうじゃ?」


「わ、わたくしはぁ……」


 ルドラーは言い淀みながらも、ゆっくりと跪く。


「わ、わたくしも誓って……申し上げます。そのようなことは、しておりません。どうぞ、お調べになって下さいな」


「うむ。ではアガル、頼むぞ」


「は!」


 するとルドラーはスクッと立ち上がる。


「ではわたくしの管理する施設等をご案内致しましょう。へーデル宰相もその方が――」


 証拠隠滅のためにこの部屋から出たがるだろうが、


「いや、それには及ばないよ、大臣」


「なに!?」


「それじゃあ何のために、殿下にそんな頼みをしたのかわけわかんないだろ? 案内なんて不要。だよな? 宰相さん」


「ええ」


「ぐうっ!!」


「だから王女殿下。このふたりは第三者である俺達が責任を持って監視しててやるよ」


 フェルトはそう言ってルドラーが座っていた席の前に、ドカッとわざと音を立てて威嚇するように座った。


「……!」


「勿論、アンタは犯人じゃないと言ってるんだ、部屋から出ずとも問題ないはず。さ、かけなよ」


 フェルトは立ったままのルドラーに座るよう促した。

 だがルドラーは、その席を深刻な表情で見つめるだけで一向に座ろうとしない。


「さ、宰相さんも座って、座って。一応、宰相さんも容疑者だからさ」


「うむ。そうだな」


 へーデルは特に動じることなく、フェルトの隣に座った。


「そうですな。疑いが晴れるまで、この部屋から出ないでおこう。その方が身の潔白の証明もされてよい。そうであろう? ルドラー」


「ぐっ……! ぐうっ……」


 ここで座らなければ、犯人だと言っているようなもの。

 だからか、ルドラーも恐る恐るではあるが、座った。


「じゃ! 待ってる間、暇だし、睨めっこでもするか」


「に、睨めっこだと……?」


「ああ。だが変顔をしての睨めっこじゃねえ。お互いにやましい秘密が無いか、先に白状(ゲロ)っちまわないかってゲーム……」


「!」


 アガルはもう既に姿は無く、へーデルと共に見張られ、完全に部屋から出られない状態。

 勿論、連絡等の素振りをしようものなら、犯人だと断定させられる状況。

 そしてアガルの私兵が急ぎ、向かったということは、証拠が押さえられる可能性が高く、時間が経つにつれて追い詰められている状態。

 そんな過酷な状態の中、疑いの眼差しを向けられ続けられる。


 どんな心境だろうか。

 だが、毒に苦しめられた陛下は勿論のこと、巻き添えを食らった国民達の苦しみはこんなものではない。

 せいぜい苦しんでもらおう。


「ま、このゲーム、俺の勝ちは確定してるがな」


「……っ」


「俺はアンタ達に隠さなきゃいけないような、やましいことは何ひとつ有りはしないからなぁ」


 そうは言うフェルトだが、隠し事自体は色々ある。

『大罪の神器』とか、女神イミエルのこととか、異世界人など。

 だけど、この人らに語るようなことではない。


「宰相さんはどう?」


「わたくしもそのユニークな睨めっこで負けることはありませんな。わたくしも特にやましい隠し事はありませんから」


「だってさ! ルドラー大臣! 言われてるぜ? 大臣はどうよ?」


「わ、わたくしだって……」


「そうかぁ? 真っ青で冷や汗までかいてるアンタにゃあ、説得力が無いねえな」


「そ、それは貴様らが露骨に私を追い詰めるからだろうがぁ!!」


 堪らず怒りを露わにするが、そんなもんで今更怯むことはない。


「どうして追い詰められていると? 犯人で無いなら、別に追い詰めるなんて思わないんじゃねえか?」


「……く、くそぉ……っ」


 さすがに老体にはキツイ精神攻撃だろうから、トドメを刺してやることにした。

 先ずはわざとらしくニッコリと笑い、


「あっ! そうだ。ひとついいかな? 大臣」


「な、何だぁっ!?」


 スッと侮蔑を込めた冷ややかな視線へと変えて、


「――小悪党風情が。異国のクソガキ舐めんなよ」


「……っ!!」


 ここまで見抜き、追い詰めてやったんだぞと威嚇してみせると、落胆したようにガタンと乱雑に座ったルドラー。


 そしてそんなあからさまに犯人だと言わんばかりに追い詰められたルドラーに、タルターニャもキッとした表情で睨み尋ねる。


「どうなんだ!! ルドラぁー!!」


「ぬっ! ぬうぅ……っ!!」


 するとルドラーは、テーブルに乗り上げながら、フェルトの胸ぐらを掴んだ。


「!?」

「フェル――」


 全員が駆け寄ろうとするが、フェルトはバッと手を広げ、助けに来ることを拒んだ。

 こんな弱そうなルドラーに遅れを取ることはない。

 それに、この悔しそうな表情を見るところ、襲おうと思っての行動ではないだろう。


「き、貴様さえ……貴様さえ居なければ……」


 するとゆっくりと胸ぐらから手が離れていく。


「完璧な……計画、だったのにぃ……!!」


 そのままルドラーは力無く、テーブルの上で崩れ落ちていき、自白した。

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