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大罪の神器  作者: Teko
王都編 消えた貴族嬢達
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08 王立バルデルセン魔法騎士総合学校4

 

「おっ、ここか」


 フェルトは学園区内にある図書館の前にいる。

 王都の学園区内にあるというだけあり、しっかりとした建物、本の寄贈数も多そうだと予想が立つ大きさ。


 『大罪の神器』の情報に期待を寄せたいところだが、イミエル曰く、ほとんど情報が欠落しているということ。

 たとえ王都の図書館であっても、得られるものはないかもしれないが、


「ま、行かないよりはマシか。それに……」


 最近はちょっとひとりになって落ち着く時間も欲しかった。

 というのもガルマ戦以来、フェルトの周りの環境が大きく変化した。


 同学年の貴族達は相変わらず陰口が多いが、決して絡んでくるようなことはなかった。

 ギルヴァートの影響もあったが、フェルトの強さはガルマを倒した時点で折り込み済み。

 認めたくもないが、舐められたくもない。それでいて自分達が痛い目に遭いたくもない。


 要するには小心者かつ自分主義なのだ。

 本当にギルヴァートの言う通り、クズばかりなのだろう。


 真っ当な貴族の子息は数えるくらいしかクラスにはいないとまで言っていいだろう。


 次に同学年の平民出身者達だが、完全にフェルトを英雄視していおり、雷鳴の再来と騒がれていた。


 そのヘイヴンから聞きそびれた雷鳴だが、今度はその平民出身者達から聞けた。


 雷鳴とはこの学校を主席で卒業した平民出身者のことで、文武両道で成績も優秀だったそうだ。

 そしてその雷鳴と呼ばれる所以となったのは、二年前に王都付近で起きた魔物の大量発生事件『モンスター・ディザスター』が発端。


 そこで騎士団長であるガルマとエルマの父、フェルマ・ヴォルノーチェ含む騎士団と共に数千の魔物を撃退したという。

 他の騎士達も奮起する中、雷鳴のその戦い方は独特なもので、抜刀術を起用し、風系統の派生、雷を纏って、まるで稲妻が走っているかのように、バッサバッサと魔物を薙ぎ倒していく姿から名付けられたらしい。


 その実力から卒業した時から特殊騎士部隊に所属している女性と聞き、モンスター・ディザスターは人喰いの事件から一年後であることから、アンジュ(ある人物)の顔が浮かんだが、底抜けに明るく、天然馬鹿みたいなあの人が、そんな鬼神の如く活躍したとは考えにくかった。


 それでその雷鳴の彼女とは別系統で、エメローラからも一目置かれていることから、重ねられてしまい、平民出身者からは憧れの眼差しで見られたりしている。


 だが何より一番困っているのは、やはりエメローラとクレアだ。


 元々人懐っこい感じで絡んでくるクレアは、あの出来事もあってわからなくもないが、容姿が良く、貴族嬢ということもあり、貴族達からの嫌悪に繋がっている。

 しかも厄介なのは、当人がそれで困っているフェルトを見るのを楽しそうにしている節があるところだ。


 小悪魔的な笑みがちょっとむかつく。


 エメローラに関しては、やはり将来有望な人材は是非、王宮にて囲いたいようで、普通にフランクに話しかけてくるようになった。

 元々彼女も身分差に関しては寛容とはいえ、立場があるのも事実。

 控えてほしいと思うが、そんなこと言えるわけがなかったりする。


 そして貴族達の嫌悪は勿論、フェルトに敗北したガルマとそれを許せないと言わんばかりのエルマからの圧のある視線まで浴びせられる始末。


 フェルト自身はただ、この学校に知識と情報と実戦経験を得るために来ただけであり、平穏な学校生活を望んでいたはずなのだが、忖度のできない先生によって瓦解している。


 フェルト自身も忖度なく、叩きのめしてしまったので、自分のせいであることも多少自覚はあったりする。


 そんなこんなで静かで落ち着く空間である図書館という場所はそういう意味では有難い。

 前世ではそんなに活用することもなかったところだが、インターネットの無いこの異世界では図書館こそ情報の宝庫。


 グー○ルさんが懐かしい。


「……って、広いな」


 外観からある程度の数は覚悟していたが、入ってみると、その本の数は尋常ではなかった。

 吹抜けのような作りの図書館には上から下までズラッと本棚が並び、びっしりと本が敷き詰まっている。


 ファンタジーの図書館って感じ。


 学園区の図書館は学園区内の学生に限らず、誰でも閲覧可能。

 ただ、学園区関係者じゃない人はそもそも学園区内に入るために、目的や滞在時間などを申告する必要がある。


 それでも利用者は多く、中には冒険者のような風貌の人間もいたりする。


 そんな慣れない場所をウロウロしていると、シミ一つない綺麗な白ローブの男性がこちらへと歩み寄ってきた。


「何かお探しですか?」


 ニコリと微笑んで尋ねてきた。

 どこか雰囲気がマルコ神父に似ているなと思いつつ、


「司書さんですか?」


「ええ。ですから、何かお探しなら相談に乗りますよ」


 探しに来たのは『大罪の神器』の情報だが、そんなことを直接聞くわけにはいかない。

 出来れば巻き込むのは少ない方がいい。


「えっと……魔道具の歴史を知りたくて……? 錬金術とか……どっすか?」


 すると司書は少し難しい顔をしたが、


「……そうですね、わかりました。こちらへどうぞ」


 手招いて案内してくれた。


「しかし、お若いのに錬金術の歴史を知りたいとは……。学者にでもなりたいので?」


「ちょっとした興味ですよ。どちらかといえば魔道具の方からなんで……」


 錬金術ではなく、魔道具に興味があると言った方が司書さんも案内しやすいと思った。


 錬金術が廃れた理由として、大昔とはいえ、国が壊滅している過去がある。

 その『大罪の神器(原因)』を知っているフェルトからすれば、錬金術の話は本来、あまり良く無いのも理解できている。


 だからこの司書さんはちょっと難しい顔をしたのだろう。


「魔道具の起源を学ぶには、やっぱり錬金術は避けて通れないかな〜って……」


「まあそうだね。ただ錬金術は知っての通り、禁術ともなってるから……」


「捕まるんですよね? わかってますよ」


 この世界でも資格みたいなものがあり、特殊な魔法に関しては国が認めたものしか使用が許されない魔法が存在する。


 魔法は魔力から生み出す不条理とされているため、下手な魔法は混乱を産んだりもする。

 だから管理を行わなければならないということ。


 錬金術がそのわかりやすい例だ。

『大罪の神器』、正確には宝具だが、それが呪具に変わり、その国の滅亡を及ぼしている。


 それに錬金術は石を黄金に見せかけたりなど、詐欺にも使用された過去や下手な物の生成は物流の混乱を招くなど、さまざまな理由から固く禁止されている。


 もしかしたら『大罪の神器』の情報が少ないのも、そこが起因している可能性もありそうだ。


 フェルトが案内された場所は広い読書スペース。

 そこに座らされると、


「ちょっと待ってて下さいね」


 とだけ司書は言い残し、近くの本棚まで向かった。

 どうやらフェルトが求めている本はこの読書スペースの近くのようで、高いところにある本なんかは、魔法を使って浮遊して取っていた。


 割とスッスッと取っていくため、どこに何があるのかわかるようだ。

 さすが司書と感心。


 ある程度、本を抜粋してくれたようで、


「とりあえずこのへんですかね」


 フェルトの目の前に数十冊の本がドサドサと置かれた。


「ど、どうも。あ、あの……この中から特にこれは読んでおいた方がいいってものは……?」


 さすがに多いと困ったように目配せすると、察してくれた。


「……そうだねぇ。このあたりかな?」


 三冊ほど抜粋してくれた。


「ありがとうございます。あと貸出ってできます?」


「悪いけど、貸出はしていない。魔導書がある影響もあって、基本的に禁止している」


 それだけ訊くと、司書さんとお別れし、とりあえず勧めてくれた本を読んでいく。


 先ずは錬金術の歴史について。


 錬金術は古代より有し術式のようで、ユクシリア大陸を中心に使われており、当時はそれで栄えていたそうだ。

 正確に言えば、ユクシリア大陸は魔法の始祖の国とされており、錬金術に限らず、色んな魔法の研究が盛んに行われていたそうだ。


 だが、その行き過ぎた魔法研究が神域を犯すこととなり、のちに語られる神との戦争が始まる。

 そしてその神との戦争に勝つために錬金術で武器を作ったが、その過程で自滅したことが記載されているが、そこはまだわかっていないことが多いようで、諸説が記載されていた。


 その武器の生成によって、戦力が差分化されて仲間内で殺し合ったとか、錬金術で神域に更に踏み込んでしまい、神罰を受けたとか、そもそも自滅ではなく、錬金術自体が失敗して、ただただ敗北したのかなど、諸説は様々。


 とにかくわかったことはそれくらいで、『大罪の神器』の情報はほぼなかった。


「だあーっ! くそっ!」


 一応、最低限以外の本も複数読んでみたが、やはり目に見えた成果は出てこない。


「ったく、あの詐欺女神め。こんなに情報が欠落してて集まろとか……」


「詐欺女神って何のことだい?」


 横から声がしたので振り向いてみると、そこにはフェルトの隣にあっさりと座り、頬杖をついてニコニコと笑顔のヘイヴンがいた。


「――おわあっ!? てめっ、いつの間に……」


「フッ。さっきからいたさ。君が読書に夢中になっていただけでね」


 相変わらずキザな仕草と喋り方だ。


「それより珍しいじゃないか。君が図書館(こんなところ)にいるなんて……」


「その言葉、そっくり返すぜ。お前こそ、てっきり貴族のお嬢さん達を口説いてたのかと思った」


「まあ、そこは否定しないよ」


 そう言ってヘイヴンはチラッと視線を別のところへ向けた。

 本棚の通路の先を見つめているようで、そこには優しく微笑む女の子がいた。


「……あれはどこの彼女さんで?」


「平民の学校に通う知的な蝶々で、類稀なる創造力を持っていてね。彼女が書く物語はそれはもう……」


 どうやらあの手を振っていた彼女は小説家や脚本家志望のようだ。

 あのにこやかな表情で手を振るあたり、ヘイヴンとの時間を楽しんだように見える。


「……お前さ。そんなにあれこれ女に手ぇ出してると、そのうち後ろから刺されるぞ」


「フッ。その時はその時さ。モテる男の苦難ってヤツさ」


「あー……はいはい」


 もう何言っても無駄なようだ。


「それで? そんな女の子達の王子様が、こんな平凡なクラスメートにどんな御用でしょうか?」


「そんな言い方しないでおくれよ。学舎を共にする仲間じゃないか。それに平凡ってのも訂正した方がいいんじゃないかい? 英雄君?」


「やーめーろ。それよりも用件を言え」


「そんなに難しい用件でもないさ。僕は君とお友達になりたいだけさ」


「……俺の性別知ってるか?」


「何だい? 君は僕が蝶々ちゃん達しか友達を作らないと思ったのかい?」


「違うのか?」


「ははっ! 違うさ。僕だって同性の友達くらい欲しいさ」


「欲しいってことは、いないんだな?」


「……」


 黙り込んだってことは、本当にいないようだ。


「まあできるわけねえって。女の子にあんなちやほやされてるイケメン貴族男子に誰が近付こうってんだ? 同じ貴族連中でも女取られて、妬みでも買われてんじゃねえの?」


「……」


「おい! 本当なのかよ!?」


「いやぁ、僕としては蝶々達を奪ったつもりはないんだが……」


 ダメだ、コイツ。

 女どころか男からも後ろから刺されるぞ。


「もしかしてそれを回避するために強いわけじゃねえよな?」


「それは勿論。僕自身、家系上の都合でね」


「ふーん。それで? 本当の目的は?」


「うーん、どうして信用されないかなぁ? 僕は本当に君とお友達になりに来ただけさ」


「だったらあっちの女の子より、こっちに来るんじゃねえか?」


 男に女よりも男を優先しろって言ってしまった。

 言ってて気持ち悪くなってきた。


「それは無理さ! 僕にとって蝶々達が最優先さ!」


「あー……はいはい」


 フェルトは何回呆れさせられるんだろうと、もう面倒になってきている。


「まあそれでも君にお近付きになりたいのは本当さ」


「気味の悪いこと言ってんじゃ――」


「何せ、神眼を持っているともなればね」


「!?」


 思わずバッと仰け反ってしまった。

 このあからさまな反応はマズイ。

 とはいえ、そんな単語が出てくる以上、誤魔化しも通じないだろう。


「……どこでそれを?」


「蝶々ちゃん達から聞いたのさ」


「誤魔化してんじゃねえよ」


「本当のことさ。蝶々ちゃん達は僕という花との会話のネタを常に集めている。蝶々ちゃん達の情報網を甘く見ない方がいい」


 確かに女は流行、つまりは新しい情報に敏感だ。

 つまりは貴族嬢達はヘイヴンの気を引くために会話を弾ませるネタに、色んなウワサ話を持ち込み、それを聞いたヘイヴンが情報を抽出するということなのだろう。


「食えねえ奴だな」


「フッ。それは心外だ。その言い方だとまるで僕が蝶々ちゃん達を利用しているみたいじゃないか」


「そう言ってんだよ」


「それは誤解さ。僕は蝶々ちゃん達の真偽を確かめて、安心させてあげたり、知識を広めたいだけさ」


 物は言いようだ。


「つまり俺の神眼も、どこかのお嬢さんから聞いた話で?」


「ああ。何でも、聖都に戻られた田舎神父が語っていたのを、聖堂で祈りを捧げていた清らかな蝶々ちゃんが話してくれたよ」


 その田舎神父にはちょっと覚えがあり、


「なあ、その神父って禿げて腹の肥えた横柄そうなおっさん神父じゃないか?」


「ああ。神父らしからぬ横暴そうな方だと言っていたからね。確か名前は……ダマスと言ったかな?」


 あのクソ神父。まさか死んでまで迷惑をかけてくるとは。


「だがそれだけで俺が神眼持ちって結論にはならないんじゃないか?」


「そのダマス神父は聖都に戻りたいと言っていたんだ、ならどこに飛ばされたのか、関係者に尋ねてみればいい」


 それで素直に話してくれるなら苦労もないだろうが、ヘイヴンの口ぶりからすると、あっさり聞けたようだ。


「ヴァース村という小さな村の教会に飛ばされて、そこで何があったのか、調べればすぐにわかったよ」


「……目撃者達は一応、口止めされてたはずだが?」


 村長がわざわざ気を利かせて、神眼を受け取った時点で言ってくれたことだ。


「その村ではもうひとつ、事件が起きたじゃないか」


「!」


「……その出身の君にとっては苦い記憶じゃないかな?」


「……うるせー」


「とにかくその事件の調査のため、その村人達の安否確認を行なう過程で、一部の騎士達が聞いたそうだよ。村長の隣宅の息子さんが神の恩恵を賜ったとね」


 フェルトは確かに人喰いの事件に関わっているし、ディアン達とも面識ができた。

 おそらく喋ってしまったのは、その騎士達に既に情報として流れていたと勘違いされてしまったのだろう。


「そして君は今、魔道具について調べている。これはつまり、その義眼が何なのかを調べていて、それを渡した神……女神と言っていたところを踏まえると……」


「あー……はいはい! 確かに俺が神眼持ちだよ」


 半ばヤケクソで認めたが、ヘイヴンの情報網と分析力が高いのは良くわかった。

 まさか並べていた書物や発言でここまで判断できるとはと素直に驚く。


「それで? 俺が神眼持ちだから仲良くなっとこうって? それともこれを殿下にでも報告する?」


「まあ、そういう魂胆がないとは言い切らないが、才ある人間と関係を結んでおくことは悪くない。それも友人という関係なら尚更ね」


「人のプライベートにズカズカ入ってくるような奴とお近付きになりたくないね!」


「それはすまなかったね。けど意図して敢えて言ったんだ」


「あん?」


「君の心境のほどは知らないけど、少なくとも欲しいんじゃないかと思って……」


 何が言いたいのか読めんと首を軽く傾げる。


「欲しいだろ? 人喰いの情報」


「!?」


 本当に食えない野郎だ。

 要するにはこれだけ情報通な自分ならば、互いに利用価値があるんじゃないかと、ヘイヴンはフェルトにプレゼンしているわけだ。


 ヘイヴンの場合は、フェルトはあくまで平民のちょっと腕が立つくらいの剣士だが、神眼があるとすれば、ちょっとの情報の先行投資くらいわけないってわけだ。

 必ずどこかで使えるカードとして、手元に持っておきたいようだ。


「お前さ、そんなんだから友達できねえんじゃねえの?」


「? 僕は君と友達になるために、僕の価値観を示しているだけさ。魅力のないものに、人は基本、興味ないだろ?」


 その言い分は正しいし、少なくともヘイヴンは本当に友達を作りたいだけなのかもしれないが、こんな情報の小出しのされ方をすると、警戒してしまう。


「君は僕にとって、好奇心の対象であるし、僕は君にとって、情報を得られる貴重な存在となる。貴族だからある程度、融通も効くよ」


「――そういう言い回しが胡散臭いんだよ!」


 こんな駆け引きみたいな友達作り、女の子には歯の浮くようなセリフとキザな仕草で気取り、そんな馬鹿な奴みたいかと思いきや、姫殿下に一目置かれたり、実はかなりの実力者なんじゃないかと、不審な点が多い。


 だが【識別】で判断したところ、特に変わったようなところはないんだよな。

 上級貴族の息子って以外。


「はあ……」


 だがヘイヴンの言う通り、フェルトは情報通な人間を求めていたのも事実だった。

 人喰いの情報は勿論だが、『大罪の神器』などの情報も取得できる人材は抑えておきたかった。

 その点を踏まえると、ヘイヴンは不自然なくらいマッチしている。


「ん〜〜〜〜」


「そんなに信用ならないかい?」


「ならん。ならんから悩んでる」


「ハッキリ言うね。でも、そういうのも嫌いじゃない。以前に素直じゃない蝶々ちゃんからも似たようなことを言われたけど、僕の瞳と彼女の瞳が見つめ合った時、信頼という絆が深まった!」


 ただ見られて恥ずかしかったか、そのウザさに面倒がってとりあえず認めただけじゃねえかと思ったが呑み込むことにした。


「前々から思ってたけどよ、お前は吟遊詩人にでもなるつもりか?」


 学校で見かける度に女を口説いては、何か思いつきもしないような言葉で褒め口説いていたように思う。


「世界中の蝶々ちゃん達の出逢いを求め、愛を囁き歌う詩人……悪くない!!」


「……悪くないじゃねえよ」


 言っておいて難だが、悪くないじゃねえよと素直にツッコんだ。


「……はあ。そうだな、わかった」


「フッ。お友達になって――」


「知り合いから始めよう」


「……僕ら、一応クラスメートだから知り合いのはずだが?」


「友達未満知り合い以上ってことで」


 胡散臭いし、正直あんまり友達でいてほしくないタイプなので、これくらいがいい距離感ではないかと判断。


「わかったよ。それじゃあ、よろしくね」


「おう。天国(ヘヴン)


「ヘヴン? 僕の名前はヘイヴンだが……」


「いや、女のケツばっか追いかけて、自分に酔ってそうなお馬鹿な頭してんだなってことで、頭花畑つーことで、天国みたいな奴ってことで、『ヘヴン』と呼ぶことにした。友達になりたいなら、あだ名はあった方がいいだろ?」


「……それは蔑称じゃないかい?」


「はは。その方が友達っぽいだろ?」


 すると負け時とヘイヴン改め、ヘヴンも言い返す。


「ならば僕からも愛を込めて『フレンド』と呼ばせてもらおうかな?」


「はは」


 一応、友達ではないからという名目だから、わざとらしく友達って呼ぶことにしたのね。


「良いんじゃねか。よろしくな、『ヘヴン』」


「こちらこそ。『フレンド』」


 フェルト達はそう言い交わして握手を交わした。

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