VSケイン 1
――約束の正午。フェルト達は学園の闘技場に訪れたのだが、そこに待ち受けていたのは、どこで嗅ぎつけたのか、客席にはたくさんの生徒達が来ていた。
聞こえてくる話の内容から、英雄の盃であるケインが来ることをわかっているものだった。
だがケインはとても慣れた様子で手を振ってのファンサービスに、
「「「「「――きゃああああっ!!!!」」」」」
女子生徒達も黄色い悲鳴で応える。
「おい、ガキ。お前、見世物にするつもりだったのか?」
「そんなわけないでしょ? 実力を見たいって言ったのはお宅のとこのリーダーさんでしょ?」
「そりゃそうだが、ここの学生共に噂を広めるなんて、お前以外に考えられないだろ?」
オルディバルも観に来ると言っていた手前、騒ぎにならないよう、配慮するはずであり、勿論、フェルト自身もその配慮はあった。
なのに広まっているということには、ひとりの人物がフェルトには浮かんでいた。
「やあ、フレンド! 今日はとても素晴らしい日だね!」
そう観客席から話しかけてきた容疑者ヘイヴン。
「やっぱりてめえか!! このおしゃべり情報屋!!」
「いやぁ……折角のエキシビジョンなんだからさ。観客がいた方が盛り上がるだろ?」
「くそっ……どこで嗅ぎつけやがった」
そう尋ねるがヘイヴンは知らぬ存ぜぬと言わんばかりの表情で逆撫でしてくる。
そんな苛立ちも募る中、肩を叩かれる。
「まあまあ。彼の言う通り、これだけ大きな会場に観客がいないのも寂しいものだ」
「あのなぁ。あくまで実力を測るものであって、見世物じゃないんだが?」
「それでもさ。少しは楽しくした方がいいって配慮じゃないかな?」
ケインはそう言ってヘイヴンに微笑むが、フェルトはそうは思わず、
「……ただ面白がってるだけだろ? ったく……」
この盛り上がりの状態に、この対決を元々知っており、見物に来たオルディバル達も驚く。
「これは秘密裏にやるつもりではなかったのか?」
「確かそのはずだったのですが、ケルベルト君に知られていたようで……」
キュリアはどこか楽しげに語るも、
「……本当に困ったものです」
「学生の情報拡散力はすごいねぇ」
エメローラとクレアはやれやれと表情を崩す。
そんなオルディバル達が見守る中、闘技場ではフェルトとケインが木剣を互いに手にする。
「それで? どういうルールで腕試しします?」
「そうだね。制限時間を設けての模擬試合とし、勝敗は戦闘の続行不可と認められる場合にしようか」
「意義なし。アンタもそれで実力判断でいいか?」
「ああ。問題ねえ」
そういうと邪魔になるだろうと判断したのか、闘技場広場からジャンプし、オルディバルの隣に着地した。
「失礼しますよ、陛下」
「ああ、構わんよ」
フェルト達が軽く柔軟し、準備している。
――その間にヘイヴンがライルに挨拶。
「英雄の盃であるライル様にお会いできるとは光栄です。リィル様もそうですが、やはり佇まいが違いますね」
「フン! お世辞はいい。お前のことも情報としては知ってる。あのガキの腰巾着なんだろ?」
「はは。腰巾着ですか。一応、友人とは思っているのですが……」
「中々認めてもらえてないんだよね?」
ヒョコっとそういうクレアにヘイヴンは苦笑いした。
「それはそうとこの試合、どちらに軍配が上がると思うかい?」
オルディバルのそれはライルとヘイヴンに訊ねるものだった。
だが、まずはとエメローラとクレアの見解。
「我々はフェルトさんのことはよく知っていますが、ケイン様のことはあまりよく知りません」
「実力は世界最強の剣士って呼ばれてますけど、ボク達は具体的な実力を見たことないからね。けど、そう言われるほどとなると、やっぱりケインって方のほうが強いのかな?」
それを聞いたライルは、
「当たり前だろ! あのガキがケインに勝てるわけねえだろ!」
ふたりからは対等に見られている発言におかんむりのようだった。
「ケインは間違いなく最強だ。確かに剣筋は我流だが、実戦経験のケタが違う。魔物相手は勿論、対人戦の経験も豊富だ」
するとケインのことを情報として知っているヘイヴンが補足する。
「……彼は元々は孤児で、幼い頃から冒険者として活動されていて、色んな冒険者から見聞きして学び、実戦で実力を磨いてこられたのでしたね」
「お、おう」
「そして孤児から冒険者になった経緯から、人との絆を大切にすることを早々に学ばれ、冒険に出る仲間達を必ず家族や仲間の元へ帰すためだと、奮起されるお方であるとも聞き及んでおります。その迷宮攻略や任務での生存率は他の冒険者とは比にならず、実力は折り紙付きでしょう」
「わ、わかってんじゃねえか」
オルディバル達も冒険者が過酷な仕事であることは勿論、知っており、特に迷宮攻略なんかは死人も出ることから、ケインの生存率には確かに目を見張るものがある。
「実際、ケイン様が英雄の盃とされているのは、その生存率や成功率の安定性からくる、圧倒的な解決能力からくるものでしょう。それだけ実力や観察眼、判断能力に優れた統率力の高い方なのでしょう。伊達に英雄の盃のリーダーは務めておられないでしょう」
「ああ、そうだ。俺だって一度だってケインに勝ったことがねえ。俺だって英雄の盃と呼ばれてはいるが、奴には勝てる自信がねえ。それほどだ……」
そう聞かされたオルディバルはちょっと心配した様子でフェルトを見る。
「ケイン殿の実力は英雄の盃という肩書きからもわかってはいたが、ヘイヴンの言う通りだとすると、フェルト・リーウェンは大丈夫だろうか」
ライルがハンと笑いながら、無理無理と言おうと手仕草を取ろうとした時、
「問題ないでしょう」
「!?」
「この状況であれば、フレンドが負けることはありませんよ」
ヘイヴンのその発言に驚いたライルが詰め寄る。
「おい! それはどういうことだ!? ケインがあんなガキに負けると!? お前、言ったよなぁ? ケインには十分な実力があるってよ! それなのに――」
「……確かに、フレンドも数多の死戦を潜り抜けてはきましたが、それでも実戦経験の差は歴然でしょう。とてもじゃありませんが、フレンドが勝てるほどではない」
「だろ!? だったら――」
「それを埋められるのが、彼の所持する神眼ですよ」
「!」
「「「……」」」
「僕はその相手を何度もしましたが……もう練習相手になりません」
ヘイヴンはもうお手上げだと、呆れたような仕草をとった。
「だから今回、ケイン様が相手して下さるのは有難い。フレンドの今の力量を測るには丁度良い相手です」
「丁度良いだと……!?」
「ご不満は承知の上です。ですが、論より証拠……この試合の行く末を共に見守ろうではありませんか」
――そうして一同が目をやる先には、その対峙するふたりと、とある生徒が駆け出してきた。
「あ、あの! 折角ですから、司会進行をしてもいいですか!?」
駆け出してきた女子生徒はそう語る。
ケインはニコリと微笑み、
「是非お願いするよ」
「は、はい!」
了承を得た女子生徒は魔石を取り出し、司会進行を開始する。
「それでは皆さん! これより英雄の盃リーダー、ケインと我らが国の英雄フェルト・リーウェンの試合を行います!!」
「「「「「――うおおおおっ!!!!」」」」」
会場は揺れ動くほどの歓声が響く。
ふたりの熱い戦いに期待が集まっているとわかる。
「それでは試合時間は十分とし決着は、武器の紛失や損傷からの戦闘続行不可と彼女が判断した場合としよう」
ちらりと女子生徒に眼差しを向けるケインに、女子生徒は頬を染めながら力強く頷いた。
「時間いっぱいまで戦えた場合、引き分けとする、か?」
「それで構わないだろう」
ケインは木剣を突き出す。
「いい試合にしよう」
どうやら試合の前の儀式らしい。
フェルトもその木剣に添えるように突き出す。
「ああ。よろしく頼むぜ」
そしてふたりは距離を取り、いよいよ試合が開始する。
すると女子生徒は鈴を取り出す。
「それでは試合の開始はこの鈴の音を鳴らしての開始とします。両者、準備はいいですか?」
「ああ」
「おう」
「それでは――」
女子生徒は掲げるように大きく手を挙げた。
「試合……開始っ!!」
チリンチリンと合図が鳴ったと同時に、ふたりの姿が消えた。
するとキインッと本来、木剣では鳴らない金属音が衝突する。
どうやらふたりの木剣同士の音のようで、互いに瞬動術で立ち位置が入れ替わるように、木剣を振っていた。
そしてケインは初手を防がれたことに、期待通りだと軽く微笑みながら振り返ると、
「!」
フェルトがとある魔石を軽く手の平の上に浮かせていた。
(あれは……術式が込められた魔石か……!)
ケインがそう思ったのも束の間、フェルトはそれを軽く砕くと、フェルトに何かしらの術が施される。
その隙は逃さないと、その刹那に再び瞬動術で迫るケイン。
だが――、
「!」
ケインの振った木剣を躱し、反撃を加える。
「――くっ!」
だがケインもその反撃に対処するように躱わすが、フェルトは追撃。
「これは……!」
フェルトはケインに距離を取らせないように、攻撃を繰り出し続け、ケインもそれに対応する。
その激しい攻防に生徒達と司会進行の女子生徒もテンションもヒートアップ。
「す、凄いデットヒート!! お互いに一歩も譲らない剣撃の応酬!! 誰もが英雄の盃であるケイン氏が勝つのではないかと予想したが、これほどまでの戦いになるとは、誰が予想したでしょう!!」
司会にも熱が入る中、それを見ていたライルは歯軋りを立て、ケインに叫ぶ。
「おい! ケイン!! 遊んでんじゃねえよ!! 真面目にやれ!!」
ライルはケインの実力ならば、簡単にケリが付くものだと思っていたが、ケインの軽くしか横目にライルのことを視認できないほど、フェルトの対応に終われている姿を見て、ライルは認めたくなさそうに表情を歪める。
「な、何なんだよ! あのガキ……!」
すると、
「あれがフレンドの実力ですよ」
「あん!?」
ライルはヘイヴンを睨むように振り返るが、驚いたのはライルだけではない。
「おい、ヘイヴン・ケルベルト。お前達の特訓の様子は授業中にも見ていたが、これほどなのか……?」
そうヘイヴンに質問するのは、オルディバルに丁寧にお辞儀をして現れたギルヴァートだった。
その質問にはオルディバルも同意見のようで、
「我々はフェルト・リーウェンの実力も知っているし、神眼の力も知っている。だが世界最強とまで言われる彼とあそこまでの試合をするものなのか……?」
実際、側から見れば、実力は拮抗しているように見える。
それは一同がふたりの戦いぶりを見ればわかることだった。
だがオルディバル達が知るフェルトの実力は、ケインと同じ英雄の盃であるキッドと互角以下という判断であり、ケインはキッドよりも上であることは、ライルも語っている。
ならば実力が拮抗しているように見えるのは不自然であると、みんな事情を知るであろうヘイヴンを見る。
そしてヘイヴンはそれに応えるように事情を語り始める。
「確かに陛下方のお考えの通り、フレンドの実力はケイン様に劣るものではあります。実際、距離を取らない戦い方をフレンドがしているのは、フレンド自身もそれをわかってのこと……」
実力が離れているもの同士である場合は、下手に距離を取るのは悪手であることを語り、
「それにフレンドはまだ十五の少年です。体格、体力差というのはどうしても出てきてしまうものです。かくいうわたくしもその点については理解しております」
「故に体力作りには励んでおるのだろ?」
「はい、殿下。それはフレンドも同じことです」
「でなければ彼には到底及ばないであろうからな」
するとライルが怒号を上げる。
「そんなことはわかってんだよ!! あのガキがそこはちゃんとしてるのは、ケインとの戦り合いを見りゃわかる。問題なのは――」
キッとライルはフェルトを睨み、指差す。
「あのガキが格上みたいな戦い方をしていることだよ!!」
その悔しそうなライルの意見に驚くクレアは、
「えっ? か、格上?」
「どういうことでしょう?」
エメローラが小首を傾げながら、ギルヴァートに尋ねる。
戦闘訓練をしているギルヴァートならとのことだった。
「……姫殿下。恐れながらわたくしもあれだけ高度な戦いを目視することは難しく、意見をすることは憚られるのですが、おそらくはフェルト・リーウェンはケイン殿の剣撃を紙一重で躱しているのではないですか?」
「それならば実力が拮抗しているということには……」
「なるんだよ。あのガキ……! ケインの振った木剣の下辺りをわざと狙って弾いてやがる。それはケインの剣撃を読み切ってるということと同義だ」
「え、えっと……」
剣の世界に詳しくないクレア達は更に首を傾げる。
それにヘイヴンが説明する。
「普段の撃ち合いというのは、お互いに剣を構えて振り、剣撃が飛んでくる。それはお分かりになりますよね?」
「え、ええ」
「つまりは殺陣というのは、互いに構えた剣からどのような剣撃を飛んでくるかの読み合いとなり、あのように瞬動術を行いながらであれば、より高度な読み合いになります」
「だ、だろうね。少なくともボクには無理だよ」
「はは。魔法使いであるクレア嬢にそのようなことは求めませんよ。……それでその高度な読み合いというこは、互いに視界に入る情報は勿論、性格や癖などを見抜き、剣撃を入れることになります」
「うむ。それでフェルト・リーウェンが格上の振る舞いをしているというのは……?」
「それは陛下もご存じなのでは? 神眼の力を……」
「むっ」
オルディバルは『大罪の神器』である『強欲の義眼』の能力を知っているため、想像は難しくなかった。
「あの見通す眼か。だがあれだけの戦闘の中、視認だけでは間に合わないだろう。ああいう手合いは反射と聞く。確かにフェルト・リーウェンは実戦経験もあるため、反射速度がないわけではないだろうが、神眼の力だけで、その差は埋められまい」
「ですから序盤で割った魔石の効果が発揮されるわけです」
「……思考加速の付与魔法だね」
ヘールポート大陸でそれを見たクレアはそう答え、ヘイヴンはニコリと微笑む。
「確かに視認してからでは遅く、反射速度もフレンドの方が劣るかもしれない。ですがそれは常時の場合の話。フレンドが持つ神眼は並の物ではなく、それを使い熟すフレンドも幼少期からそれは培ったもの。しかもフレンドは元々頭がキレるタイプですから、思考加速の魔法との相性も良いですからね」
「それは我々がよく知るところだ。伊達に国の英雄と噂されはしない」
「ええ。ですから鍛錬を繰り返せば繰り返すほど、その精度は増し、もう僕の攻撃なんて当たりもしない」
ヘイヴンも自身の実力に多少の自信はあったのだが、フェルトとの差を感じざるを得ないと、呆れた表情を浮かべた。
「……よく達人同士での戦闘の際、『止まって見える』などという、時間感覚の延長というものがあります」
「ああ。あるな」
覚えがあるとライルはさらっと答えるが、
「ですがフレンドはそんな領域にはいないんですよ」
「!?」
「フレンドは常に神眼での見通しを使い続けることで、情報を常に獲得し、それを思考加速で高速処理を行い、適切な行動を選択する」
「お、おい……」
「お相手の視線や呼吸、腕や足腰の身体の動きから筋肉の動き、その周りの風の動きまでを見通す。……フレンドは言っていました。相手の動きが手に取るようにわかると……」
「そ、そんな……」
驚愕する一同にヘイヴンはニコリと微笑み返答。
「それはもう……未来予知のような能力をフレンドは手に致しました」
「み、未来予知だと……!?」
「ええ。ですから世界最強と謳われているケイン様でもフレンドの攻撃に対応するのでやっとなのでしょう。何故なら世界最強の技であろうと――」
――ヒュ……ゴン!!
何かが吹き飛び、叩きつけられた音が聞こえ、ヘイヴンの話に夢中になっていたライル達は闘技場へ視線を向けた。
そこには――、
「なっ!? ケイン!!」
闘技場の壁に激突したケインの姿があった。
そして、その一瞬の様子を女子生徒が力説する。
「あ、あまりにも高速過ぎる戦闘ではありましたが、一瞬!! たった一瞬の隙をついたのかっ! フェルト・リーウェンの蹴り出しがケイン氏を直撃っ!!」
辺りが歓声を上げる中、ヘイヴンは言いかけていた言葉を語る。
「――読み切られては意味が無いのですよ」
「……っ!!」
「そのボロが丁度出ましたね。さすがのケイン様も全て読み切られ、対応札を切らされてしまったのでしょう」
「こ、これほどとは……!」
「陛下、そんなに驚かれることですか? 我々は『大罪の神器』の恐ろしさを骨の髄まで知っているはずですよ」
「そ、そうであったな」
『強欲の義眼』、『傲慢の左足』、『暴食の仮面』とそれの脅威と力を知るオルディバルは早々に納得し、
「ライル殿」
「は、はい……」
「お主達が相対しようというのは、あのフェルト・リーウェンが所持している神眼と同格のものだ。この試合はそれを知る機会としても良かったことだろう」
「くっ……」
「だからこそケイン殿は恐らく、この試合を持ちかけた。リィル殿が警告するその力を知ることを……」
ライルは悔しそうに表情を歪める。
ケインやリィルの言う通り、自分達ではどうにもならない力があることを。
「現にライル殿達が相対するのは、過去に我が国を滅ぼしかけるほどの力があった、【絶対服従】の力だ。幸い、我々にはフェルト・リーウェンがおり、使い手が傀儡だったために事なきを得たが、傀儡でも滅ぼしかけるほどだ。人間殺しと名の通るエヴリンの側近にそれがあるとすれば、それはあまりにも脅威だ」
何の話だとクレアは首を傾げるが、エメローラが踏み込むなと、首を横に振った。
「ライル殿はフェルト・リーウェンのことを子供と言ったが、我々はかの神物である仮面を付けた少女に多くの被害も受けた。もはやあの神物の使い手というのは、常識から外れているのだよ」
「……」
「ライル殿。貴方の意見は正しい。戦争が起こる前とはいえ、そんなところにフェルト・リーウェンのような年齢の少年を向かわせることが良くないことくらいはわかる。だがそんな良識すらあの神物の使い手は軽く蹴散らしていく。それほどの物なのだ」
ライルはオルディバルからの言葉と、自分でも敵わないケインに一撃を加え、かすり傷ひとつ負ってないフェルトを見て、納得せざるを得なかった。
話がひと段落ついたことをライルの表情から感じ取ったヘイヴンは、
「さて……ではここから英雄の盃ケインとしての真価を見せる時ですね」
「なに?」
「フレンドは未来予知に匹敵する能力を使用し、全てを読み切られてしまう相手。いくらまだ知性の低い魔物や少人数での対人戦でしかできないとはいえ、脅威でしかありません」
「ヘイヴン。フェルト・リーウェンの能力はまだ発展途上だと?」
「ええ、陛下。ですが、このような一対一であれば、基本、フレンドが読み違えない限り、ほぼ負けはあり得ませんが……」
「むう」
「だからこそ、英雄の盃として立つケイン様の真価がここで試されます」
ケインの積み重ねてきた努力と経験が『大罪の神器』に対しどう対応するのか、一同が固唾を飲んで見守る。
「さあ、見せて頂きましょう。英雄の盃ケインの力を……」