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大罪の神器  作者: Teko
幼少期編
14/177

06 強欲の義眼5

 

「話とは何だい?」


 ダマス神父の事件から数日後、午前の授業を終えたフェルトは、意を決して相談することとした。


「この神眼(しんがん)についてなんだけど……」


 だが、教会の中には出入り口でフェルトの帰りを待つ、ディーノ達の姿があった。


「おーい、フェルト。早く来いよ」


「悪い。今日は先生と大事な話があるからよ。先、帰っててくれないか?」


「おう」


 人払いが済むが、


「場所を変えようか?」


 神眼の話はあまり他人に聞かれない方が良いと、マルコ神父の自室へ向かった――。


「それで、話というのは?」


 切り出しておいてアレだが、正直、今でも言うかどうか悩んでいる。

 だが女神のことやあの神託自体が仕組まれたものだったとかは、話す気は毛頭ない。


 問題は『大罪の神器』だ。

 このことを話すことは、今まで良くしてもらったマルコ神父を巻き込むかたちとなる。

 『大罪の神器』の恐ろしさは、ダマス神父死亡(あの事件)と【識別】使用時に、嫌というほど思い知った。


 そして、これと同等の強さの物があと六つあるという事実は、関係者の命に関わる問題となる。

 だからといって一人で事を成せるほどの小さな事ではない。


 協力者は必要だ。

 出来れば、イミエル以外にも『大罪の神器』を知り、相談できる相手であれば助かる。


 今のところそれに抜擢できそうな人物が、マルコ神父だ。


 マルコ神父は、子供の話だろうがしっかりと聞いてくれるし、今までも親身になって対応してくれた。

 更に、剣の腕や魔法の技術もあるようで、戦闘能力も高いようだ。


 近いうちに過去を聞いてやろうと思ったくらいだ。


 何より共通の秘密を持ち、神眼のことを任されているマルコ神父に相談するのは、適任だと考える。

 でもやはり命を脅かされる可能性があると、どうしても踏み切れない。


「……大丈夫ですよ」


「!」


 フェルトがずっと言うことを躊躇(ためら)っていたのを悟ってか、穏やか笑顔でそう一言呟いた。


「その神眼の悩みは、他の人に中々相談しづらい案件でしょう。ですが、わたくしは必ず貴方の味方となることを約束しましょう」


 フェルトのことを全て見透かしたように、マルコ神父はそう答えた。

 全てを承知した上でケリングから任されていると、その言い澱む気持ちも汲んでいるよと諭されているように聞こえた。


 都合が良いのかもしれないが、これからのことも考えると、やはりこれは必要なことなのだと、今度こそ意を決する。


「先生。じ、実は――」


 フェルトは皆が神眼と呼ぶ『強欲の義眼(これ)』は神眼ではないことから語り出す――。




 ――全てを聞き終えたマルコ神父の表情は、真剣みを帯びたものとなっていた。

 すると片手で顔を覆った。


「まさか……こんなことが……」


 前世の記憶を持っていることは語らなかったため、あの義眼を受け取った際に、神託として『大罪の神器』を回収してほしいと頼まれたと語った。


 全ての内容に驚いたせいか、終始無言の空気が続いていた。


 無理もない。

 女神の神託、『大罪の神器』にその能力を語ったのだから。

 これでダマス神父が死亡した理由も、マルコ神父は知ったこととなる。


 しばらくしてマルコ神父は、ひと息呼吸を置き、いつもの落ち着いた表情へと戻り、微笑んだ。


「今まで気付いてあげられなくてすまなかったね」


「えっ!? い、いや……」


 気付かないことなんて当たり前だと思っていたから、思わずフェルトが動揺した。


「そんな重荷をその神眼……ではなく『大罪の神器』だったね。そんな使命を女神より賜っていたとは……」


「し、信じるの?」


 相談しておいてアレだが、すんなり信じられ過ぎだと思った。

 マルコ神父は確かに人が良いから、割と言ったことを信じると思うが、それでも女神の神託や『大罪の神器』など素直に信じるだろうか。


 しかし、マルコ神父はニコリと微笑んで答えた。


「貴方がわたくしに偽りを語る理由がありますか?」


「……ないね」


 悪戯にしては話の内容が細かいように思うだろうし、七歳児が大人に嘘をつくのは、悪戯がバレないようにしたりとか、甘えたい盛りでやることだろう。


 だが『大罪の神器』を実際に身につけているフェルトがそんな嘘を語れない人間だとわかっているのだ。

 先の件のこともあってのことだろう。


「それにわたくしはどうも人を疑うことはあまりしたくない性分でして……。とりあえず信じることにしているのですよ」


「どうして?」


「それはね。他人を信じられなかったら、自分も信じられなくなるからだよ」


 よくわからないと首を傾げる。


「以前も話したと思いますが、人とは支え合って生きていく生き物です。理性と知性を持つ人だからこそ、それは不可欠なこと。許すこと、頼ること、笑いこと、悲しむこと、怒ること、様々な他人と共有する感情は信頼が根底にあるのです。ですから、人を信じることは、人にとって切り離すことのできないことなのです。……なので、人を疑い続けると、孤独を生み、いずれは自分すらも信じられなくなります。……それはとても悲しいことではありませんか?」


 フェルトはそんな風に人を信じていけるだろうかと思ったが、結論は無理だと答えが出た。


 『強欲の義眼』のせいにはしたくないが、全てを見透せるこの眼は自分の得たくない情報まで得る。


 そして、この人とは価値観が違う。

 だけどそれは尊敬すべき価値観だった。


「だからダマス神父のことも?」


「……その件については本当に申し訳ありません。そうですね。たまにこうして裏切られると困ってしまいますね」


 もしかしたらこの人がここにいる理由もそこにあるのではないかと思った。


「自分にだけなら良いのですが、今回のようにあなた方にご迷惑をお掛けすることになりました。そこは猛省しなければなりませんね」


「……先生って昔、何やってたの?」


 今しかないと思った。

 マルコ神父は聖職者の割には何でもできるところがある。

 だから前職は違うのではないかと思った。


「わたくしも元は冒険者をしておりました。でもどうして今それを?」


 やはりと思う答えが返ってきたが、質問の意図が読めないと首を傾げられた。


「いや、人を信じることを貫く背景には何かあるのかなって……。俺はほら、【識別】って能力のことやダマス神父のことがあったから、どうしても先生みたいには考えられないなって……」


 フェルトだって、別に人を信じられないわけではない。

 父や母、ディーノ達や村の人達みんな信じられる。

 だけど、何かしらの亀裂が入るとその信じていたものですら、疑心的になってしまうのではないかと、嫌になる。


「そうですねぇ……。確かに冒険者をきっかけにそんな心情になったと言えば、否定はできませんね」


「何があって聖職者について、そんな心情になったの?」


「はは。そんな大層な理由はありませんよ。(むし)ろ、わたくしは逃げたからここにいるのです」


「逃げた?」


「ええ。わたくしの所属していたパーティー、わたくし以外、亡くなってしまいまして……」


 そう答えた表情は過去の話だと微笑んでいたが、本当なら思い出したくもないことだと、馬鹿でもわかる話だった。


「ご、ごめんなさい……」


「ああ、いえ。謝らなくてよいですよ。わたくしが勝手に言っただけですので……」


 すると聞いて欲しいのか、そのことについて語り始める。


「その仲間達はとある奇妙なエルフに焼き殺されたのです。一度見たら忘れることのできない不気味な仮面をつけたエルフに……」


 一度見たらなんて言うほど印象的な仮面ってどんなだろうと、思い浮かべてみる。

 ガスマスクやペストマスクなら、かなり印象的かもしれない。


「わたくしだけなんとか逃げ切り、助けと共に向かった後には遅く、その死骸を見た時、怒りや悲しみなどより虚しさだけが強く印象に残りました」


 マルコ神父のその心境を正しく理解できることはないだろう。

 だけど想像はつく。


 灼熱の炎の中、仲間達が焼け死んでいくさま。

 そこには焼かれた人の異臭と灰と白骨死体だけが転がるさまは、確かに虚しいだろう。


 だがそれだけ聞けば、人を信じない方向に行きそうだと思った。


「そしてわたくしは教会へ懺悔に向かい、言葉を頂きました。――その心を蝕む虚しさは、貴方がその人達を信じ、裏切ったことへの痛み。ですがその痛みは、貴方への罰であり、教えなのです。人を裏切ること、疑うということは、その刻まれた痛みを与える側になると知ることなのです、と……」


 さすがは聖職者とでも言えばいいのか、的確な部分を突いてくるとでも言いたい。


「だからわたくしは、信じてもその痛みが少なくなるよう、冒険者という職を離れ、わたくしのような人がひとりでも居なくなればと、神父となりました」


「そっか……」


 するとマルコ神父は、フェルトの頭を撫でた。


「だからたとえ、その力が貴方の信じる心に障害になったとしても、貴方を信じてくれる仲間やお友達が貴方を助けてくれることでしょう。信頼は信頼をもって返ってくる……。何も気負うことはありません」


 たとえ『強欲の義眼』の力による信頼やこの力によって確認した信頼であっても、自身を信じてくれるなら、フェルトはその信頼に応えるように行動するだろう。


 そこからきっと『強欲の義眼』では決して測ることのできない信頼が築けるはずだと信じて。


「だからわたくしは信じてくれた貴方に応えなくてはなりません。……話したからには何かあるのでしょう?」


 神眼ではなく、『大罪の神器』、『強欲の義眼』と語ったのは、何も心の拠り所を作るためだけではないはずだと、意図も簡単に見抜かれた。


「ああ、うん。実はさ、頭痛の原因なんだけど……」


「はい」


「あれはさっき話した【識別】っていうこの眼の能力のせいなんだ」


「ほう。確か、見たものの情報を取得できる能力でしたか?」


「うん。女神様からも説明は受けてたんだけど、これ、本当に見たものの全ての情報を細かく知れるみたいで、情報量が多すぎて、脳の処理が追いつかないみたいなんだよ」


「…………なるほど」


 やはり口説明だけでは難しいのだろう。

 椅子に深く座っての深い沈黙からのこの一言であった。


「それでさ、先生。俺はこの能力を使い熟したい。女神様に頼まれたのは、これと同じくらいの強さを持つ『大罪の神器』の回収だ。無理はしなくていいとは言われたが、ダマス神父みたいな件がまた起きないとも限らないし、『大罪の神器』の所有者、神器持ちが襲ってくるとも限らない。少しでも強くなるために、自分の持ってる武器は使い熟せるようにならなくちゃいけない」


「……そうですね。確かにこの力のことを聞いて、これからのフェルト少年のことを考えると、その『強欲の義眼』の能力をしっかりと使い熟せるようにならなければなりませんね」


 するとマルコ神父は、再び悩んだ表情を浮かべると、


「わかりました。一日、時間を頂けますか?」


 そう提案してきた。


「い、一日? ま、まあいいけど……」


 正直、一日で答えが出るとは考えにくかったが、マルコ神父の優秀さは知っている。

 それに元々、一日、二日でなんとかなる問題とも思っていない。


 そう言って今日は解散となった。


 その次の日――。


「対策がとれますよ」


「は?」


 本当に一日で答えを見つけたようで、さらっといつもの笑顔でそう口にされた。


「いや、でも……」


 マルコ神父は受け皿と透明のコップと水の入ったポットのような物を用意した。


「頭痛の原因、要するには――」


 マルコ神父はコップに水を注ぎ、コップが処理能力値、水が情報、記憶量、受け皿に(こぼ)れる水は頭痛の痛みの強弱だと仮定した。


「このように情報が急に大量に注ぎ込まれてしまい、溢れ出た分だけ、もう処理が追いつかないと警告の意味で頭痛がなるのですね?」


 コップにもう水が入り切らないとわかりつつも、説明のために、水は注がれ続ける。

 フェルトはその光景に、確かにそんな感じだったと頷いた。


【識別】を発動すると、見たものの細かな情報と要らない情報まで瞬時に入ってくる。

 しかも周りの景観やなんだったら空気まで読んでいた。


 まさか異世界に来てまで原子記号を過らせることになるとは思わなかった。


「でしたら答えは簡単です」


 そう言って取り出したのは、大きめのコップ。


「ひとつめは、その脳の処理能力の向上。魔法の中にはそのような付与魔法も存在します。これが一番理想的な解決方法ではあるのですが……」


 それはイミエルにも提言された方法。

 実際、八十年前の革命家も同じ手段を用いていたらしい。


 だがその手段は無理なのだと、マルコ神父の言い澱んだ言い方と表情でわかる。


「残念ながらフェルト少年は魔法の才能はあまりありませんし、そんな高度な付与魔法もそうそう使える人はいないでしょう」


「先生も無理なの?」


「お力になれず申し訳ない。わたくしは確かにどちらかといえば魔法の方が得意なのですが、そこまでの高度な付与魔法は……」


 それもイミエルから聞いていた話だったので、期待はしていなかった。

 天才と呼ばれる魔法使いくらいじゃないと、そんな思考速度の向上、脳の処理能力の向上なんて魔法は扱えないだろう。


 マルコ神父も優秀だが、そこまでの領域に達しているわけではないらしい。


「ですがご安心を。これがわたくしの考える本命……」


 コトっと水の入ったポットを置いた。


「情報量を減らせばよいのです」


「……」


 正直、それはフェルトも考えた。

 脳の処理に見合うだけの情報を取得すれば、頭痛や発熱なんて起きることはない。


 だけど【識別】を使ったからわかるが、見た瞬間にその個体の情報から身につけている服や見えている建物の情報まで、何もかもが入ってきた。


 つまり情報の選別ができないのが、この【識別】の厄介なところ。

 全てを強欲なまでに取得しようとする、意地の悪さを感じる。


「あの先生……?」


「はい?」


「先生はこの力を直に感じてないからわからないかもしれませんが、入ってくる情報量に制限が無いんです」


「わかっていますよ。昨日試しました」


「は?」


「わたくしは【鑑定】が使えるので、擬似的ではありますが、貴方が置かれている状況を目視しました」


「!」


 マルコ神父は【鑑定】を使い、擬似的に【識別】の能力を再現できないかと試したのだという。

 確かに【識別】は情報が目視ではなく、頭に直接流れ込んでくるが、【鑑定】はあくまで目視で自分の目でみて情報を取得する。


 おそらく自分の部屋にあるものの情報を【鑑定】したのだろう。

 その結果、どれだけの膨大な情報が入ってくるのか、目視で確認できたのだという。


「勿論、話を聞く感じでは【鑑定】の方が情報量は少ないでしょう。ですがそれでも、非常に膨大な情報がフェルト少年の頭の中に取得されたことを理解しました。所有者ではなく、触れたダマス神父が亡くなってしまった理由もそこにあるのでしょう」


 ダマス神父の死因は見た目だけならば、頭部破裂による即死。

 だがフェルトが目撃した感じでは、もう脳がやられていたのを確認できていた。


 実際、奇声を上げながら、脳が身体に与える命令が定まっていなかったのか、酷い痙攣(けいれん)やくねくねと身体を捻っていた。

 あれはもう、死んでいると判断できるだろう。


 フェルトが無事なのは所有者であることと、イミエルによって多少、緩和するようになっていたことであるが、それが無ければ、ダマス神父みたいに死ぬのかと思うと、ゾッとしない。


「フェルト少年は、必要のない情報まで取得していたのでしょう?」


「うん。ダマス神父の時、一瞬だけなら問題ないかと思ったけど、ダマス神父の性別、年齢、身長、体重、この身体が何をやったのかや人間の身体情報までバッチリ」


 だから最初に【識別】を使った時は地獄だった。

 クッキー、包み紙、箱、テーブル、家、両親、自分、空気まであらゆる情報がゴボッと入ってきたのだ。


 トラックに跳ね殺された過去を持つフェルトだが、正直、頭が割れるほどの痛みを味わい、死を予見したこっちの方が余程怖い印象を持った。


「でも問題はさ、その情報量をどう絞るかだよ」


 それさえわかれば苦労はしない。

 『強欲の義眼』は見たもの全ての情報をフェルトにお構いなしに詰め込んでくるのが問題なのだ。


「フェルト少年。貴方は何か勘違いをしている」


「はい?」


「その『強欲の義眼』も言うなれば物、道具です。その道具があまりに強過ぎるが故に、その道具に使われている状態なのです。道具である以上、使い方があるものなのです」


 どこかに取説でもあるって言いたいようだが、おそらくその取説を作った人間は、とうの昔にくたばっている。

 多分、取説なんて作ってもないだろう。


「先生。一応これ、人の怨霊が宿っていた道具だよ? 普通の道具ならまだしも、これは――」


「それですよ」


「!」


「……確かに『大罪の神器』、『強欲の義眼』はとてもただの道具という認識は難しいでしょう。何せ人間が材料になっている背景もありますから。ですがそれらを一旦取り省き、それを道具として意識立てしてみましょう。そうすれば正しい使い方が見えてくるはずです」


「正しい使い方……」


 確かにフェルトはこの能力の正しい使い方を考えたことはある。

【識別】という能力は忠告のこともあるからとか、【記憶の強奪】は人の人生を左右させてしまうものだからと。


 だがそれはその能力が強力過ぎるところが前提の話だけであった。

 道具の中には、自分を怪我させる物も多い。


 包丁のような刃物が一番わかりやすい。

 包丁やナイフは正しい使い方をすれば、料理や解体作業などに重宝されるが、間違った使い方をすれば他人も自分も傷付ける凶器に変わる。


 つまりマルコ神父の言いたいことは、その強力過ぎる能力にも包丁のような持ち方、使い方があるように、その能力にも制御の仕方が、高度な付与魔法など使用せずとも制御できるのだと言いたいのだ。


 だがわかっていれば答えは出ているはずで、


「先生、どう使えばいいか、わかる?」


 わからないので、答えが出ているであろうマルコ神父に問う。


「先程も言いましたが、『意識』です」


「意識……?」


「『強欲の義眼』の能力は、どちらも貴方の脳内の記憶中枢に干渉する能力です。つまり必ず脳に負担がかかる能力、逆に言えば脳の制御を貴方がちゃんとできていれば、『強欲の義眼』にわがままをさせることなどあり得なくなります」


 言われてみると【識別】も【記憶の強奪】も情報、つまりはフェルトの頭の中に入る能力。

 考え、意識さえ強く持っていれば、制御できるというマルコ神父の説には一理ある。


「脳には暗示されることによって、身体に与える影響や物事の意識が錯覚を起こすことはご存知ですか?」


「まあ。例えば髪の長い後ろ姿を確認して、女性だなって認識したかと思って確認すると、男性だったと驚いたり、色合いだけで甘そうと判断した果実が、実際渋かったりとかして驚いたり、とか?」


「まあ言うなれば思い込みですね。それによって感じ方が違うというように、自分の考えというのはそれだけ自分のことをコントロールできるということです」


「つまり先生は、その身体の一部となった『強欲の義眼』を俺の意識、考えでコントロールが効くって言いたいの?」


「ああ」


 思考速度の向上、脳の処理能力の向上という解決方法から考えると、確かにそれは正解だろう。


 だが問題となるのは、どう意識するかである。

 クッキーの情報を取得しようとした時、別に周りの情報は知りたいとは望んでいなかった。

 けど結局、取得し、酷い頭痛と発熱に襲われてしまった。


 もしかするとその恐怖心が周りの情報も取ってしまうと、無意識に意識してしまっているのだろうか。


 その解決策に悩んでいると、マルコ神父は受け皿、コップ、水の入ったポットを退かし、緑の液体の入った丸底フラスコを目の前に出した。

 おそらくはポーションだろう。


「大丈夫。ちゃんと解決策はありますよ」

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