04 ネフィとの会談前の出来事 4
「随分と物騒な義眼ですね」
「まあ、俺もそう思ったよ」
というか『大罪の神器』という時点である。
「さて、片方の能力はほとんどわかっておられるでしょうが説明しますね。ひとつめは【識別】という能力。目にしたモノを把握する能力ですね」
「所謂【鑑定】と変わりないわけだろ? 今までの『大罪の神器』に比べるとパッとしないな」
「いーや。全然違いますよ、ディアンさん」
「は?」
「【鑑定】の場合は、その術者が肉眼でその情報を得ますが、【識別】の場合は俺の頭に直接情報が入る。しかも正しい情報で、です」
一同は首を傾げる。
「その言い方だと【鑑定】では正しい情報が得られないみたいじゃないか」
「ええ。正しい情報として得られませんよ。何せ【鑑定】はその魔法を使った術者の目に映ったモノを術者の先入観から伝えられるものですから……」
「は、はあ……」
するとエメローラがとあることを思い出す。
「……! そうか! フェルトさんが以前、ファバルス王国で指摘されていたことはそれですか!?」
「そう!」
「どういうことだ、ローラ」
「ファバルス王国での事件の際、向こうの術者が行なった【鑑定】が先入観により、判別がズレていたことが指摘されたんです」
「ズレていた?」
「要するには【鑑定】はその術者の意識によって判別が変わるということです。その時、フェルトさんがされた例え話はポーションをテーブルの上に置き、【鑑定】するとどうなるかという例えを――」
エメローラは以前、ファバルス王国での事件の際にフェルトが説明した【鑑定】の盲点について語った。
「――ということです」
「な、なるほど……。つまりは【識別】にはその術者の先入観無く、情報を獲得できるというわけか」
「はい」
「なるほど。ですからフェルトさんはファバルス王国の事件も解決できたのですね」
「まあね。しかも『強欲の義眼』は長きに渡って負の念、つまりは人の思念を喰らい続けてきた。神格化までしたくらいだからな。その尋常じゃない量の思念から得られる情報は桁違いであり、その情報処理能力も比じゃない」
「だから【識別】で見ただけで、多様な情報を一瞬で得られると……」
「はい、陛下」
一同は【識別】の能力に絶句する中、ノーウィンがとんでもないことを口にする。
「つまり何? 私達のスリーサイズとかもわかるわけ?」
「「「「「!?」」」」」
それを聞いたオルディバルは机を叩く。
「フェルト・リーウェン!!」
「は、はい!?」
「い、如何に君がこの国の恩人とはいえ、ロ、ローラにそんなことをしようものなら――」
「しません、しません!! 確かに【識別】を使えばわかりますが、王族に喧嘩を売るような真似は致しません!! ノーウィンさんも何言うんですか!!」
「いや。男の子だし、するかなって」
おいおい……。
フェルトはそう呆れながらも、一度咳き込み、デメリットを口にする。
「そ、それに命懸けでそんなこともしませんよ」
「命懸けとは?」
「【識別】を使用すると死ぬんですよ」
「「「「「!?」」」」」
一同は当然のように驚き、フェルトを見た。
なら何故生きているんだと。
「そ、それは何故だ? 見た情報を得るだけに死の代償があるなど……」
「この【識別】は使用すると情報が勝手に入ってくると説明しませんでしたか? 【鑑定】のように見てではなく、直接頭に情報が入るんです」
「そ、それが何か……?」
「人間の脳の記憶処理には、記憶、保管、忘却という処理が行われるが、【識別】を使用した場合、それらの処理を無視し、勝手に保管されてしまうので、その際に脳に過度な負担をかけ、処理能力が追いつかず、熱暴走のような状態を起こし、脳が焼き切れて死ぬそうです」
「な、なるほど。ですがフェルトさんは現に生きておられます。どうやったというのです?」
フェルトは少し暗い表情をする。
「それを解決するために俺はマルコ神父に全て話したんだよ」
「!」
「あの人が俺がこうなった時に対応してくれた人だったし、子供の話であっても真面目に聞いてくれる人だったからな」
「なるほど。そういう経緯でマルコ神父様に『大罪の神器』について語っていたのですね」
「ああ。解決方法としては【鑑定】のように先入観を持たせられるように情報の精査を行えるように特訓したんだ。五年くらいかけてね」
「ご、五年……」
かけた月日に驚く一同に、フェルトは大したことはないと、へらっと語る。
「これでも早い方だと思うけどね。マルコ神父が中々スパルタだったのも功を来したんだろうぜ。実際、頭痛が嫌で頑張ってた背景もあったしな」
「頭痛ですか?」
「そ。幸い俺は、女神イミエルから【識別】での脳に与える負担は軽減される加護を受けてたからな。最初こそ頭痛でぶっ倒れもしたが、途中からは床に転がり回るくらいまで慣れ、最終的には使いこなせるようになったしな」
「な、中々逞しい特訓をされたのですね」
「まあね」
お陰様でとフェルトは懐かしむも、次の能力についても語る。
「ま、ふたつめの能力はそんなことなかったけどな。【識別】よりも強力なクセにデメリットがほぼ無いときた……」
「そ、そうなのですか?」
「そ。ふたつめは【記憶の強奪】って能力。効果は読んで字の如く、記憶を奪う能力だ」
「「「「「……」」」」」
一同はもう何度目の絶句かもわからないくらいに黙るも、強力な能力だと感心する。
「き、【記憶の強奪】か……。それはまた極めて恐ろしい能力だ」
「しかも能力はほぼ【識別】と変わらず、その対象者を視認すればオッケーっていうお手頃能力」
「「「「「……」」」」」
また絶句。
当然である。
フェルトもイミエルに聞いた時には驚きを隠せなかった。
「俺達からすれば喉から手が出るほど欲しい能力だな」
「そうね。諜報をする際に大活躍間違いなしだわ」
「であろうな。何せ相手の記憶を奪い、情報を得ることができるのだからな」
「それだけではありませんよ、陛下。記憶を奪うということは、その対象者からはその記憶が消えるということ」
「!?」
「得るだけではなく、相手を一方的に不利にできる能力というわけです。情報がモノを言うのはおわかりでしょう?」
「う、うむ」
ディアンの解釈に息を呑むオルディバルだが、フェルトの補足に一同は更に驚くことになる。
「それだけではありませんよ」
「なに?」
「記憶を奪えるということはつまり、覚えていたことを忘れるということ。オッケー?」
「あ、ああ。だからさっきからそう言って――」
「本当に理解しているつもりなら危機感が足りませんね。俺は見ただけで記憶を奪う、つまりは聖都のような植物状態の人間を量産できるということですよ」
「「「「「!?」」」」」
「記憶とは人間が人格を形成するために必要な欠片です。それが奪われるというのは、人格の崩壊を招く。違いますか?」
「そ、そうだな」
「更に言えば、記憶には種類が存在し、主だってはふたつの種類が存在する。説明が長くなるので一部割愛しますが、人間の動作も記憶によるものであるということ、意識されてますか?」
「な、なに……?」
一同はその話の筋が見えないと困惑する。
「心臓が動いたりするような勝手に行われる動作は記憶を奪っても意味はありませんが……アンジュさん」
「は、はい!」
「歩くことは自然にできることですか?」
「え、えっと……できます!」
フェルトは思わずコケる。
「な、何で?」
「だ、だって、歩くのは当たり前にできることじゃないですか!」
フェルトはやれやれと頭をかいた。
「じゃあアンジュさんは母親の腹の中から出て来た時から既に歩けたと?」
「そ、そんなわけはありません! 足腰が発達してないから無理ですよ」
「でしょ? なら赤ちゃんはどうやったら歩くことができるんです?」
するとエメローラがフェルトの質問の意図を口にする。
「なるほど。赤ん坊は周りの大人達を見て歩行方法を『記憶』する。つまりは……自然にではないため、【記憶の強奪】の対象内となる」
「「「「「!?」」」」」
「そのとおーり」
フェルトはエメローラの答えに指パッチン。
「つまり俺は見ただけでその人間だけじゃなく、生物自体の動作まで奪うことができる。立つ、歩く、走る、泳ぐ、戦う方法まで、全てね」
ここでフェルトが制圧できる理由に納得する一同。
「なるほどな。フェルト君がここにいる全員を相手にできる理由はそこか」
「はい。俺は見ただけでここにいる全員を歩けなくできる。動けなくなった相手に遅れを取るとでも?」
「確かにね。初見でそれをされたら私達も動揺し、対応もできないでしょうね」
「し、知った今でも対応できるかどうか……」
「う、うむ……」
ディアン隊の一同が絶望したようにそう意見を交わした。
するとエメローラが疑問を抱く。
「お聞きしたいことがあるのですが……」
「なに? 姫殿下」
「では何故、今まで使わなかったのです? 少なくともあの殺人鬼シギィを相手取った時、それを使えば有利だったはず……」
するとフェルトはあっさりと、
「は? ちゃんと使ってましたよ」
「えっ?」
「それこそあの飛空艇の時、アーディルにね」
「!?」
エメローラはその場にいたためか、信じられないと言いたげだったが、
「不思議に思いませんでしたか? 俺が迷いもなくアーディルの自室まで行けたことに……」
「た、確かに……! ま、まさか、【記憶の強奪】を使っていたから!?」
「そう。だから俺はわざとあの女を怒らせたんだよ。その記憶が奪われたことを悟らせないためにね」
「!?」
状況を理解できていないエメローラ以外の一同はポカンと置いてけぼりにされるも、
「記憶を奪われたことを悟らせないとは?」
そこの真意を尋ねる。
「そこの記憶だけを奪われた場合、その当人に違和感が生まれます。そうなれば、記憶を奪える人間がいると悟られるでしょ? それは俺にとっては都合が悪い」
「な、なるほど。『大罪の神器』のことを隠したいフェルトさんとしてはこれほどにない不都合なこと。ブラックギルドであるアーディルやシギィをはじめとするわたくしやケルベルトさんも居られましたからね……」
「まあね。だからと言ってアーディルはあの時、脱出方法は無いと口にしていた。使うしかなかったんだよね」
「それで使ったことがバレないよう、わざと彼女を怒らせ、わたくし達にもアーディル本人にもバレないようにしたと……」
「ええ。自室の記憶を奪ったくらいじゃ、性格は変わりませんから、表層上、問題もない。結果論にはなりますが、その飛空艇も爆破されましたからね。覚えていようがいまいが関係ない」
「なるほど。ではシギィの時には何故使用していなかったのですか? 彼の場合は身体的な動作の記憶を奪えば……」
フェルトは少し不機嫌そうな表情に変わる。
「使おうとしましたよ。あんなイカれ野郎、手足くらい動けなくしてやろうと思ってましたよ。あんなに強かったんだから……」
「では何故?」
「あの男……戦闘センスがずば抜けてるせいか、俺が【記憶の強奪】を使用しようとしたのが、感覚的にわかったらしい……」
「なるほど。殺気というか、悪寒でも走ったのかしら?」
「ノーウィンさんの言う通りかもしれませんね。そのあたりを敏感に気取られて、俺の視界に囚われないように動いてましたからね」
エメローラはフェルトとシギィの戦闘を思い返し、そう言われてみればと納得した。
「つまりは視界に囚われなければ問題ないと?」
「まあそうなりますが……できます? ノーウィンさん?」
「……」
ノーウィンもまた悔しそうにあたりを見渡す。
この部屋でフェルトの視界から逃げることは極めて困惑であった。
更にエメローラは【記憶の強奪】から逃れるのが厳しいことを補足する。
「更に言わせてもらうと、わたくしは彼が【識別】も【記憶の強奪】も使用した感覚がわかりませんでした。これらを発動する際のアクションはおそらくないのでしょう……」
そう言われながらフェルトを見たエメローラ。
フェルトはこくりと頷く。
「つまり視界に映っている限り、わたくし達に逃れる術はなく、フェルトさんに命を握られているようなものです」
「「「「「……」」」」」
一同は青ざめて絶望するも、フェルトがへらっと、
「俺、味方で良かったでしょ?」
「「「「「……」」」」」
味方であったとしても、末恐ろしいと一同の視線を集めた。
すると、大臣がとあることを尋ねる。
「そ、それだけの恐ろしい能力だ、使うための代償も大きいのだろう!?」
「!」
「た、確かに! それほどまでに凄まじい力だ、使用回数の制限やあるいは大量の魔力の消費など……」
フェルトは少し呆れたため息を吐いた。
『大罪の神器』という衝撃的な情報に最近のことが抜け落ちていると。
フェルトは丁度いいと話を『大罪の神器』の共通の特性について語り始める。
「残念だけど能力の使用は無制限。しかも本人に対する代償も、『暴食の仮面』や『強欲の義眼』のような使用の際のデメリットを除けば、エネルギーの消費は無い」
「「「「「!?」」」」」
「な、なんだと!?」
あまりの驚愕の内容にオルディバルは頭を抱える始末。
「陛下方、思い出して下さいよ。じゃあ何故、ラフィがあんなに【絶対服従】を乱発できたんです? 俺に向かってどれだけ命令していたと?」
「た、確かにそうだが……。そ、そんな馬鹿な……!? それほどの力……魔法であればどれだけの……」
「あー……勘違いしないで下さいね。別にエネルギーの消費がされてないわけじゃありません」
「な、なに?」
「それがただ、神器持ちから消費されないだけです」
「なに?」
「よーく思い出して下さいよ。『大罪の神器』はどうやって神格化したんです?」
ディアンが手を叩く。
「そうか!! 負の念か!!」
「その通り。『大罪の神器』は負の念、エネルギーを使用し、その能力を発揮する。その負の念は生物が常に吐き出しているもの。イミエル曰く、生物が絶滅でもしない限り、『大罪の神器』の能力が使えなくなることはないそうですよ」
「で、では君はいつでも情報を得ることができ、記憶も奪えると?」
フェルトはこくりと頷いた。
「「「「「……」」」」」
「せっかく話題に上がったことなので、このまま『大罪の神器』の共通の特性について話しますね」
「わ、わかった……」
お腹がいっぱいそうだが、喋れと言われた手前、下手なところで情報は止められない。
我慢して聞いてもらおう。
「先ず、『大罪の神器』には選定がある」
「……それは何となくわかります。神父が奇妙な亡くなり方をしたとアスベルが話していましたからね」
「ええ。選定が行われ、不適合だった場合、死にます。ですからそこの『暴食の仮面』に直に触れないことをおすすめします」
思わず近くにいたオルディバルと手袋をしていたとはいえ、触れた大臣は距離を取った。
「な、なるほどな……。良かったな、大臣。直に触れてなくて……」
「え、ええ……」
「なるほど。フェルトさんが『傲慢の左足』を奪われても平然とした態度なのはそういう理由ですか」
「ええ。『傲慢の左足』の選定がある以上、奪った死の芸術家共も簡単には適合者を探せない」
「自滅してくれれば御の字か」
フェルトはふるふると首を横に振る。
「いえ、陛下。あの場にはリグレット・ハーマインがいたのでしょう? ならアスベルの話も聞いていたはず。安易に自分達に付けるような真似はしないでしょう。それに付けるにしても足を切り落とす代償もありますからね」
「そ、そうであったな」
「とはいえ、奴らは殺人ギルド。やる時はやりそうですがね」
「う、うむ」
「フェルトさん。その選定の基準は?」
フェルトはお手上げポーズで答える。
「さあ? 俺は女神様に選定されてたからさっぱり。イミエルも知らんって言ってましたからね」
「は、はあ……」
「まあ存外、俺がラフィに言ったことも当たっているかもしれませんよ。人間のことを道具だと思って選定したとか」
「な、なるほど」
『傲慢の左足』が使わなさそうな神父を殺し、ラフィが身につけられたことを考えると、割と筋が通っていると納得できた。
「ま、そこは『大罪の神器』によってまちまちだと思いますがね」
「ですかね。大罪の名を冠しているところを考えても、選定の基準はわかりませんからね」
「さて次はその選定に関係ある話。神器持ちは複数の『大罪の神器』の所有が可能であり、その選定は無視される」
「な、なんだと!?」
オルディバルは息を呑みながら確認を取る。
「つ、つまり仮に君が『傲慢の左足』を手に入れた場合、全てを見通し、記憶を奪い、更には【絶対服従】させることができると?」
「まあそうなりますね」
「「「「「……」」」」」
もう驚き疲れたと、一同に疲れが見え始める。
「最早そこまでいくと、国のひとつやふたつ、容易く絶滅させられるだろうな」
「女神様が回収を依頼するのも納得です」
「そしてこれもお気付きだと思いますが、神器持ちは『大罪の神器』の能力を受けません」
「でしょうね。ラフィの【絶対服従】を受けなかったのはその特性の影響でしょうね」
フェルトは人差し指を立てる。
「ただし! それはあくまで神器持ちを対象とする能力だけで、関節的なものは受けます」
「なに?」
「例を挙げるなら、『暴食の仮面』の【暴食】が該当します。アレは人を対象には取ってませんからね」
オルディバルは首を傾げる。
「ど、どういうことだ? 人に向けて使っていたではないか?」
「お父様。多分、そういうことではありません。フェルトさんの『強欲の義眼』のような対象者を相手取る能力のみに該当するんですよ。【暴食】はあくまで空間を食い尽くしているだけで、フェルトさん、神器持ちを対象に取ってはいません」
「そ、そうなのか?」
オルディバルの疑問にフェルトはこくり。
「さすがですね、姫殿下。仰る通りです。だから俺は【絶対服従】は受けず、【暴食】は躱してたんですよ」
「い、言われてみれば、そのように対応していたなぁ」
「ではフェルト・リーウェン! お前はどうやってラフィ・リムーベルが『大罪の神器』を持っていると判断できたのだ? あの闘技場での話を踏まえると、辻褄が合わないではないか」
その大臣の質問にフェルトは、
「受けないからわかったんですよ」
「な、なに?」
するとユナがポンとわかったと手仕草を取る。
「【識別】は『大罪の神器』を持つモノ以外の情報を読み取れるなら、読み取れないモノは『大罪の神器』と確定できるということですね」
「おおっ」
「その通りです。だから俺はラフィが『傲慢の左足』を持っていることを前提に動くことができたんです。能力自体はイミエルから聞いてましたからね」
「あの事件の解明の裏にはそんな事情があったのか……」
「ですから『大罪の神器』の情報や対応に関しては、俺に報告して下さいってのは、そういうことです」
「能力を受けないというなら、確かに君に任せるのが正解か……」
オルディバルは少し落ち込んだようにそう話した。
本来、『大罪の神器』に対応できるかどうかの情報を得るためのお話のはず。
『大罪の神器』の強力な力とその特性上、フェルトに対応を任せる他ないのが目に映るようなのだろう。
そしてフェルトは少し悲しげな表情を浮かべる。
「そしてこれは言っておかないとな。『大罪の神器』を外す方法だが、その神器持ちが死ななければ外れない」
「「「「「!?」」」」」
一同、気落ちする。
特にアンジュの失落が酷かった。
「そ、そんな……! では、メリーさんは……」
「ええ、残念ですが、この仮面を付けた時点で、外す方法は彼女を殺す以外の選択はなかったんです」
「……っ!」
「なんということだ……」
一同が失墜する中、フェルトは特性の続きを様子を見ながら、そろっと語る。
「ちなみにその箇所の『大罪の神器』を切り落とされたりしても、死んでない限りは自動的に戻るそうだ」
「自動的にか」
「ええ」
一同の動揺が収まりそうな中、フェルトはひとしきり喋り終えたと、質問を受け付ける。
「これで大体喋ったはずですが、何か質問は?」
重苦しい空気の中、エメローラは少しずつでも空気を良くするよう、質問で払い除けることにした。
「残りの『大罪の神器』についての情報は無いのですか?」
「今のところは何も。判明してないのは、怠惰、色欲、嫉妬、憤怒の四種類ですね」
「フェルト・リーウェン……」
オルディバルがそろっと手を上げながら尋ねる。
「何ですか? 陛下」
「ここまで『大罪の神器』の話を聞いたが、正直、想像を遥かに超えていた。そこで君に尋ねたい。我々が『大罪の神器』を対策するにあたって、最善策はなんだと思う?」
「うーん……。やっぱり俺に知らせてもらうことですかね。陛下方が『大罪の神器』に対応ができないのは、ラフィの時にわかっていることでしょう」
「や、やはりそうなるか……」
あの無能と吐き捨てられたラフィの時ですら、振り回されていたのだ、フェルトのような使い手がいる可能性も考慮すると、どうしても落ち込まずには居られなかった。
そしてやり切れない思いのアンジュが手を上げる。
「どうしました? アンジュさん」
「……どうして教えてくれなかったんです?」
「はい?」
「どうして! 彼女が助かる方法を教えてくれなかったんです!? たとえそれが……」
アンジュのやり切れない気持ちも理解できるフェルト。
だからこそ、突きつけるべきだとフェルトはこう言い放つ。
「言えば殺せましたか?」
「!」
「俺の言葉を信じ、彼女を助けるためだと思って、ちゃんと命を奪うことができましたか?」
「そ、それは……」
「……アンジュさん、あんた……優しすぎるよ」
フェルトは『大罪の神器』のことを知っていたからこそ、奪う覚悟はあった。
本来であれば、騎士であるアンジュも国のためならばと奪う命もあるだろう。
だがメリーのことに関しては事情も事情なだけあって、心苦しい気持ちもわからないではない。
だがそれでも国を守るものとして、フェルトの質問に『はい』と答えられないのは、騎士としては失格なのだろう。
ただ……、
「だが、アンタはそのままでいて欲しいな。優しすぎるままでさ」
「……すみません」
だが人としては正しい考えなのだろうと、アンジュを尊重した。




