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影と太陽とカグツチ 上

 

 炎は、燃やすものがないと燃えられない。人間が太古から、共存し、恐れてきた炎もまた不完全な存在に過ぎない。そう、人がいないと生きれない私達神のように。・・・私は、炎の神。故に贄を欲す。生きるために燃やす。しかし燃やすのが人ならば誰が私を信じようか。人を殺す神が、人に信じられることなど有りはしない。・・・私は、静かに。・・・燃え尽きる・・・。


「俺になら、その炎を燃やし続けられる。・・・悲しい顔すんなよ神様。俺があんたを信じてやるからさ」


 炎は再び蘇る。信じてみようか灰の子を。



ーーーーーー



 月明かりもビル街のネオンも届かない街の裏路地。世界と隔絶かくぜつされたような漆黒の空間で、異形の姿の化け物と俺 九条裕也は対峙していた。

 俺の仕事は、目の前の異形『狂神』を殺すこと。闇に潜み、人々を食らう狂神。それを闇に溶け込み殺す。人々に気付かれないように、さとられないように・・・。


「言ってもわからないだろうけど、お前を片付けたら非番なんだ。だから、ちゃちゃっと片付けさせてもらうぜ」


 俺は、警戒態勢の狂神に向かってククリナイフを向けて言う。ガルル、とうめきながら犬のような姿の狂神は背中から、バッタのような足を生やし壁に突き刺した。

 勢いをつけて一気に突っ込んでくる気か。いいぜ、返り討ちにしてやる。

 狂神は、予想通りバッタの足で一気に踏み込んで突っ込んできた。その瞬間・・・


「ちょーーーーーーーとッ!!!!まぁーーーーーーったーーーーーー!!」


 ズドーーーーーンッ


 俺と、狂神の間に謎の姿が!

 赤いマントを翻し、その場に立っていたのは、まるでテレビ番組のヒーローのような風貌の男だった。漆黒の空間がヒーローのような風貌の男を中心に照らされる。狂神も光に目をくらませていた。


「安心しろ!少年ッ!私が来たからにはもう大丈夫。君の命の安全は確約された!俺を!信じろッ!」


 な、何だこの変態は!?ただの勘違いオタク?いや違うこいつの体から少しだが神の力を感じる。こいつの体が光っているのが一番の証拠だろう。つまり、こいつは本当に俺を助けに来た?

 こいつ、俺の力。神殺しの刃のちからに気づいてないのか!?気づいていたら俺を助けに来るだろうか?ここは、俺の正体は隠しておこう。俺と敵対されても面倒だ。・・・あまり、強くなさそうだが・・・まぁ、でも、カッコつけて出てきたみたいだし・・・あまり、期待せずにいよう。


 ビック


 ビック?どうしたのだろうか?変態の様子がおかしい。体を震わせながら、振り向き俺に向かって・・・


「も、もしかして。俺、期待されてない?」


 コクリ


 俺は、静かにうなずく。次の瞬間、変態はフラフラと体を揺らし・・・バタンッ。その場に倒れ込んだ!?


「な!?なんでだーーーーーーーーーーーーーー!」



 俺は、その場に倒れた変態をかばいつつ、すぐに狂神を始末した。その場に倒れた変態は変身?が溶けたようで。人の姿に戻っていた。

 性別は男、歳は17〜8歳といったところか。こんな路地裏に転がしておくのも不憫だな。決して瀕死ではない、ただ内包するエネルギーがほぼ0だ。端的に言えば、栄養不足だな。だが、体つきは標準以上、筋肉もなかなかついている。こんな男が栄養不足で倒れることがあるのか?・・・まぁ、考えても無駄だな路地から出て救急車でも呼んで、俺は帰るか。


「あ、はい。〇〇町の〇〇道りです。栄養失調でぶっ倒れたみたいで。・・・はい・・・はいお願いします」


 これで、いいだろう。時間は深夜2時をまわり街の明かりも街灯のみとなっていた。

 俺だけだったら、0時前には終わってた。足手まといは勘弁してほしいいな。まぁでもこれで仕事終わり!帰って寝よー。

 俺は、道端に男を寝かせ、路地裏に門を開いてそれをくぐった。


ーーーーーー


「ただいま〜」

「お〜、おかえり〜。お前もなかなか仕事が早くなったんじゃないか?」


 門をくぐり、さっきまでのビル街からは一転、大きな草原や、湖、山々が立ち並ぶ、現代とはかけ離れた異世界、神の国の自宅に帰宅した俺を、親父がパンイチで出迎える。


「いいから、服きろや」

「風呂上がりなんだよ、自分家なんだから自由にさせろつーの」


 こんなんでも、親父は神殺しの刃フェンリルその人だったりする。


「今日は変態に絡まれた。本当だったらもっと早く終わって帰ってこれたんだけど」

「変態?・・・あぁ、そうだ。明日なんだけどなちょっとここにお客が来るんだ。だから、明日一日外に出ててくんねえか」

「はぁ〜、俺明日非番なんだけど!家でゆっくりしたいんだけど!」

「まぁ、そう言うなや。お前も年頃の男なんだ人間界にでも繰り出して、遊んでこいよ」

「遊ぶつったってどこにも行く場所なんて・・・」

「女の一人や二人つかまえてみろよ、世界変わるぜ〜」

「三度目の世界観の変化に脳がついてこれるか不安なんだが!」

「いいから、明日は在宅禁止!少し、息抜きしてこいよ」

「ん〜〜〜〜」


 相変わらず強引なんだよな親父は。でも、最近仕事詰めだった俺のことを思って息抜きを勧めてくれてるんだろう。優しいっちゃ優しいんだけどな。

 というわけで、俺は休日を人間界でブラブラすることとなった。

 暇、どこで潰そうかな。


ーーーーーー


 暖かな、陽光に照らされる昼前のまちなか。感覚が来るって曜日感覚など皆無だったがどうやら今日は世間的には日曜日らしい。どうりで、昼間なのに人道りが多いと思った。そんな人混みをフラフラと歩いているときだった、一軒の服屋の前を通りかかったとき、店内からどこかで聞いたことのあるような透き通った声が、聞こえてきた。


「ここから〜〜〜〜〜〜ここまで全部くださ〜〜い!!」

「お買い上げ誠にありがとうございます、お値段24万円になります」

「カードの一括で」

「かしこまりました」


 この、声は確か・・・。

 俺は、そんな豪快な買い物をするのはどんなやつなのか気になった。いや、もしや久しぶりに彼女に会えるのではないかと言う少しの期待で店を覗き込んでいた。そこには、肩くらいの金髪を揺らす少女の姿があった。


「サデーニャ?」


 思わず、口に出てしまった彼女の名前に反応し店内の少女が振り向き、目をキラキラ點せながら駆け寄ってくる。


「くじょ〜、久しぶりね!元気してた?」


 そう微笑むサデーニャは、可愛かった。守りたいこの笑顔!俺の初恋の人だ。彼女には伝えていないが。


「ああ、久しぶりだなサデーニャ。君こそ元気そうで何よりだ」

「えへへ、久しぶりで少し興奮しちゃったわ。・・・それにしても、その服・・・」


 彼女は俺の服装に目を凝らしていた。俺は今日黒い無字のTシャツに半袖の上着、そして紺のジーパンといった格好だった決しておしゃれではないが、ださくもない。はずだ。


「似合ってるわね!」

「あ、ありがとう。君こそ今日はこの前よりもずっと可愛いよ」

「えへへ、ありがと。・・・あ、そうだ!」


 彼女は、ぽんと手を叩くとなにかを思い出したかのように俺の手を握り言った。


「デート!しましょ!」

「へ!?」

「も〜、クジョーから言い出したのよ。次あったときはデートしようって」


 は〜、そんなことも言った気がする。・・・俺はなんて恥ずかしいことを!!!今からでもいい、死にたい死んであの日に戻りたい〜〜〜〜〜〜。だって、会って数時間の相手にいきなりデートとかっ!デートとかっ!ただの節操なしだよ!でも・・・


「そうだったな。でも、今からどこに行くんだ」

「その点は私に任せて!行きたいところがあったの!」


 そう言うと彼女は俺の手を引いて走り出した。

 この流れは、全然い!むしろ最高だ!


「お、お客様!?お品物〜」

「はッ!楽しみ過ぎて忘れてたわ!」


 か、可愛い!そんなドジっ子のところも可愛い!

 彼女は、商品を受け取ると、少し顔を赤らめながら小さく、「いこっか」とつぶやくと俺の前を歩き出した。少し、恥ずかしかったのだろう。前に一緒に戦ったときには見られなかったサデーニャの新たな一面が見れている気がしてちょっと微笑ましかった。


 少し歩いたあと、俺はサデーニャに聞いた。


「割と、金の使い方荒いんだな」

「まぁね、でもきっかけはクジョー貴方よ。あの夜、貴方に言われたことを少し考えてみたの、そしてじぶんなりに考えて一つの結論、私の生き方を決めたの。・・・死ぬとき絶対後悔しない生き方。自分に正直な生き方をしようってね。幸い、生涯独り身だったお父様の多額の財産があったし。前までは、自分が手を付けちゃいけないような気がしていたけど、お父様が私のために残してくれたものだし。使わないのは罰当たりでしょ」


 そうか、彼女も乗り越えることができたんだな。自分の生きる意味を探し続けるという虚無の地獄から抜け出すことができたんだ。俺の言葉が少しでも彼女の助けになってくれたんならそれでいい。

 多くの商店が並ぶ商店街を抜けて、車が行き交う大通りに出るとすぐにサデーニャが近くに止めてあった車に駆け寄った。黒塗りで車高は低め、いかにも高級車って感じの車。それに乗るように手招きされた。


「ただいま〜、アル。車出して頂戴」


 手招きされるまま車の後部座席に彼女と並ぶように乗り込んだ。


「どこにしましょうかッ!?な、ななななな!なんですかその男は!」


 運転手は、バックミラー越しに俺を視認するとものすごく驚き、後部座席に身を乗り出してきた。

 な、何だよ。確かに初対面の男が自分の車に乗ってきたら驚くだろうけど、そこまでか?睨むなよ、怖いじゃん。

 そんな運転手にサデーニャが俺の紹介をしてくれた。


「アル、この人が九条裕也。前にも話したでしょ、私を助けてくれた命の恩人よ」

「こ、この人があのお嬢様と肩を並べて狂神を屠ったという」

「肩を並べたなんて、彼のほうが私よりも数倍は強いわ」

「お嬢様より、強い・・・」


 アルと呼ばれた運転手が俺を上から下まで俺をなめるように見てくる。

 やめろやめろ気持ち悪いな。


「とてもそうは、見えませんが?」


 失礼な、これでもかなり鍛えているんだぞ。ムキムキってほどではないが・・・。


「ははは、たしかにそうかもね。でも、実力は確かよ。私を、信用なさい」

「はぁー。わかりました。で、どこに向かうんですかお嬢様?」

「近くに、大きなショッピングモールがあるでしょ。あそこ!私、複合商業施設っていうの?そういうところに行ってみたかったのよね〜」

 

 目をキラキラさせるサデーニャの横顔は子供のようだった。俺は彼女のことをあまり知らない、でも彼女が前よりも元気になったように思えた。

 その後、走り出した車の車内でサデーニャが運転手について紹介してくれる。


「彼は、アルフレッド・Dマイン。アルって呼んであげて。運転してるけど、年齢は18歳でピッカピカのペーパーだから。あんまり運転テクは期待しないでね」

「お嬢様、これでもお屋敷にいたときは、お屋敷内の移動は僕が運転していたんですから。もう少し信用してくださいよ」


 アルフレッドはぴっちりとした黒のスーツに身を包んだ、茶髪の少年だった。18歳にしては少し小さく見えた。

 そういえば、同年代の人間とこんなに話したのは久しぶりだな・・・。なんでだっけ、あ〜そうだ、学校行ってたけど、ほとんど話したことなかったな。あそこは孤立した監獄みたいだった。生きる意味について毎日毎日一方的に叩き込まれているような感じ。苦痛以外のなんでもなかったな・・・。でも、じゃあなんで俺、学校行ってたんだろ。


「付きましたよ、お嬢様」

「おつかれ、アル。それじゃ、私達二人で遊んでくるから。アルついてこないでね」

「な!?行くわけないじゃないですか!まるで、僕がストーカーみたいな言い方しないでください!」

「ふ〜ん、ならいいけど」


 アルフレッドの顔色が少し青くなった。こいつ、やってるなストーカー。まぁ、俺相手に気配を消せるわけないし、気にしなくてもいいだろう。

 サデーニャが俺の手を引いて店の中へ入っていく。まるで、カップルだ。でも今はデート中なんだしカップルでいいのか?


「これなんかどう?クジョーに似合いそう」

「え、そうかな・・・」


 ものすごい、センスだ。釣り糸でつられている猫のアクセサリーをおすすめされてしまった。シュールと言うか、はっきり言ってグロいだろこれ。俺はいったいどんなふうに見られているのか心配になる。

 それより、今は・・・。


「なぁ、サデーニャ。アルフレッドはいつもあんな感じなのか?あからさますぎるだろ」

「いつも、あんな感じよ。今日なんて少し遠いくらい」


 俺は、サデーニャに顔を寄せて小さな声で、テナントの外からチラチラと顔をだすアルフレッドのことを聞いた。

 は〜、あれで、本人は気づかれていないと思っているのだろうか?あ〜、言わんこっちゃない、店員さんに声かけられちゃったよ。・・・近くで何かが倒れる音がしたが気づかないふりをしておこう。

 いろいろな店を回って、少し休憩しようと吹き抜けの広場に来たあたりだった。ガラス張りの天井から暖かな陽光が差し込む広場から、子どもたちの歓声が聞こえてきた。


「あ!あれあれ!見たかったのよ、あれ!」

「へ?あのヒーローショーを?」


 そう、そこでは舞台の上でヒーローショーが繰り広げられていた。決して派手ではない、しかし、俳優たち(きぐるみではあるが)の演技にはかなり光るものがあるように見えた。特に、あの悪役。断末魔に変なリアリティがある。


「しかも、太陽戦士フレイムガイのショーよ!最高にかっこいい!」


 テンションが上って声が少し高くなっているサデーニャは子どもたちに混ざってヒーローに声援を送っていいた。

 意外と、子供っぽいところもあるんだな。俺はそう思いながら、ベンチに腰を下ろした。ショーも終わり子どもたちが親御さんに駆け寄り思い思いの話を楽しそうにするのを見て微笑ましく思った。サデーニャはと言うと、周りに残っていた子どもたちと楽しそうに談笑していた。


「ねぇちゃん、フレイムガイ好きなの〜?」

「もちろん!!あんなかっこいいヒーローになりたいな〜て思っちゃうくらいなんだから!」

「で、でも。怪人と戦うの怖くないの」

「怖いけど、それでも戦わないと。君たちみたいなちっちゃい子を守れないでしょ。だから私は戦うの」

「私?戦うのはフレイムガイでしょ?」

「は!ははは。そうだった・・・」


 子どもたちの、笑い声が広がっていく。これが、彼女の守りたいもの。いいものだな。

 そんな微笑ましい光景を眺めていた俺のもとにどこかで見たことのある顔の男が近寄ってきた。


「やぁ偶然だね。昨日は助かったよ。ありがとう」


 男は、俺の隣に腰を下ろすとお礼を述べた。そうこいつは、昨日俺の前に現れた変態男だ。

 男から、少し汗ばんだ匂いが漂ってきた。何かをしてきたのだろうか?


「君、強かったんだね」

「見えてたんだな、俺はてっきり気を失っているかと思ったぞ」

「瀕死は、瀕死だったんだけどね。もうなれてしまって、意識だけは保てるようになったよ」

 

 男は、頭をかきながら照れくさそうに言った。

 それにしても、こいつは何者なんだ。今はこいつから神の力を感じ取れないし、どういう原理で変身していたんだ?神の力を纏う?そう言う術式の魔法?謎は深まるばかりだ。


「あんた、なんで狂神が見えるんだ?」

「俺は、魂を神と共有しているんだ」

「神と!?」

「ああ、俺の信じる神は存在するのに命を燃やす。自分の命をね、その命を俺が代替わりしているんだ。俺の魂は特異体質でねその神様と相性が良かったのさ。そして、俺は命に変わってあの力を借りてヒーローになる。お互いの利害の一致ってやつさ」

「そんで、あのときは命を極限まで燃やしてしまった。と?」

御名答ごめいとう


 この男の口ぶりではその神は存在するだけで無限に命を食いつぶすように思える。そんな無限に削られる命をどうやって賄っているのか?さらなる謎だ。

 俺は、それについて聞こうとしたとき


「なぁ、その命はどこから・・・」

「もう時間だ、俺、このヒーローショーでバイトしてるんだ。悪役だけど一番近くでヒーローが見れる」

「なんで、俺にそんな話するんだ?」

「なんでだろう、君からは、なんか同じような匂いを感じるから、かな」

「理由になってねぇよ」

「ふふ、君と話していると楽しいな。・・・俺の名前は 小暮烈こぐれれつこれからもよろしく」

「・・・九条裕也だ。よろしく頼む」

「ああよろしく裕也」


 そう言うと、烈は舞台の裏に走っていった。烈が見えなくなった頃サデーニャが子どもたちに手を振りながら駆け寄ってくる。


「何か、あったの?顔、少し怖いよ」

「ん?あ、ああ。ごめん、ちょっとね」


 不安そうに俺の顔を覗き込んでくるサデーニャを歯切れの悪い言葉で会話を打ち切った。少しの沈黙のなか俺のズボンのポケットが振動した。


「うわっ!?・・・なんだ、電話か」


 俺は、ポケットからスマホを取り出し電話に出る。それは親父からだった。


『もしもし、裕也か。ちょっと、お前に話があるんだ』

「いきなりなんだよ、帰ってこいってことか?」

『いや、俺も今人間界に来ててな、後で地図と住所送るから早めに来いよ』

「ちょ、ちょっと待てって、親父!」

『んじゃ、また後でな』


 切りやがった。地図と住所って、俺もうこっちの土地勘なんてないぞ。どうしろってんだよ。

 電話が切れてすぐ、地図と住所が送られてきた。知らない住所とどっちが北すらわからない手書きの地図。この辺ってどのへんだよ!本当に、こさせる気あんのか。あのクソ親父。


「何か、あったの?少し、さっきより楽しそう」

「親父からの電話だった。ちょと用事がね」

「お父さんのこと、大好きなんだね」

「まぁ、命の恩人みたいな面もあるしな、嫌いにはなれないよ」

 

 サデーニャが俺の顔を覗き込んでくる。彼女の微笑みに顔の広角が緩む。 

 俺は、送られてきた住所を検索にかける。


「なになに?何調べてるの?」


 スマホの画面にサデーニャが顔を近づけてくる。そして、その地図を見た瞬間彼女の顔が一瞬曇った。


「ここって・・・。・・・アルっ!!」


 彼女は、少し考えたような素振りのあと大声でアルフレッドを呼びつけた。本来なら、ついてきているはずもない人間ではあるが・・・


「お嬢様、ここに!」

「うわっ!」


 もちろんすぐ後ろにいる。アルフレッドは俺でも反応できないくらいの速度で、俺達の背後に飛んできた。あまりにも早いから声を上げてしまった!


「そんな間抜けな声は出さないでください。お嬢様のイメージダウンに繋がります」


 う、こいつ。居直り強盗か!?まるで、自分のストーキング行為はなかったことのように振る舞いやがって。てか、やっぱ俺へのあたり強くないかこいつ。


「そんなことはいいのよ!それよりこれを見て頂戴」


 そう言って、サデーニャは俺のスマホを腕ごと引っ張ってアルフレッドに見せる。

 そして二人はコソコソと話し始める。


「ねぇ、ここってやっぱり」

「ええ、あそこでしょうね」

「でも、なんでクジョーがここに?」

「狂神と戦っているわけですし、ここにいないほうが不思議っだったのかもしれません」

「なるほど・・・じゃあ・・・」

「はい、そうしましょう」


 話が、終わったようでサデーニャが俺の方を向いて口を開く。


「ねぇ、クジョー。もしよければ、私がその場所に連れて行ってあげようか?ほ、ほら。クジョーいきなりのことで移動のための足もなさそうだしさ」


 何か、隠してる?コソコソ話してた会話は完璧に聞こえていたが、どうやら、この二人は俺の目的地について知っている様子だった。しかし、肝心なところは二人も濁していた。気密事項なのか?だが、まぁ移動の手段がないのは確かだ。ここは、おとなしくお言葉に甘えることにしよう。


「本当!それは助かるよ。でも、迷惑じゃないの、ここかなり山の奥みたいだし、帰り遅くなったり」

「ああ、その点は大丈夫。私達の家もそっち方面だから」

「そっか、なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

「うんうん、甘えちゃってよ!それじゃあ、車でも少し時間かかるから早めに出発しましょ」


 そして、俺たち三人は親父の地図通りの場所に向かうのであった。

 


 はじめまして。こんにちは神奈りんです。

 すみません、今回の話書き始めたらちょっと長くなってしまいそうだったので半分で切ります。

 少し、歯切れの悪いところで終わってしまいましたが、どうか次回にも目をとうしていただけると幸いです。

 今回の話についてですが、今回はサデーニャの再登場でした。かわいい女の子というのをあまり書いたことがないので、可愛く書けているかわかりませんがぜひコメントなどで教えてくれると嬉しいです。イメージ的には、お嬢様気質なんだけど活発な女の子といったところでしょうか。更にヒーローオタクなんですね。

 それと、烈くんについてです。謎多いキャラですね。実はこの作品のメインキャラになる予定です。これからどんどん掘り下げていくのでご期待ください。

 では、今回はこのへんで。またすぐ次の話が出ると思いますのでそちらもよろしくおねがいします。この度はこの作品に目を通していただき誠にありがとうございます。これからも、温かい目で応援してくださると幸いです。

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