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ガラスの騎士は闇夜に踊る

 俺、九条裕也くじょうゆうやはフェンリルと呼ばれた男の義息子だ。

 今の俺は、親父の仕事を手伝い、神殺しの刃として日々戦い続けている。何と戦っているのかと言うと、狂った神『狂神』と呼ばれる化け物たちを殺して回っている。狂神は神の世界から逃げ出した人食いの化け物だ。その形は人型から動物まで様々だ。その姿が人に近いほどその力は強大となる。


「ふー、寒いな。ここは」


 俺は、春先の東京でビルの屋上に立ち白い息を吐いていた。

 もとはといえば、親父の仕事のはずだろ。急にバックレやがって。


~二日前~


 「戻ったぞ、裕也~」

「おお、お帰り親父。今回は早かったな」

「ああ、今回の相手は動物型四匹の処理だったからな。あんなの俺の手にかかれば一匹も四匹かわりゃしねえよ」


 そういいながらローブを部屋の壁に掛けると親父は俺に言った。


「今夜のメニューは?」

「帰ってくると思わなくて考えてねぇよ。んー・・・あ、そうそうさっき。オデンの爺が来てまた仕事を置いてったよ」

「またかよあの爺、少しは休みが欲しいもんだな・・・」


 そういうと机に置いてあった依頼書に目を通し始めた。


「場所は東京、で動物型三匹の狩猟。・・・これだったらお前でも行けそうじゃねえか?」

「まさか、俺には荷が重すぎるよ」

「いやいや、お前も十分強くなったぞ、動物型なら一人で殺せる様になったんだろ?何も俺みたいにまとめてやれって言ってないだろ。l一匹づつおびき寄せて殺すのだって出来る」

「まぁ、それなら。俺でもできそうだけど・・・」


 ガチャ


「ガチャ?・・・あ、逃げんな親父!!」

「お前ならできるって信じてるぜー、死ぬなよー裕也ー!アデュ~」


そういうと、親父は夜の暗闇に消えていった。・・・う、嘘じゃん


~現在~

 今回の仕事は親父の言う通り一匹ずつ狩っていけば簡単な仕事だ。だが、今回の狂神は何処かおかしい。一定の時間になると同じ俳ビルに入っていく。まるで何かに仕えているかのようだ。まあ、だがそんなことは最後に確かめればいいことだ。今は迅速に事を収めよう。


「一匹ずつ確実に」


 俺は、ビルから飛び折り、俳ビルに向かう途中のイノシシ型の狂神の前に降り立つ。


「よう、まずはお前からだ」


 俺は、羽織ったローブの中からナイフを四本取り出し狂神に投げつけた。しかしそのナイフは空を切り、狂神にはかすりもしなかった。狂神はナイフを見送ると、くいっと口の端を上げ、突っ込んでくる。


「なんだよ、可笑しいか。豚野郎。そんな低脳だから神になっても獣なんだよ。『残影シャドウオブスナイプ』!!」


 俺は、右手を前に突き出し人差し指と中指をくいっと持ち上げた。その瞬間、ナイフが投げた軌道をそのまま手に戻ってくる。そのナイフはその軌道の途中で狂神の脳天を貫いて戻ってきた。

 脳天を切り裂かれた狂神はその場に倒れ、闇へと溶けていく。


「まず一匹だ」


 夜のとばりは落ちた。神狩りの夜だ。



 俺は、一匹目の狂神を屠った後二匹目を殺すため、ビルの間を飛び越え、壁を走り、二匹目の活動範囲に向かった。目星をつけていたあたりに降り立つと、吐き気を催すような、鉄臭い臭いが充満していた。

 俺は、気配を殺し。町の光も届かない路地裏に目を凝らした。

 そいつ、狂神は食っていた。人間を食らっていた。皮をはぎ、肉を引きちぎり、むさぼり食らっていた。俺は、今はこんな仕事をしてはいるが、元は人間だ。こんな、光景を見せられていい気分なはずがない。


「おぃ・・・」

「おい!、貴様何をしている!」


 へ?なんだ。俺が狂神を殺そうとしたときだった。路地の奥のほうから、透き通るような声が聞こえてきた。その声の主に、目を凝らすとそこにはセミロングくらいの金髪で、丸腰の少女が立っていた。その少女は、見た感じ、お金持ちのお嬢様って感じの格好だった。

 おいおい、なんなんだ、武器もなしに。正義感だけで前に出るんじゃねえよ。

 その時、親父の言葉がふと頭をよぎった。「覚悟なき人助けは、時に自分を滅ぼす」俺たち、神狩りの刃の仕事はあくまで個人業だ、そこに他人が介在する余地はない。だから、


「あいつが、死ぬまで。待とう」


 俺は、陰に身を潜め状況をうかがった。

 少女に気づいた、狂神は食らうのをやめ少女のほうを向いた。狂神は犬型。少女の体格は標準くらい、160~165センチといったところだろうか。その少女の腰くらいだから、大きさはそれなりだ。


「食らいましたね。人間を食らう前であれば、しずかに殺してあげましたが。もう、容赦はしません。慈悲なく殺しますっ!!」


 少女はそういうと、右手を前に突き出した。すると手の前に金色の幾何学模様が現れた。そしてそこから何かを引き抜いた。しかし、何を引き抜いたのかは全く見えなかった。

 なんだ、何を取り出したんだ?俺は目をこすりもう一度目を凝らしたが全く見えなかった。


「見えざるものこそ、真実だ。眼に移るものがすべてではないでしょう?さぁ動きなさい狂いし神よ」


 その言葉と同時に狂神が少女にとびかかった。少女はその場から一歩も動かずに右手を頭上にあげ、一気に振り下ろした。

 刹那 狂神の体が左右に両断され、夜闇に溶けていった。


「いっちょ上がりね!今日も我ながら美しい剣技だったわ!さ~て帰って寝ましょ」


 俺は、少女がその場から去るのを待って、陰から出た。

 は~、なんだあいつ。強いじゃねえか。前に出なくてよかったぜ。しかも、あの攻撃。俺の目にも映らなかった。どうやら、あの女は魔法のようなものを使うらしい。

 聞いたことがある。人間が神の領域、神域に近づくために神の御業を模倣した技術。まさか人間の古典的技術を使うものに出会うなんてな。


「今回の仕事は少し、荒れそうだ」



~次の日~


 さて、俺の今の問題は金がないことだ。俺のこっちでの資金は仕事前に親父から預かる、ていうのが通例だったのだが。親父がどこかに消えてしまったので俺には前回の仕事の時に残った金しかない。


「残高は162円、おにぎり一個分か・・・いや!逆に考えるんだ!今夜でこの仕事に肩をつける!そうしたら家に戻って飯が食える!」

 ぎゅるるるるるるるる~


 と、とりあえず、おにぎり買いに行こう。

  

 ビル風は4月の陽光のあたたかさを吹き飛ばし、俺の体に突き刺さる。

 俺は、おととい見つけた俳ビルに来ていた。前日は狂神の巣だと考え危険を避けたが、頭数を減らした今、狂神一匹なら、俺でも殺せる。

 狂神が集まっていたことから人間の死体がゴロゴロしているかと思っていたが内装はかなり奇麗だった。

 この俳ビル廃棄されて間もないようだし、壊されていないところから、空きテナントだろうか?人の出入りが多いのは下に積もったほこりのところどころに「げそ痕」があることから、読み取れる。


「狂神の足跡もある、人の足跡も新しい。少なくとも人は2~3人の出入りといったところか・・・

ちょっと待て、なんだこれ!?」


 そこには人間のげそ痕のほかに裸足の人間の足跡があった。これはどう考えてもおかしい。確かに大人のげそ痕は理解できる、しかし、裸足の足跡は6~7歳の子供のサイズだ。狂神は動物型の三匹じゃなかったのか。まさか、動物型の狂神三匹を操る人型!?・・・無理だ!絶対に無理だ!俺には荷が重すぎる!


「と、とにかく。ここから離れるか」


~夜~


 狂神は陰に潜む、よって昼間はあまり移動しない傾向がある。しかし、それは光が少なくなる夜は活発に動けるということだ。陰に潜んだ狂神を見つけるのは無理に近い。だが夜になれば奴らは姿を現す。狩るならそこを狙う。


「だが、どうしたものか。残りのターゲットは一匹お俺の仕事はそれで終わり、本当にそれでいいのか?」


 ビルの屋上、ラストの狂神の活動範囲から見星をつけた待ち伏せスポット。そこで狂神が現れるのを待っていた。

 そして、狂神は来た、来たのだが


「待ちなさい!私と戦いなさい!」


 要らないオマケ付きだ、金髪のセミロングを揺らして、飛んで逃げる鳥型の狂神を追う少女。

 やはり、どんなに強くても、未熟ものか。どう考えても例の俳ビルにおびき寄せられている。


「不味いな、あいつ技量はかなりのもんだが・・・さすがに不意打ちは対処できないだろうな。・・・あいつ、死ぬな」


 そんなことを思っていると少女はとっくにそこから消えていた。あいつが俺の獲物でもある以上あの俳ビルに入る前に仕留めたい。

 俺は、すぐに立ち上がり狂神と少女を追った。しかし、俺が彼女に追いつくころにはもう彼女は俳ビルに入るところだった。

 入り口で少し立ち止まっているところを見ると、一応は警戒はしているようだったが彼女はすぐに中へと入っていった。


「は~、仕方ない」


 俺は陰に潜み彼女の後を追い俳ビルに入った。



「もう追い詰めたわよ、観念なさい!」

 

 そう言って少女は壁を背にした鳥型の狂神に右手を向ける。その右手にはきっと、先日の狂神を両断したものが握られているのだろう。

 少女は意気揚々と右手を振り上げその時だった、彼女の振り上げた右腕に謎の触手が絡みつき持ち上げられ、床にたたきつけられた。


「かはっ、・・・な、何なの?一体」


 彼女は口から血を流しながら、ふらふらと立ち上がった。

 しかし、その彼女に追い打ちを食らわせるかのように触手が高速で伸びてきた。


 ガキンッ

「へ・・・?」


 俺は、咄嗟に少女の前に立ち触手をはじき返していた。少女はきょとんとした顔で俺を見上げていた。

 あ~、やってしまった。人を助けてしまった。だが、今はそんなことより、人型の狂神に見つかったことのほうが問題だ。


「おい、まだ立てるよな!」

「え、え!?わ、私!?・・・立てるに決まってるじゃない!こんなことで値を上げたりしないわ!」

「そうかい、ならちょっと付き合ってもらうぜ!」


 俺は、ローブからナイフ4本取り出し構えた。

 しかし困ったな、人型を相手するのに俺と、この少女だけとは。勢いあまって前に出てしまったが俺にもあいつを殺せる確証なんてない。・・・いやここは生きてここから離れるのが最善か。


「おい、あんた。いったんここから離れるぞ!」

「だっ、ダメよ!そんなの!」

「さっきので分かっただろ、あんたじゃこいつを殺せない!無理な戦いより、今は俺たちの命のほうが大切だ!」

「逃げるなら、一人で逃げなさい!」


 少女の、静かな闘志に満ちた声が俺の背筋を震わせた。


「どうして、そこまで強情なんだ!」

「私はこんなところで逃げるわけにはいかないのよッ!!戦わないと!殺さないと!私に、生きている意味なんてない!」


 そうか、こいつも。俺と同じなのか。昔の俺と。必死に自分に生きる意味を生きる理由をつけようとしているんだ。きっと、今逃げたらこいつの中の生きる理由が、命をつなぎとめているものが切れてしまうんだ。

 こういうことかよ、親父。とんだ外れくじだぜ。


「ああー!!、わかったよ、協力してやる!」

「な、なによいきなり!?」

「俺に、あんたの気持ちがわかるなんて言う資格はねえ。でも、ここで逃げたら、命よりも大事な何かがなくなっちまうんだろ?それだけはわかる」

 

 俺は、そう言ってナイフを壁に投げつけローブの中から刀身80センチほどの刃で鍔に鎖がついた武器を取り出し、鎖を腕に巻き付けた。

 俺は、息を大きく吸い込み少女に言った。


「やるぞ、あんた!」

「あんたじゃない・・・」

「あん?」

「名前!、あんたじゃなくて、サデーニャ!サデーニャ・ツェペシ」

「そ、そうか。俺は九条裕也だ。構えな、来るぞ」


 気合十分だったゆえに、急な名乗り合いはかなりペースを崩されたが、俺は、もう一度気分を作り直した。

 俺が、触手が飛んできたほうに目を向けると、そこには豪速で触手が俺の顔面目掛けて飛んできていた。

 まずい、一発もらうっ


バチン


「油断禁物!!」

「す、すまない。助かった」


 サデーニャが目にもとまらぬ動きで触手を切り落としていた。間一髪、いきなり助けられてしまった。

 

「これで貸し借りなし!!油断せず行くよっ!!」

「おおよッッ!!」

 

 俺は、サデーニャの横に立ち闇に刃を向けた。雲の隙間から差し込む月光によって暗闇に潜む狂神の姿があらわになる。

 頭から下は、幼女の体だが、顔はない首から無数の触手が生えた化け物。視認できるだけで触手は20本はある。しかもさっきサデーニャが切り落とした触手は再生しかかっていた。


「俺が、前に出る。援護してくれ」

「わかった!」


 俺は、強く床を蹴って前に出る。俺に伸びる触手はすべてサデーニャが切り落としてくれるが、俺の刃が人型の狂神に届く寸前で、俺たちの追っていた動物型の狂神が割り込む。

 ものすごいチームワークだ、狂神同士で支持を出し合っているのか。

 俺たちは、いったん後ろに飛びのいた。


「あの飛んでるやつからやる、俺が床にたたき落とすからとどめを頼む」

「わかった」

 

 俺は右手に握った鎖付きの刃を鳥型の狂神に投げつけた。もちろん、そんな見え透いた攻撃ははじかれる、だがそんなことは織り込み済みだ。俺は、手首をひねり鎖を巧みに操り鳥型の狂神に巻き付けた。


 「落ちろ!」


 俺は、思いっきり腕を振り下ろし、狂神を床にたたきつけた。


「今だ!」

「わかってる!」


 俺の掛け声に合わせてサデーニャが前に出る。サデーニャが腕を振り落ろしとどめを刺そうとした時だった。彼女の足に触手が絡まろうとしていた。


「二度同じ手が通じるものか!」


 バチン


 サデーニャは足に絡みつこうとした触手を切り払った。しかし、それと同時に鳥型の狂神も鎖からからめとられてしまった。

 くっそ、なんて連携だ。先に二匹の狂神を殺しておいて正解だった。二匹でもこれだけのチームワークなんだ。もし四匹だったら、俺たちはここまで戦えていないだろう。やはりあの人型が意思の疎通とまではいかないが、指示を出しているのだろう。


「どうするの、九条」

「一匹ずつ殺すのに変わりはない、ないが・・・」

「ないが・・・、なによ?」

「俺の技で二匹を分断する。だが、この技を使うには片方、が片方ずつの敵と一対一で戦うこととになる。どっちがいい!せ~の」


 俺は、サデーニャに勢いで問いかけた。だが、彼女はすべてを悟ったかのようににやりと笑った。


「人型ッ!!」

「鳥!」


 俺が人型、サデーニャが鳥型を選んだ。初めて会ったが気が合うぜ。


「『月鏡げっきょう』!!」


 俺がそう叫ぶと、壁にさしておいたナイフが鳥型と人型の二匹の狂神の間を飛び回り二匹を分断した。そしてナイフはこの部屋の壁に刺さり波紋が起きる、その波紋は一瞬で二匹の間を隔てた。

 分断されたことに気づいた、狂神は見えない壁を叩き続ける。


「無駄だ、言ってもわからんだろうが、その壁は一種の呪いみたいなもんだ。外の俺、そしてお前をこの中の奴らとの鏡写しの苗床としたどちらかが倒れるまでこの結界は破れない」


 まともな説明もなしにこんな結界に閉じ込めてしまった彼女のほうを見る、しかし、彼女は親指を立てにぃっと笑った。

 ふっ、いい女だ。こんな女だったら生きる意味になるかもな・・・ツッーーーーーーーーーーな、なななな、何お考えているんだ俺は!!

 俺は、頭を振り余計なことを振りはらう。

 さて、一対一とはいえ、俺一人で人型の狂神を相手して勝てる保証はない。

 しかし、あのサデーニャの顔を見てしまうと負けるわけにはいかないな。やるか・・・


「神殺しの刃フェンリルの血を継ぎしものが命じる。眼前の狂いし神を裁くためその鎖を解き放ち我の力を開放せよ『解鎖アンチェイン』!!」


 俺の詠唱が終わると同時に、俺の髪はみるみる伸び白髪へと色を変えた。

 まだ、力の制御は完全じゃない。持って3分だ、それまでに片を付ける。

 

 俺は、腰を低くして四つん這いのような体制になり床にひびが入るほど強く床を蹴り飛び出した。相手の触手が反応できない速さで、高速で狂神の背後をとる。そして、まるでオオカミのようになった手で背後から腕振り下ろした。しかし、その攻撃は無数の触手に阻まれてしまう。だが。俺はその触手を鋭い爪で引き裂いた。


「お前が高速で再生するなら、それを超える速さでその触手をはいでやる!!」


 俺は、攻撃を胴体ではなく触手に集中させた、引き裂き、噛みちぎり、引きちぎる。

 そして、ついには狂神の触手は再生が間に合わず首から上がない人間の姿となった。

 そして、俺は、両手を開き指を組んだ


「これで!終わりだーーーーッ!!!」


ーーーーーー


 私、サデーニャ・ツェペシは今初めて会った九条裕也に言われ、鳥型の狂神と対峙していた。

 先ほど、謎に九条から、変な視線を向けられたので、親指を立てたが。いったいこの結界はどうなっているのだろうか。あちらの音が全く聞こえない。

 だが、今はそんなことは関係ない!目の前の狂神を殺す。それが私の仕事。それが私の生きる意味!


「私も、本気で行くわ・・・、ガラスの騎士サデーニャ・ツェペシが詠う。私は、ガラスでできている、脆くは、吐かなく、美しい。見えるものがすべてではないでしょう。そこにある現実を受け入れなさい‼『砕珪グラスブレイク』!!」


 私の詠唱が終わると同時に私の体を覆うようにガラスの破片が飛び散った。そして無数のガラスのかけらの一部を集め両手に剣を構築し構える。

 私のこの力はかなりの生命力を消費する、もって3分それまでには片を付ける。

 

 「どうしたかかってこい、一匹じゃ何もできないのか!!」


 私は、勢いよく前に駆け出した。狂神も激高し翼から羽を飛ばしてくるが、私は無数に散らばったガラスの破片を操り相殺する。そして、羽の生え変わりの一瞬のすきに合わせてガラスの破片を固めて放つ。それは翼を貫通し翼を切り落とした。

 そして、私は無数に散らばったガラスを一斉に狂神の体に突き刺した。私は剣を交差させて突っ込む。


「これで!!終わりッッ!!」


ーーーーーー


「『餓狼ウルフズクロック!!!!!!」

「『珪裁グラスジエンド!!!!!!」


ギ,ギギャアアアアアアア、狂神の断末魔が狭い俳ビルの中を共鳴する。そして結界が砕け、二匹の狂神は闇へと溶けていった。


「か、勝った。勝ったわ!」


 サデーニャが其の場にへたり込んで俺に微笑みかけてきた。


「ああそうだな、生きてる」


 俺たちは顔を見合わせていたことに、気恥ずかしくなり顔をそむけた。


「ありがとな、助けてくれて」

「それはこっちのセリフよ。あの時助けてくれなければ私は確実に死んでいた。だから、その・・・

 ありがと・・・」


 サデーニャが、顔を赤らめて言った。不覚ながら、かわいいと思ってしまった。

 ふと、俺はサデーニャに聞いておかなくてはならないことを思い出した。


「なぁ、サデーニャ」

「ん?なによ」

「お前は、何のために狂神と戦っている?」


 サデーニャは少し険しい顔つきとなって答えた。


「私は、孤児だったの。親や家族はみんな物心つく前に死んでいたわ。だから私の故郷は孤児院なの

 そんな中、私は今のお父様に引き取られた。とても優しい人なのよ。私に魔法の素質があると見抜いて引き取ったといわれたわ。もちろん私はお父様の期待に応えるために必死に魔法を勉強した、そして、私は魔法を使えるようになった。その年の夏だったわ。お父様は、狂神に殺されたの。・・・お父様は言っていた、魔法は狂神を殺すための技術だって。だから殺すのよ狂神を」


 サデーニャの目には涙がにじんでいた。


「悪いことを、聞いたな」

「ううん、いいの。・・・ねぇ、九条。私の生きる理由って何かな?・・・お父様のために魔法を覚えた私だけど、もうお父様はいない、私誰のために戦えばいいの?」


 サデーニャの目からボロボロと涙がこぼれだしていた。

 その姿はまるで、昔の自分を見ているようだった。必死に生きる理由を探し回る自分そっくりだった。俺は、サデーニャのあたまに手をのせて言った。


「俺もさ、お前と同じことで悩んだよ。でも、ある人の言葉が俺に気づかせてくれたんだ、生きる意味なんてのは、死んだとき、人生を振り返ってみて気づくものだって。・・・だからさ、お前も、無理して、生きる理由を探さなくたっていいんだ。お前は自分の人生を生きろよ」


 俺はこの言葉に救われた、この言葉がサデーニャの心に響くかはわからない。でも俺に言えることはそれだけだった。


「そう、そうよね。これは私の人生だもの自分のために生きるべきよね!!」

 

 サデーニャは涙を拭いて立ち上がっていった。その言葉はとても先ほどまでの彼女とは思えないほど元気な声色となっていた。ポンポンとほこりを払うとサデーニャは振り返って言った。


「ありがと、九条。あなたのおかげで元気出たわ。なんだか助けられてばかりね」

「俺も、助けられた」


 彼女は、くるりと体を回すと後ろ手に手を振ると


「九条、また会いましょう。同じことを生業とするもの同士、またすぐ会うかもねー」

「ああ、その時は・・・ゆっくりデートでもしよう」

「ふふ、バーカ」


 そういうと、彼女は夜の闇へと消えていった。




「ただいま~」

「おう、お帰り裕也、何かあったか。いつもより楽しそうだぞ」

「そうかな、・・・あ、同業者にあったよ」

「同業者?」






こんにちは、神奈りんです。このたびはこの小説を読んでいただきありがとうございます。

 ここでは、サデーニャ・ツェペシについてお話ししようかと思います。サデーニャは策通でも書きましたが標準体型で金髪セミロングの19歳です。あまり胸は大きくないですが出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでるモデル体型なんですね。これは、完全に僕の好みです。

 彼女の魔法は、ガラスを巧みに操る魔法です。技名に入っている「珪」の字ですがこれはガラスの主原料であるケイ素の「ケイ」の部分を漢字にした字です。

 彼女過去に関しては、また別の機会にでも描こうっと思っています。

 今後ともこの作品を、よろしくお願いします。


 誤字脱字などが多くてすみません見つけたらその都度治すので、是非感想で書いてくださると幸いです。


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